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年金受給者は確定申告が不要?申告で節税&還付金があるケースとは?

そなえる 白浜 仁子

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2025年には65歳以上の人の割合が3割を突破しようとしています。高齢化が一段と加速し、年金が生活の柱という人が増えていくということです。給与に対する納税は、基本的に職場での源泉徴収や年末調整で完結するため、原則確定申告の必要はありません。では国から受け取る年金はどうでしょうか。今回は、年金受給者の確定申告の必要性や確定申告不要制度、確定申告をした方がお得になるケースなどについて見ていきましょう。

年金受給者は確定申告が必要?確定申告不要制度とは

年金は大きく、老齢・遺族・障害と3パターンの給付があります。そのうち遺族年金や障害年金は非課税ですが、原則65歳から受給できる老齢年金は課税の対象となります。

「年金だけでは老後の生活は厳しい」という人も少なくない中、税金の負担を考慮すると生活が一段と厳しくなることもあるかと思います。まずは老齢年金にかかる課税の目安を確認した上で、確定申告について見ていきます。

税金の目安となる年金額:108万円と158万円

年金は「雑所得」として課税対象となり、65歳未満は最低60万円、65歳以上は110万円が公的年金等控除として年金額から差し引かれます。

また所得税を計算する際、基礎控除と呼ばれる所得控除もあります。一定の高所得者は対象外ですが、ほとんどの納税者の所得税に基礎控除として48万円が差し引かれます。これにより、65歳以上で老齢年金の金額が158万円未満であれば、年金にかかる税金は非課税となり、年金の支給時に税金が源泉徴収されることもありません。

一方で年金が158万円以上の人では、給与所得者と同じように年金支給時に所得税が源泉徴収されることになります。そのため基本的に確定申告は必要ありません。年金以外に所得があると確定申告が必要で追加の納税があったり、状況によっては税金が還付される場合もあります。年金受給者の確定申告について、もう少し詳しく見ていきましょう。

公的年金は、国民年金に20~60歳まで40年間加入した場合、老齢基礎年金として年額81万6000円(2024年度価格)受け取れます。受給開始は65歳からで、厚生年金に加入する会社員の期間があれば、この金額に老齢厚生年金が上乗せされるというわけです。

老齢基礎年金だけの場合、年額81万6000円は前述の「158万円」を大きく下回るため、住民税も含めて非課税となり、税金のことは心配しなくて良さそうです。一方で、厚生年金や企業年金などを受け取る場合は年金額が増え、源泉徴収されることも考えられます。また、年金を繰り下げ受給する場合ももらえる年金額が増加するため、税負担も増えることになります。

このように、ある程度税金を負担することになる場合は年金に関する確定申告のルール「確定申告不要制度」を覚えておくと良いでしょう。ポイントは「年金収入が400万円以下、かつその他の年間所得が20万円以下の場合は確定申告が不要」という点です。国税庁のホームページには以下のように記載されています。

「公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、所得税及び復興特別所得税の確定申告は必要ありません。」(引用:国税庁HPを参照し、一部筆者編集)

「年金400万円以下」で「その他の所得年間20万円以下」の両方を満たしたら、確定申告が不要ということです。どういうことなのか、具体的に見ていきましょう。

年金について

最初に年金についてです。厚生労働省が提示しているモデルケースでは、長年会社員として働き厚生年金に加入していた男性が受け取る年金額は月額約15万円、年額で180万円となっています。

FP(ファイナンシャルプランナー)である筆者が多くの相談者の年金額を拝見しても多い人で200万円を超えるぐらいでしょうか。企業年金が多く支給される上場企業に勤務していたというケース以外で、年間400万円を超えることはなさそうです。つまり年金だけの場合は確定申告が不要であることが多いでしょう。

その他の所得について

次に「その他の所得」についてですが、例えば家賃収入がある場合などが該当します。アパート経営をしており、年間20万円を超える所得がある場合は確定申告が必要です。ここで重要なのは「収入」ではなく、「所得」であるという点です。必要経費などを差し引いた儲けが年間20万円を超える場合に確定申告が必要ということになります。

年金受給者で確定申告をした方が良い場合とは?

