国家公務員配偶者手当が廃止に!扶養手当見直しは全国で加速する?
2024年7月、人事院は国家公務員の給与改定において配偶者手当を廃止し、その財源で子ども手当を増額する方針を発表しました。今回は国家公務員の配偶者手当の廃止にフォーカスします。
そもそも国家公務員とは?
公のための仕事に携わる公務員は、国家公務員と地方公務員に大きく分けられます。国が採用し、国の業務に従事するのが国家公務員です。
さらに国家公務員は特別職と一般職に分かれており、日本全体で約59万人が国家公務員として国の業務に従事しています。
・一般職:行政機関で働く行政官や外交官、税務職員など
・特別職:裁判官や裁判所職員、防衛省職員など
なお一般職と特別職の全体での割合は、ほぼ50%ずつになっています。ちなみに県や市町村が採用する地方公務員はおよそ280万人となっています。
扶養手当とは?企業と公務員の違い
扶養手当は、扶養する家族がいる従業員を経済的に支援するために支給されている手当です。この手当は基本になる給与とは別に支給されます。一般企業については法的に支給が定められている手当ではないため、支給の有無や支給条件、金額などは各企業が自由に決めることができます。一方、公務員は要件を満たしていれば扶養手当を受給できます。
ちなみに2023年の人事院の調査では、一般職国家公務員のうち扶養親族がいるのは11万4080人。そのうち、配偶者を扶養する職員は6万8629人、子どもを扶養する職員は8万9637人です。
国家公務員の扶養手当の支給額
現在の法律では、扶養親族のいる国家公務員の職員に対して以下の金額が扶養手当として支給されています(いずれも月額の支給額)。
(※)行政職俸給表(一)8級職員等の場合の支給額は3500円となり、行政職俸給表(一)9級以上の場合は支給されない
今回の人事院の提案は、上記の表にある配偶者への手当を廃止し、浮いたお金を財源にして子への支給を増やそうとするものです。
なお2024年10月から支給期間が高校卒業までに延長された児童手当は、国が子育て支援で支給しているものであり、扶養手当とは異なります。
国家公務員の扶養手当の支給条件
配偶者
国家公務員の配偶者(妻・夫)が扶養手当を受給するための条件は以下の通りです。
①生計を一にしていること
②年間所得が130万円未満であること
③ 法的に婚姻を届け出ていること、または事実婚であること
④他の人に扶養されていないこと
上記の4つの条件を満たすと、配偶者の扶養手当が支給されます。
なお共働きで通常は配偶者の扶養手当を受給していない場合でも、育児休業期間中で年間所得が130万円未満であれば、手続きを行うことで扶養手当を受給できます。
行政職俸給表(一)7級以下の職員であれば、6500円×12カ月=7万8000円の手当を受給できます。
子
国家公務員の子が扶養手当を受給できる条件は以下の通りです。
①生計を一にしていること
②年間所得が130万円未満であること
③ 他の人に扶養されていないこと
④22歳以下の子であること(満22歳の誕生日の前日以後の最初の3月31日までの間にある子)
生計を一にしている子については、中学校を卒業するまでは毎月1万円、それ以上は毎月1万5000円を受給できます。また大学や専門学校、短期大学など法律で定められた学校に通っている18歳から22歳までの子も支給対象です。
また繰り返しになりますが、国の児童手当とは扱いが別になり併給が可能です。
父母、祖父母
父母や祖父母を対象にした手当を受給できる条件は下記の通りです。
① 生計を一にしていること
② 年間所得が130万円未満であること
③ 他の人に扶養されていないこと
④ 満60歳以上であること
注意点として、受給している年金が130万円未満であることです。年間で130万円以上の年金を受給していると扶養手当の対象にはなりません。
なお手当を受給できる場合は毎月6500円で年間7万8000円を受給できます。
国家公務員の扶養手当はどのように変わる?
国家公務員の配偶者への扶養手当は、2025年度から2026年度にかけて段階的に廃止予定です。
行政職俸給表(一)の7級以下の職員
2024年度:月額6500円
2025年度:月額3000円
2026年度:廃止(0円)
行政職俸給表(一)8級以上の職員
2024年度:月額3500円
2025年度:廃止(0円)
2026年度:廃止(0円)
いわゆる管理職にあたる人は現在でも減額か支給されていない状態ですが、来年度以降は職員全体で減額と廃止が進められる予定です。
扶養手当を支給する企業は減る傾向にある
配偶者に対する扶養手当は公務員だけではなく、民間でも廃止する企業が増えています。有名なところではトヨタ自動車が2021年までに月額1万9500円の配偶者手当を廃止し、代わりに子ども手当を月額2万円としています。
この背景は次のようなことが要因として考えられています。
1.共働き世帯の増加
2.未婚化や晩婚化などの影響による配偶者を有する人の減少
3.配偶者手当を受給するために就業制限をしている人がいる
4.従業員同士の不公平感解消のため
様々な要因がありますが、「結婚しているから手当をもらえる」ということに対して不公平感を持っている人も多いようです。また税金や社会保険における103万円や130万円などの壁が扶養手当の基準になっている企業も多く、この壁を意識して就業制限をしている人は公務員の配偶者に限らず目立ちます。
社会保険料の支払いで、手取りはどれだけ減る?
所得税や住民税は事業所の人数や課税所得の大きさによって、税金の額や社会保険の加入対象かどうかが決まります。下記の表は40歳で介護保険の保険料を払っている人の手取り額の違いを概算で試算したものです。
社会保険の保険料を納めている人が51人以上の職場で勤務する場合、2024年10月から額面所得が106万円を超えると社会保険料の支払いが必要になりました。単純計算ですが、同じ106万円の額面給与でも社会保険の有無で手取りが年間15万円程度違ってきます。
2025年3月までは国の年収の壁対策パッケージで社会保険料の負担は緩和されていますが、社会保険の対象か否かで同じ給与でも手取り金額に大きな違いがあり、就労調整が発生するのもやむを得ないでしょう。
この点を見ないふりをして、「働ける人が就業調整している」と大きな声で主張されるのも少し違うように思います。
まとめ
国家公務員の配偶者の扶養手当が今後は段階的に廃止される見込みです。時代背景を考えると、配偶者がいるから手当を受給できるという仕組みが縮小や廃止に向かうのは仕方のないことかもしれません。ただし国家公務員の場合、転居を伴う転勤も多く、配偶者がしっかりと働くことが難しい側面もあります。このことを考えると、一定の手当があっても良いのではと個人的には考えます。
また社会保険の壁である106万円や130万円の壁がある限り、公務員だけではなく一般企業で働く家庭でも就業調整は続きます。ちなみに地方公務員の給与体系は基本的に国家公務員に準じます。そのため今後は地方公務員の手当も同様の流れになると推測されます。
少子高齢化が進み、より多くの人に働いてもらいたいという時代背景を踏まえた配偶者手当の廃止ですが、皆さんはどう考えますか?
扶養手当に関するQ&A
Q:離婚しても扶養義務はありますか?
A:子どもの養育費は別ですが、夫婦は離婚することにより互いの扶養義務は消滅します。ただし子どもが幼く、仕事に就くことが難しいようなケースでは一定の範囲で将来の扶養のための財産分与を認めるという考えもあります。
Q:子どもがアルバイトしすぎると扶養から外れますか?
A:額面給与が103万円を超えると所得税や住民税の対象になり、企業規模によっては106万円から社会保険の対象になります。社会保険の対象になると、親の扶養を外れ自身で社会保険料を支払います。また親にとっても扶養控除の対象外となり、所得税や住民税の納税額に影響が出ます。