生命保険控除の新旧の見分け方は?混在なら、どちらの控除が得になる?
複数の生命保険に入っている皆さん、その生命保険の契約は旧制度、新制度のどちらのものか、把握していますか?今回は新旧の区分と見分け方を紹介します。また、混在していて新旧どちらか選べる場合はどちらで保険料控除した方がお得になるのでしょうか。新旧それぞれの控除額の計算方法から説明します。
生命保険料控除とは?新旧で変わる計算方法
生命保険料控除とは、所得に対して納める税金を計算するときに受けられる控除です。年末調整や確定申告で手続きすると一定の計算に基づいて所得から控除できるため、その分納める税金が安くなります。この生命保険料控除額は、平成24年1月1日より前に保険契約をしたか、後にしたかによって、控除額の計算方法が変わってきます。
平成23年12月末までに加入した旧制度の生命保険料控除は、保障内容によって2分類となります。
一般生命保険料控除・・・死亡、医療、介護の保険
個人年金保険料控除・・・個人年金保険(税制適格)
平成24年1月1日以降に契約した保険は、医療・介護の保障が独立し3分類となりました。
一般生命保険料控除・・・死亡保険
介護医療保険料控除・・・医療や介護の保険
個人年金保険料控除・・・個人年金保険(税制適格)
それぞれの控除の最大額は?
1年間に支払う保険料により控除の最大額は以下のようになっています。
【旧制度】
一般生命保険料控除・・・所得税5万円、住民税3.5万円
個人年金保険料控除・・・所得税5万円、住民税3.5万円
合計 所得税10万円、住民税7万円
【新制度】
一般生命保険料控除:所得税4万円、住民税2.8万円
介護医療保険料控除:所得税4万円、住民税2.8万円
個人年金保険料控除:所得税4万円、住民税2.8万円
合計 所得税12万円、住民税7万円
*住民税の合計額は7万円が上限
控除額の計算方法は?
それぞれの控除額の計算方法は下記の表をご参照ください。
【旧制度】(一般生命保険料控除・個人年金保険料控除)
<所得税>
<住民税>
【新制度】(一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除)
<所得税>
<住民税>
新旧制度の区分と見分け方
保険証券の契約日を確認すれば、その保険が新旧どちらの制度に当てはまるのかはわかります。しかし、注意が必要なのは、平成24年1月1日より前の契約でも、更新したり、特約を付加したりした場合には新制度が適用される点です。
自分の契約が新旧どちらか分からなくても大丈夫。毎年10月ごろに保険会社から届く「生命保険料控除証明書」に「新制度」「旧制度」の区分が記載されています。
保険料控除によってどのくらい節税になる?
それでは、生命保険料控除によってどのくらい節税できるのかを見ていきましょう。
事例1)旧制度の以下の3つの保険に加入中の場合
① (旧制度)死亡保険 年間保険料8万円・・・一般生命保険料控除
② (旧制度)医療保険 年間保険料6万円・・・同上
③ (旧制度)個人年金保険 年間保険料12万円・・・個人年金保険料控除
控除額の表に基づき計算すると
一般生命保険料控除①②・・・所得税分5万円、住民税分3.5万円
個人年金保険料控除③・・・所得税分5万円、住民税分3.5万円
生命保険料控除額合計・・・所得税分10万円、住民税分7万円
この場合の年収別の節税効果は以下のようになります。
事例2)新制度の以下の3つの保険に加入中の場合
①(新制度)死亡保険 年間保険料8万円 ・・・一般生命保険料控除
②(新制度)医療保険 年間保険料6万円 ・・・介護医療保険料控除
③(新制度)個人年金保険 年間保険料12万円 ・・・個人年金保険料控除
控除額の表に基づき計算すると
一般生命保険料控除①・・・所得税分4万円、住民税分2.8万円
介護医療保険料控除②・・・所得税分3.5万円、住民税分2.8万円
個人年金保険料控除③・・・所得税分4万円、住民税分2.8万円
生命保険料控除 合計:所得税分11.5万円、住民税分7万円 *住民税は7万円が上限
この場合の年収別の節税効果は以下のようになります。
新旧の契約が混在、どっちを選択した方がお得?
新旧の契約がある場合はどうなるのでしょうか。
その場合、旧制度の契約のみで計算する方法、または、新旧制度のそれぞれの額を合算して計算する方法の2パターンが選べます。ただ、前者は上限5万円であるのに対し、後者は上限4万円と違いがあるため、個々の契約内容によって有利な方を選択することになります。
事例を見てみましょう。シンプルに説明するため住民税分の控除の説明は割愛しますが、住民税も同様に考えます。
事例3)新旧の契約がある以下の4つの保険に加入中の場合
①(旧制度)死亡保険 年間保険料4万円 ・・・一般生命保険料控除
②(新制度)死亡保険 年間保険料6万円・・・一般生命保険料控除
③(新制度)医療保険 年間保険料4万円 ・・・介護医療保険料控除
④(新制度)個人年金保険 年間保険料12万円 ・・・個人年金保険料控除
この場合、③④の保険は、これまで見てきたように新制度の計算式がそのまま適用されます。ポイントは①②の一般生命保険料控除の対象となる新制度と旧制度が混じっている部分のみです。3つのステップに分けてみていきます。
・ステップ1
① 旧制度、②新制度の計算式にあてはめて控除額を計算します。
①(旧制度分)一般生命保険料控除・・・3.25万円
②(新制度分)一般生命保険料控除・・・3.5万円
・ステップ2
それぞれ控除の上限があるため有利な方を選びます。
①旧制度の契約のみ控除を受ける場合の上限額・・・5万円
→よって、控除額3.25万円・・・A
①旧制度と②新制度の契約ともに控除を受ける場合の上限額・・4万円
→控除額①3.25万円+②3.5万円=6.75万円
→よって、控除額4万円・・・B
つまり、控除額が大きいBの4万円を選択した方が節税効果が高いという事になります。
・ステップ3
最後に、➂介護医療費控除、④個人年金保険料控除を合算し生命保険料控除額が確定します。ただし、合計額は最高12万円までです。
➂介護医療保険料控除・・・控除額3.5万円・・・C
④個人年金保険料控除・・・控除額4万円・・・D
B(4万円)+C(3.5万円)+D(4万円)=11.5万円≦12万円
よって、生命保険料控除は11.5万円 となります。
このように旧制度のみ、または新旧の合算、のいずれかで計算して有利な方を選択できます。旧制度のみで計算する場合の上限額は5万円、新制度のみまたは新旧制度を合算して計算する場合は各4万円が上限で、生命保険料控除の合計額は12万円を超えることはできません。
どちらがお得かは、実際の契約内容や保険料によって変わってくるため計算しなければ分かりません。ただ、年末調整や確定申告の書類に書かれている手順にそって計算すると、ちゃんと上記のような計算の流れを踏めるため安心してください。
まとめ
新旧の制度が入り交じり複雑な印象がありますが、契約ごとにゆっくり確認していきましょう。そのためには生命保険料控除証明書を失くさないよう保管し手続きすることが必要です。また、年に1度は加入している保障内容を確認しておくと良いでしょう。