住宅ローンの金利上昇が不安…変動から固定に切り替えた方がいい?
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FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿をmymoで診断する【うちの家計簿】。今回は45歳独身女性、会社員Kさんの家計簿です。住宅ローンを変動金利で借りているけれど、今後の金利上昇が不安との相談です。一部の銀行で住宅ローンの金利が引き上げられる中、返済計画をどのように考えればよいのかポイントを見ていきましょう。
45歳独身女性Kさんの相談内容
2年ほど前に住宅を購入しました。住宅ローンは変動タイプを選びました。65歳までに完済できるようにしていますが、購入当時より金利が上がりました。変動タイプなので「上がるかも?」と思ってはいましたが、こんなに早く上がるとはあまり考えておらず、これからちゃんと返済していけるか少し不安になっています。これからしっかり家計を管理していきたいと思っています。住宅ローン支払い中の家計管理のポイントなど教えてください。
Kさんの家計簿は…?
月々の手取り28万9450円です。月々の手取りのうち約28%の8万500円が住宅ローンの支払いに充てられており、約17%の5万円を資産運用に回しています。現在の貯金と資産運用の合計残高は830万円です。
住宅ローン返済中に考えておくべき3つのリスク
住宅を購入する手続きが完了すると、登記簿上では自分の所有資産になっていますが「住宅ローン」を利用している場合には、自宅はローンの担保となっているため、ローンを返済できなくなれば家を差し押さえられてしまいます。
どのような時にローン返済ができなくなる可能性があるのか具体的に確認しておきましょう。
① 金利の上昇
住宅ローン金利には、借入時に決めた金利が変わらない「固定金利タイプ」と、経済状況により金利が変動する「変動金利タイプ」があります。固定金利タイプは金利がずっと変わらないメリットはありますが、変動金利タイプより金利が高めに設定されています。
住宅ローンは今後20年、30年、35年と長い期間支払う約束で設定する場合が一般的です。変動金利で借りている場合、最初は0.5%で借りていてもその後1%、1.5%、2%と金利が上昇していく可能性があります。
ずっと金利が上がらないだろうと漠然と考えて住宅ローンを組んだ場合には、将来金利が予想外に上昇していくと返済が厳しくなることも考えられます。
② 収入が減る
Kさんは65歳までは働いて収入を得て、その収入の中から住宅ローンを返済していく計画を立てていらっしゃいます。65歳まで働く予定にしていたけれど、予想外の転職や病気などで収入が減り、ローンの返済が難しくなることも考えられます。
例えば収入が減るような重い病気になった時には住宅ローンの返済が難しくなるだけでなく、現在Kさんが資産運用に回している月5万円のお金も捻出できなくなる可能性があります。
病気やケガで働けなくなった場合、会社員の公的保障として「傷病手当金」があります。傷病手当金は病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。病気やケガで仕事を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合に支給されます。
全国健康保険協会の令和5年度の調査によると、傷病手当金が支払われた支給期間をみると、平均支給期間は158.20日で約5カ月となっています。この間、収入が減少し傷病手当金を受給して生活を支えることになります。
傷病手当金の受給の原因となった傷病別に件数の構成割合をみると、精神及び行動の障害が35.20%で最も高くなっています。がん等の新生物(13.57%)、原因不明の新たな疾患などを含む特殊目的用コードが(11.00%)と続きます。
病気やケガで働けなくなった就業不能時に一時金が支払われるタイプの民間の保険などもありますが、一口に就業不能といっても支払われる所定の状態が保険会社、保険商品によって違います。支払い条件や支給額など具体的な事例を確認し、住宅ローン返済期間中の働けなくなった時の保障として検討することもリスク対策のひとつとなります。
住宅ローンの契約者が所定のがんと診断確定された場合に、住宅ローンの残高が0円になる仕組みのローンを組んでいる場合もあります。がん以外にもローン返済が免除されるタイプの保障を付帯している住宅ローンもありますので自分が契約した住宅ローンがどのような場合に支払いが免除となるのか再度確認しておきましょう。
③ 家の被害
