投資信託、分散投資すべき?株式や債券のおすすめの割合は?
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今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、30代女性からの「投資信託の分散方法」に関するご相談です。新NISAがスタートし、投資信託を使った運用方法に関心が高まっています。そのような中で一番気になるのは「どの商品を積み立てるのが良いか」ということだと思います。今回は分散投資の組み合わせについて解説していきます。
30代女性Aさんからの相談
全世界の株式投資信託を持っていますが、分散投資が良いという意見と、若いうちは株式だけで良いという意見をよく聞きます。やはり20~30代でも、株価が暴落した時のために債券の投資信託なども組み入れた方が良いのでしょうか?いつから債券の投資信託を資産に入れるべきか迷っています。またREITは分散投資の一つとして効果的でしょうか?教えてください。
分散投資とは
投資を始めようとすると「分散投資」という言葉をよく目にします。分散投資は「一つの商品に集中投資をせず、投資先を分けましょう」という意味で使われることが一般的です。
ただ分散投資には「投資先」を分けるだけではなく、「投資のタイミング」を分散するという意味も含まれます。Aさんの購入方法の詳細は不明ですが、少なくとも全世界の株式に分散投資しているのは間違いありません。
全世界の株式投資信託の特徴
証券会社などの人気ランキングを見てみると、全世界株式とアメリカ株式のS&P500という指数に連動する投資信託が上位を占めています。商品によって少々異なりますが、全世界の株式に連動する投資信託は世界の50に近い国と地域の株式市場に投資をしており、3000~4000の株式銘柄によって構成されています。そのため投資先を分散するという効果が非常に高い投資信託です。また近年は株式市場が好調なこともあり、運用成績も優秀です。
債券を組み入れた投資信託の特徴
債券を組み入れている投資信託は、投資先を株式100%にしている投資信託と比べると値動きの幅が一般的には穏やかです。下記の表はリーマンショック時に株式と債券を組み合わせた割合の違いで、値下がりの幅がどれくらい異なったかを簡単に記したものです。
リーマンショック時における投資信託の値下がり率の違い
株式100%の場合の値下がり率は50%となり、「自分が保有している財産の価値が半分になった」ということになります。一方、債券を含んだ組み合わせでは30~40%の値下がりとなり、株式100%の場合よりも値下がりは緩やかでした。なお国によって差がありますが、リーマンショック前の水準に戻るのに3年から5年程度を要しました。
全世界の株式投資信託は株式100%の商品なので、リーマンショック級の暴落が発生すれば大きな影響を受けます。もし暴落時の値下がりを緩やかにしたいということであれば、債券を組み入れるという投資戦略は選択の余地があると思います。
債券の代わりに「預貯金」という選択
Aさんの投資についても考え方にもよりますが、「株価が暴落した時のために債券への投資を考えている」のであれば、投資商品を選ぶのではなく預貯金をしっかり保有するという選択もあります。
日本国内の債券を使った投資信託は、値動きの幅が小さいことが特徴です。手数料がかかり、価格が下がることもある債券型の投資信託よりも、手数料などが不要な預貯金をしっかりと行うという手法も暴落時への備えとしては有効です。全世界の株式投資信託を100万円保有しているとすれば、預貯金を100万円準備するというイメージです。
この組み合わせであれば、債券型の投資信託を購入しなくても暴落時に備えることができるのではないでしょうか。
20代や30代も債券は必要か
下落時のリスクに備えるという考えに基づけば、債券を組み入れるという選択は大事だと思います。ただ前述したように、預貯金が定期的に準備できているのであれば、債券を組み入れるとしても大きな割合である必要はないでしょう。
また投資の世界では「自分の年齢=安全資産の割合」と言われます。例えば30歳の人は、預貯金や債券などの安全資産は全体の3割、残りの7割は株式や投資信託などのリスク性資産で運用するといった考え方です。この考え方だと、年齢が進むにつれて安全資産を増やしていくということになります。
20代や30代のiDeCoや企業型DCは株式100%で
もしAさんがiDeCoや企業型DCを利用しているのであれば、若いうちは株式100%で問題ありません。いずれの制度も60歳以降の受け取り開始になるので、50歳になるまでは株式100%で良いでしょう。50歳を超えたら保有している金融資産を少しずつ「元本確保型」の商品へ移していきましょう。
REITは分散投資になるか
REITへの投資も分散投資になりますが、「分散投資として効果的か?」という問いについては評価が難しいです。値動きの傾向は株式に似ていますが、値動きの幅は大きめです。
分散投資では「Aという資産が値下がりしたが、Bという資産は値下がりしなかった」「Cという資産が値下がりしたが、Dという資産は値上がりした」といった反対の値動きをする投資先を組み合わせ、マーケットの状況が悪い時にも資産価値が大きく下落してしまうリスクを軽減する効果を期待します。
その中でREITを組み合わせることが効果的かという問いは判断が分かれるところです。もしREITを組み入れるのであれば全体の10~20%程度に抑えることが良いのではないでしょうか。
まとめ
暴落時の備えということならば、債券など金融商品にこだわらず預貯金という形で現金をしっかり準備するということでも良いと思います。考え方は様々ですが、年齢にとらわれず、株式や投資信託などの「リスク性資産」と「現金や債券(債券型の投資信託ではなく)の資産」の割合を50:50になるようにしておくと暴落時の備えにもなります。また資産運用としての効果も期待できると思います。もし預貯金があまりないということであれば、まずはしっかりと現金を貯めましょう。その上で余裕があれば、債券型の投資信託を購入していくと良いでしょう。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。