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年金受給者で確定申告すると控除が増えるケース

年金所得しかない年金受給者でも、確定申告をした方が良いケースもあります。例えば、年間の医療費がかさんでいて、医療費控除を適用できる場合です。

年金を受け取る際に所得税が源泉徴収されている方が対象になりますが、医療費控除などの所得控除を適用することで納めるべき税金額が小さくなったり、納めなくて良くなったりします。つまり、確定申告で源泉徴収された所得税の還付を受けられるということです。

税金が源泉徴収されているのかどうか分からない、還付されるのかどうか分からないという場合は、毎年発行される「公的年金等の源泉徴収票」を見てみましょう。源泉徴収票には年間で受け取った年金額と源泉徴収額が記載されています。

源泉徴収額が記載されている場合、還付の可能性がありますので源泉徴収票の内容をよくチェックしてみてください。年金額と源泉徴収票以外に次のような情報も記載されています。

これらは源泉徴収を行う上で考慮されており、支払った健康保険料や介護保険料は社会保険料控除として所得控除の対象となります。また生計を維持する配偶者や扶養親族がいる場合は、配偶者控除や扶養控除が適用され、その分が所得から控除され税金の負担が軽減されます。

一方で、上記以外は源泉徴収を行う上で考慮されていません。例えば、先ほど紹介した医療費控除の他に、「生命保険料控除」や「地震保険料控除」は確定申告を行うことで還付を受けられる可能性があります。

また、控除対象の配偶者がいるのに「公的年金等の源泉徴収票」に配偶者に関する記載が一切ない場合もあります。これは「扶養親族等申告書」を提出していないことが原因と考えられます。

この「扶養親族等申告書」は納税者が誰を扶養しているのか確認するためのもので、事前に提出することで配偶者控除や扶養控除を考慮した上で源泉徴収が行われます。当然、提出していなければ適用されません。もし申告書を提出していない場合は、確定申告で配偶者控除の申告をすると、その分の税金が還付されます。

なお、「扶養親族等申告書」は毎年9月頃、日本年金機構から郵送で届きます。しっかり必要事項を記入して返送しましょう。

なお確定申告は原則翌年の2月16日から3月15日となっていますが、還付のみを申請するという場合は年明けの1月以降に順次手続きができます。早めに手続きをすると、その分早く還付を受けられます。

確定申告が不要でも住民税の申告が必要なケースも 

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これまで年金受給者に関する税金について見てきましたが、ここまで紹介したものはいずれも所得税に関する内容です。よって、住民税についてはこの限りではありません。

例えば年金以外のその他の所得が20万円以下の場合、確定申告をする必要がないのは所得税のルールであり、住民税には適用されません。少しでも何らかの所得がある場合、住民税の申告は必要になるため、居住地の役所・役場に確認し手続きをしましょう。

具体例として、保険を解約した場合や満期を迎えた場合が挙げられます。解約返戻金や満期金など、支払った保険料と受け取った金額の差額が所得となります。この所得が「20万円を超えていないから」と確定申告をしていないケースでも、住民税の申告は必要ということになります。保険の解約返戻金や満期金は保険会社から契約者が居住する役所・役場に支払調書(※)が発行されるため、「保険の満期金の申告が行われていませんよ」と役所・役場から連絡が入る場合があります。住民税は所得税と扱いが異なることを覚えておきましょう。
※保険会社から支払われる金額が原則100万円を超える場合、支払調書が発行されます。

まとめ

本記事の要点をまとめます。

年金受給者の多くは、公的年金からの源泉徴収という仕組みもあるため、それほど税金について気にする必要はなさそうです。ただし、源泉徴収されている場合は還付される可能性があるため、毎年届く「公的年金等の源泉徴収票」の確認をおすすめします。

「還付といっても数百円だし、面倒くさい」と思う人もいるかもしれません。しかし、還付手続きを行うことで「住民税の非課税世帯」に該当し、医療保険や介護保険制度をはじめ様々な制度で優遇されることもあります。わずかな税額の違いで老後の生活資金に大きな影響が生じる場合があるため意識しておくことが大切です。

年金と確定申告に関するQ&A

Q:年間20万円以上の年金所得以外の所得がありました。この場合、所得税と住民税、どちらも申告手続きを行う必要がありますか?

A:所得税の確定申告のみで問題ありません。所得税の確定申告をすると、納税者のデータは自治体に共有され住民税の計算が行われます。

Q:年金はそれほど多くなく、源泉徴収されていません。一方で、株式の配当金から源泉徴収されています。この場合、配当金の税金は確定申告で還付されますか?

A:還付される可能性があります。配当所得は年金の所得と合算の上、計算することができます。また確定申告を行うことで配当控除という税額控除を適用することができるため、源泉徴収された税金が一部または全額還付される可能性があります。