購入した家が欠陥住宅だったり、自然災害や火災など思わぬ災害に見舞われたりすると住宅の修復などが必要となります。場合によっては数百万、数千万単位の費用がかかる場合があります。
住宅購入時に火災保険に加入していると思いますが、どのような際に補償されるか、詳細を確認しておくことが大切です。また火災保険は契約期間満了時に更新手続きが必要となります。ローン返済期間中にも複数回の更新手続きが必要となります。うっかり更新手続きをせず、保険未加入時に災害や事故に見舞われると全額自己負担で修復しなければならない可能性があります。自分で購入した大切な財産である住宅を守るための火災保険も内容をよく確認して過不足なく加入するようにしておきましょう。
また購入した住まいに雨漏りやシロアリ被害、給排水管からの水漏れなどの瑕疵がないか確認することも大切です。瑕疵を発見しても一定の期間内に補修等の請求をしなければ、売り主側に応じる責任がなくなり、自費での補修となってしまいます。
住宅は高額な買い物となりますので購入時の契約内容などよく理解しておくことが大切です。
金融庁「借金シミュレーター」でローン返済額を試算してみよう
「変動金利タイプ」と「固定金利タイプ」を比べると、「変動金利タイプ」は金利が低く設定されていますが、「固定金利タイプ」の金利の高さは今後の金利の上昇を避けるためのコストと考えることもできます。
金融庁の「借金シミュレーター」では車、家のローンやクレジットカードからの借り入れの返済金額を「借入金額」「金利」「分割回数」「ボーナスでの年間支払」などを入力すれば、固定金利で返済する場合の月々の返済額や利息総額を確認できます。
例えば、借入金額2000万円、金利0.5%、分割回数240回とすると、月々の返済額は8万7000円となります。内訳は元金の返済が7万8667円、利息が8333円です。
この金利が0.5%から1%上昇して1.5%になると月々の返済額は9万6000円となり、内訳は元金の返済が7万1000円、利息が2万5000円です。
上記の内容のローンであれば、借入金額2000万円の場合、金利が0.5%上がると月々の返済額が、1万7333円増加します。月々の家計に与える影響は大きいと言えます。
金融庁「借金シミュレーター」
現在の変動金利と固定金利を比べ、固定金利の場合にはどの位の返済額になるのかを確認し、固定金利の返済額と現在の変動金利の返済額を比べてみて、差額を「住宅関連予備資金」として別に貯めておくのもよいと思います。
この予備資金が貯まっていけば、住宅ローンの返済以外にも今後マンションの「管理費」「修繕積立金」が値上がりした際にも対応しやすくなります。
これまで超低金利といわれる時代が続いてきましたが、これからも長期間同じ低金利が続くとは限りません。
住宅ローン返済中は特に「金利の上昇」「収入減」「家の被害」のリスクに対応できるよう資産形成も行いながらできるだけ手元の余裕資金を増やすことをご検討ください。
アドバイスを受けたKさん談
金利上昇のことばかり考えていましたが、自分が働けなくなった時のことはあまり想像したことがありませんでした。現在加入している保険で保障されるのか確認したいと思います。
また火災保険には加入していることは分かっていますが、火災の時だけ補償されると思っていました。火災に見舞われたらいくらまで補償されるかもよく分からないので、修復費用が全額補償されるのか問い合わせてみます。
建物の瑕疵についても戸建てを購入した友人から欠陥住宅だったという話を聞いたことがありますが、あまり自分のこととして考えていませんでした。契約内容を再度確認してみます。
金利が0.5%上がるだけで、月々の返済額が1万7000円以上も上がることに驚きました。さらに、元本の返済は少なくなって利息支払い分が増えるとは…。当たり前のことなのかもしれないけれど、金利が上がるってそういうことなんだ、と実感しました。現在5万円を運用にあてていますがもう少し増やすこともできると思うので、できるだけ1000円でも多く余裕資金を増やしていきたいと思います。
家計簿診断を終えて
金利が上昇した時に月々のローン返済額が増えた場合は、返済額の内訳も確認するようにしましょう。元金の返済額と利息の返済額が変わります。ローン返済の内容を理解して、今後の長期返済の見通しを立てておくことが大切です。
地震などの自然災害が多い日本では、いつどこで大きな災害がおこるか分かりません。実際に東日本大震災など大きな災害では、多くの方が避難を余儀なくされました。自分自身の住まいが災害などに見舞われた際にどのような備えができているかについても、ぜひ確認をして頂きたいと思います。