年末調整で忘れたものは確定申告を!チェックしておきたい節税方法
いよいよ年末も近づいてきました。2024年は新NISA元年ともいえ、投資に対する興味がグッと高まった年でした。新NISAが人気を集めたのは「利益に対する課税がない=非課税」という税金についての優遇措置があるということも要因の一つだと思います。
今回は来年に向けて新NISA以外にも、会社員や公務員という働き方をしている人が税金を賢く節税する方法を改めてご紹介します。
会社員や公務員の税金はどうやって決まる?計算方法
会社員や公務員の方の所得税や住民税は、毎月の給与から天引きされています。この天引きされる金額は一体どのようにして決まっているのでしょうか?
所得税の計算の流れ
①給与所得の算出:給与収入から非課税の手当や給与所得控除を引いて、給与所得を算出します。
②課税所得の算出:給与所得から各種の所得控除を引いて、課税所得を算出します。
③所得税額の計算:課税所得に税率を掛けて控除額を引くことで、所得税額が決定します。
給与所得控除は給与額に応じて変わり、給与所得控除額を控除した後に、各種の所得控除を行って所得税を算出するための課税所得が決まります。算出された課税所得の額に応じて、所得税率が変わります。
会社員や公務員の方は年末調整で各種控除を行い、年間の所得税額を確定します。これにより、年間を通して支払った所得税と実際に支払うべき所得税との差額が調整されます。
節税につながる控除9種類
会社員や公務員の節税は各種の控除をどれだけ有効に使うかがポイントになりますが、実際にどんな控除があるのかを確認してみましょう。なお年末調整で行うものと、会社員や公務員でも確定申告で行うものがあります。
1.扶養控除:年末調整
配偶者を除いた、16歳以上の親族を扶養している場合に利用できます。生計を一にしていれば、遠方に済んでいても対象になります。
2.配偶者控除:年末調整
配偶者を扶養している場合に使える控除です。もし配偶者がパートなどで給与収入を得ている場合は、額面で103万円以内である必要があります。
3.生命保険料控除:年末調整
生命保険に加入し保険料を支払うと、保険料の年間支払額に応じて生命保険料控除を受けられます。
対象になる生命保険は「新生命保険控除(死亡保険)」「医療保険料控除(医療保険やガン保険)」「新個人年金保険料控除(個人年金)」に分かれています。
死亡保険や医療保険の他に、節税目的で個人年金や終身保険などに加入している人も目立ちます。ちなみに死亡保険・医療保険・個人年金でそれぞれ年間8万円以上の保険料を支払っていると最大12万円の控除を受けられます。
4.iDeCo(個人型確定拠出年金):年末調整
老後資金を準備するのにピッタリなのが「iDeCo」です。毎月一定の金額を積み立て、60歳以降に老後資金として積み立てた資金を受け取れます。iDeCoの最大の特徴は、積み立てたお金が全て所得控除の対象になることです。退職金制度により、積み立てられる金額が異なりますが、公務員は毎月1万2000円、会社員は毎月2万3000円が上限です。
会社員が毎月2万3000円を1年間積み立てると、年間で27万6000円が所得から控除されます。また運用益は非課税で再投資され、受取時にも優遇措置があります。
ここでiDeCoを利用すると所得税や住民税がどれくらい節税できるのかを試算してみましょう。
例)年収500万円の場合
30歳から65歳までiDeCoで毎月2万3000円を積み立て。扶養配偶者や扶養親族はなしとすると、35年間で約193万円の所得税や住民税が節税になります。かなりざっくりとしていますが、1年間あたり5万~5.5万円の節税となります。
2024年12月からiDeCoの積立金額がアップ
確定給付型の年金制度(*)などを利用している公務員を含む第2号被保険者がiDeCoで積み立てできる金額は、これまでは毎月1万2000円が上限でした。この上限額が2024年12月から2万円に引き上げられることになりました。上限額が引き上げられることで、将来の老後資金が増えるだけではなく、所得控除の対象額=節税になる金額も増えます。これまで1万2000円で物足りないと思っていた人にとっては良いニュースです。
