アメリカの中古・ユーズド売買の最新事情と今後の市場はどうなる?
自宅に溜まった不用品の断捨離から実家の片付けまで、さまざまな「捨て活」がメディアやSNSなどで話題になっています。近年は不用品を売る人&買う人が気軽に利用できるネット上のサービスやアプリも充実し、ますます便利になってきました。今回は、アメリカのユーズド売買事情をお届けします。
アメリカ人の家にモノが多い理由
先日、知り合いの老夫婦(70代と90代のカップル)が暮らすニューヨーク市内の一軒家を訪問する機会がありました。筆者がニューヨークに移住してからかれこれ20年以上になりますが、ホームパーティーやバーベキューなどでこれまで数々のお宅訪問をし、多様な家や暮らし方を見てきました。毎回思うのは、日本人と比較するとアメリカ人はゲストを自宅に招くのが好きな国民性だということです。
その理由の一つは住居や庭が日本と比べて「とてつもなく広い」からかもしれません。「家がうちは狭いから…」というのはよっぽど大都市でない限り、あまり聞こえてきません。またマイホームを持つのはアメリカン・ドリームの一つとされていますから、苦労してやっと手に入れたドリームの一つをゲストに惜しみなく披露したいと考えるのはむしろ彼らにとっては自然なことなのかもしれません(補足:アメリカ人は一般的に社交的でおしゃべりが大好き)。
彼らの家にゲストで訪れると、初回は大抵「ツアー」をしてくれます。ツアーとは住宅内の部屋を一部屋ずつ説明しながら見せることです。
冒頭のご夫婦が暮らす一軒家ではまず庭で春にどんな花が咲きどんな果物が実るかの説明から始まり、エントランス、リビング、ダイニング、キッチン、そして2階のベッドルームと専用バスルーム、3階の屋根裏部屋まで丁寧にツアーをしてくれました。
さて、私が驚いたのは惜しげもなく自宅を見せてくれたことではなく、彼らの「荷物の多さ」でした。日本のこけしなど世界中の旅先で買ってきたという置物をはじめ、絵のコレクションやヴィンテージと思しきお宝商品、書籍など、床から天井までびっしりと所狭しとありました。日本ではあれだけ「捨て活」「終活」という言葉でお片付けがメディアやSNSに露出し話題になっているのに、70代と90代のこのご夫婦にはまったくそのような形跡がないのも驚きでした。
このカップルだけが特別なわけではありません。筆者の周りに捨て活をしているような人はおらず、ほかの複数の友人カップルの家を見てみてもいずれもモノが多いです。理由の一つは、アメリカの住宅とガレージ事情があるでしょう。日本に比べてそれらは広く大きいため、その分、モノを溜め込みやすいということなのでしょう。
アメリカの大掃除&片付けシーズンは年末...ではない
ただし、アメリカにも片付けに勤しむ人はもちろんいます。英語で捨て活やお片づけのような言葉として、例えば「Decluttering」などがそうです。11月以降は感謝祭やクリスマス、大晦日で大忙しのため年末の大掃除がないアメリカですが、「Spring Cleaning」といって春の到来と共に、彼らは家の片づけや大掃除をします。
そして出てきた大量の不用品を売ったり寄付したりできる店も充実しています。どの街にも大抵あるユーズドストア、スリフトストア、サルベーションアーミー、セカンドハンドストアなどがそうです。筆者の家の近所にも数えただけで3軒以上はあります。
また委託販売のコンサインメント形態の店も珍しくありません。このような店を覗いてみると、100年以上前の貴重なアンティーク家具や置物、ビンテージの洋服などお宝が満載で、しかも数十ドル~数百ドルと比較的求めやすい金額で売られているのは魅力的です(金額はモノや店による)。アメリカ人はモノにしろ住宅にしろ、古き良きものに価値を見出す人たちです。どの店も客で賑わっているのはそのような理由からです。
またこれはアメリカならではかもしれませんが、週末になると個人の自宅前で(文字通りの)"ガレージセール"をするのも決して珍しい光景ではありません。
インターネットのフリマサービスも充実
日本と同様にインターネット上のサービスも充実しています。
伝統的なものはeBay、クレイグスリストなど。またフェイスブック・マーケットプレイスも人気です。それらのサイトでは質の良さそうな大きなカウチが50ドル(約7550円)で売られていたりします。
ちなみに日本発のフリマ大手、メルカリは2014年に米国市場に参入を果たしました。今夏、アメリカ版メルカリのECサイトとアプリから日本版メルカリの商品を直接購入できる越境販売サービスを開始したと発表されたばかりで、ますます便利になっているようです。
その一方でメルカリはアメリカ市場での苦戦も伝えられています。ある資料によると売上高は年々微増していますが、今年8月の発表では売上高が1874億円(前期比9%増)なのに対し、営業利益が174億円(同6.7%増)とそれほど伸びていないということ。
ユーズド市場が成熟しているアメリカでは、店舗やフリマアプリが非常に多い分、それぞれのサービスが鎬を削っている状態なのです。
たくさんある中古品販売専用サイトやアプリの中で、米大手メディアのUSAトゥデイ(2021年)にはアプリ内で決済ができ安全に物を売ることができる6つのフリマ専用アプリが紹介されています。
・Facebook Marketplace
https://www.facebook.com/marketplace
・OfferUp
https://offerup.com/
・eBay
https://www.ebay.com/
・Mercari
https://www.mercari.com/
・Decluttr
https://www.decluttr.com/
・thredUP
https://www.thredup.com/
米大手メディア、CNBC(2024年)でもオススメのアプリとしていくつか紹介されています。
・手数料なしですべてを販売するのに最適なのはFacebook Marketplace
・自宅の家庭用品や小物の販売に最適なのはMercari
・専門商品の販売に最適なのはeBay
など。
調べるとほかにもOfferUp、Chairish、Letgoなど数えきれないほどのサービスがあります。
消費者の中で特にZ世代やミレニアル世代の人々はユニークなモノへの探求心があり、同時に環境への配慮を重視しています。このような若い世代はサステナビリティ(持続可能性)と手ごろな価格を優先し、ユーズドの市場規模も世界中で成長しているようです。
ある調査によると、中古衣料品市場規模は2023年に818億ドル(約12兆円)規模から2032年には約2,735億ドル(約41兆円)規模に達することが予想されています。ますます成熟する市場の中で、日本やアメリカで、これからもっと使いやすいユーザーフレンドリーなサービスが生まれてきそうです。
日本でも売買サイトでの詐欺行為やイメージしていた商品と違うなどの問題がある通り、アメリカでもそのような話は幾多となくあります。今後消費者にはさらに賢く利用していくことが求められていきそうです。