育児休業給付金の延長申請が厳格化へ!保育園落選狙いはバレる?
目次
出産後の経済的な支えになるのが「育児休業給付金」です。育児休業中に受け取れる給付金ですが、この制度について見直しが進められています。
今回は育児休業給付金延長申請の厳格化について、その背景や変更点、影響について詳しく解説していきます。
育児休業給付金とは?
育児休業給付金は、育児休業を取得した労働者に支給されるお金のことです。子供を産んだり養育したりするため一定期間仕事を休む際に、収入の減少を補うための制度です。原則として、育児休業給付金は子供が1歳になるまで支給されます。一般的には育休手当と呼ばれることが多いようです。下記の5つの要件を満たすことで受給できます。
1. 1歳に満たない子を養育している
2. 雇用保険に加入している
3. 育休開始日前の過去2年間に就労日数を満たした月が12カ月以上ある
4. 育児休業中の就業日数が月10日以内である
5. 育児休業中の支給額が休業前の賃金の80%未満である
夫婦のどちらも申し込みができ、要件や申請方法等に違いはありません。また支給期間は育児休業を開始した日から「子が1歳に達する前まで」で、具体的には誕生日の前々日までになっています。
産前・産後休業、育児休業はいつから?
育児休業中に受け取れる育児休業給付金ですが、産前・産後休業や育児休業の期間はそれぞれどのようになっているでしょうか?
ここでは出産予定日を2025年1月1日と仮定してみましょう。
・産前休業期間:2024年11月21日~2025年1月1日
・産後休業期間:2025年1月2日~2025年2月26日
・育児休業の申し出時期:2025年1月27日まで
・育児休業期間:2025年2月27日~子供が1歳になる誕生日の前日まで
※育児休業を男性が取得する場合は、出産予定日から取得可能(休業開始日の1カ月前までに申し出)
また額面給与が30万円の人が上記のモデルケースの期間で休業した場合、どれくらいの給付金を受け取れるのでしょうか?概算となりますが、試算してみます。
・出産育児一時金(概算):50万円
・出産手当金(概算):65万3366円
・育児休業給付金(概算):182万6000円
なお双子以上の妊娠の場合は、下記のように産前休業期間が拡大されます。
・産前休業期間:2024年9月26日~2025年1月1日
・産後休業期間:2025年1月2日~2025年2月26日
・育児休業の申し出時期:2025年1月27日まで
・育児休業期間:2025年2月27日~子供が1歳になる誕生日の前日まで
育児休業給付金の延長申請とは?
給付金を受給できる育児休業の期間は「子供が1歳になる誕生日の前日」までと決められています。ただし両親ともに育児休業を取得した場合、パパ・ママ育休プラス制度によって1歳2カ月まで延長することができます。
また、保育所に入所できない等の理由があれば最長2歳までの延長が可能です。延長が認められれば、育児休業給付金を受給できる期間も合わせて延長されます。
保育園の「落選狙い」が起きている理由とは?
基本的に育児休業は子供が1歳になる誕生日までですが、前述したように申請をすれば延長ができます。そのため育児休業期間や給付金の延長を目的にして、実際は利用する意思がないにも関わらず、落選狙いで保育所への入所を希望するという動きが起きています。
育休延長狙いが起きる理由としては、子供の側にいる時間を確保したいことや、給付金をもらえる期間を延ばしたいことなどが挙げられます。
例えば子供を保育所に預けて時短勤務で復帰しても、保育料の支出と時短勤務の給与収入がほぼ変わらないというようなケースもあるでしょう。それならば保育園に入れずに給付金をもらいながら休業期間を延長したいという心理が働いて、わざと自宅から遠い保育所や人気がある保育所を希望し、落選して育児休業期間を延長するということが目立っているようです。
育児休業給付金の期間延長手続き・審査の変更点
このような落選狙いの入所申請が、行政事務の負担を増加させているとして問題になり、2025年4月1日から育児休業給付金の延長手続きと要件が厳格化されることになりました。
育児休業給付金の支給手続きを行う公共職業安定所(ハローワーク)はこれまで、保育所の利用を申し込んだものの、当面入所ができないことについて市区町村が発行する「入所保留通知書」などで確認していました。2025年4月以降は、これまでの確認に加え「保育所の利用申し込みが速やかな職場復帰のために行われたものである」と認められることが必要となります。
具体的には、育児休業の延長申請を行う際に下記の書類が必要となります。
1.育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
2.市区町村に保育所等の利用申し込みを行った時の申込書の写し
3.市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知(入所保留通知書、入所不承諾通知書など)
また育児休業給付金の支給期間延長には下記の1~3のすべての要件を満たさなければなりません。
1.あらかじめ市区町村に対して保育利用の申し込みを行っていること
2.速やかな職場復帰のため保育所等における保育の利用を希望しているものであると公共職業安定所長が認めること
3.子が1歳に達する日の翌日時点で保育所等の利用ができる見込みがないこと
2025年4月以降、延長申請を行うためにはハローワークでの確認が必須になります。ハローワークでは子が1歳になるまでに保育所の利用の申し込みを行っているか、また申込先の保育所が合理的な理由なく自宅から片道30分以上を要する施設だけになっていないか、市区町村に対して入所保留となることを希望していないか等を確認されます。これまで以上にお勤め先と育児休業についての相談が必要でしょう。
手続きや要件変更後の課題
もともと育児休業期間は原則1年というルールですが、保育所への入所を希望しても入所できない待機児童の問題もあり、事情があれば最長2年まで延長できるという特例が設けられました。
保育所に入りやすい4月に入所させようと考えると、誕生月によっては生後数カ月で預けなければならない家庭や、お子さんの状態などによっては1歳では預けることが状況的に難しい家庭、子供の成長をもう少し見守りたいという家庭にとっては、この延長制度は経済面も含めとても役立つ制度といえます。
ただしルールを厳格化することで、2025年3月までと4月以降の預け入れのタイミングで不公平感を覚える人も出てくるのではないでしょうか。
まとめ
2025年4月から育児休業延長申請の適用が厳格化されます。延長を希望する人は提出書類や要件が増えるため、注意が必要です。
育児休業給付金は雇用保険から支給されており、いわゆる専業主婦や自営業の人には支給されていません。そのため「もらえる人、もらえない人」にもともと分かれている制度です。しかし、国が少子化のスピードを少しでも遅くしたいという目的で子育て支援をするのであれば、共働きが当たり前の今、育児休業を最初から2年にしたり、自営業の子育て支援を手厚くする等の施策も今後必要になってくるでしょう。
育児休業給付金に関するQ&A
Q:認可外保育所に落選しても育休延長はできますか?
A:できません。育児休業延長の対象になっているのは認可保育所で落選した時であり、認可外保育所で落選しても対象外となります。
Q:育休延長中に別の保育園が見つかった場合、どうすればいいですか?
A:育休延長中に別の保育園が見つかった場合は、会社にその旨を伝え、育児休業の終了手続きを進める必要があります。