(*)確定給付型企業年金、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私学共済、厚生年金基金など
iDeCoの積立額が1万2000円から2万円にアップされるとどれくらいの節税効果があるのでしょうか?ざっくりとした試算ですが、下記の条件で比較してみましょう。
30歳から65歳まで掛金を支出 年収500万円を継続 扶養親族はなし
1万2000円の場合:節税額 100万8000円
2万円の場合:節税額 168万円
実際は昇給や扶養親族などの状況によって異なりますが、単純な比較では70万円近くの所得税や住民税が節税になります。
これまで拠出額が1万2000円に抑えられていた人にとっては、一考の余地がありそうです。
5.医療費控除:確定申告
その年の1月1日から12月31日までの期間中に、自分や生計を共にしている家族が支払った医療費が10万円を超えると、その超えた部分に対して医療費控除が使えます。
(医療費控除の計算式)
医療費控除額=実際に窓口で支払った医療費合計-医療保険などから受け取った給付金-10万円
例)窓口で支払った合計額20万円の場合
20万円-医療保険で受け取った5万円-10万円=医療費控除額5万円
なお医療費控除の対象には、医薬品や補聴器などの購入費用、医療行為としてのマッサージなども含まれます。
6.セルフメディケーション税制:確定申告
セルフメディケーション税制は上述の医療費控除の特例です。医療費控除は、基本的には医療機関などで使用した費用を対象にしています。一方、セルフメディケーション税制は対象になる市販薬を購入した費用に適用されます。具体的には生計を共にしている家族で、対象になっている医薬品を1年間で1万2000円以上購入していることが条件です。注意点は健康診断などを受けていることが必要であり、医療費控除かセルフメディケーション税制のどちらかしか使えません。
7.地震保険料控除:年末調整
不動産や家財などを対象にした地震保険に加入している人は、地震保険料控除という控除を利用できます。年間の地震保険料が5万円以下の場合は支払っている保険料の全額、5万円を超えた場合は一律で5万円を控除できます。
8.ふるさと納税:ワンストップ特例
ふるさと納税は簡単にいうと住民税の前払いです。そのため節税という要素はありません。ただし返礼品を用意している自治体へ寄附することで、食料品や地域の特産品などを2000円の自己負担で受け取れるということで人気があります。以前はお肉やお魚などの“ちょっと良いもの”が人気でしたが、近年は物価高ということもあり、以前にも増してお米の人気が高まっているようです。
9.住宅ローン控除:初回のみ確定申告、2回目以降は年末調整
住宅を購入したり、リフォームしたりした際に住宅ローンを利用した人が使えます。また住宅を購入した年度によって内容が異なります。
例えば2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅では、国が定めた省エネ基準に適合していなければ、住宅ローン控除を受けることができません。また省エネ性能に応じて、住宅ローン控除の限度額も異なります。
なお2022年以降の住宅ローン控除の適用金額は、12月31日時点での住宅ローン残額の0.7%を上限として、源泉徴収された所得税が還付(払い戻し)されています。
まとめ
会社員や公務員ができる節税方法は、各種の控除を有効に使うことに尽きます。特にiDeCoや生命保険料控除などは節税効果が高くおすすめです。また医療費の領収書や薬局などのレシートは大事に保管しておきましょう。ひょっとしたら控除が使えるかもしれません。
納税する金額が節約できれば、使える手取り金額も増えます。すでに会社の年末調整が終わっているかもしれませんが、確定申告はこれからです。書類の提出を忘れたという方は、確定申告をすることで控除を受けられるものもあります。会社員や公務員にとっては、節税という言葉は少し難しく感じるかもしれませんが、気軽にチャレンジしてみましょう。