国の借金が過去最大に!放っておいていいもの?資産はどれくらい?
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監修・ライター
2月10日、ある新聞記事がSNS上で話題となりました。話題となったのは、日本経済新聞電子版が配信した「国の借金、1317兆円で過去最大 2024年12月末時点」というもの。国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」が昨年末時点で1317兆6365億円を記録したことを報じたものです。記事では国の借金が増えた原因を「予算の財源不足を埋める新規国債の発行で残高が膨らんだ」と分析しています。
気にする必要がない派が圧倒的多数
この記事について、SNS上では「国の借金なんか気にする必要がない」といった意見が多数を占めていました。
「こんなのは『自国通貨建ての債務残高』に過ぎない。どこに『借金』がある?なぜ返済する必要がある?返済出来なければどういう理由で国が財務破綻するのか納得いく説明してみろ。」
「日本円の発行者である日本政府が日本円の借金をしているって本気で言っているの?」
また、負債だけではなく資産も併せて公表しないとフェアじゃないという見方も少なくありません。
「国の借金とは、正しくは「日本政府の借金」であり、国民の借金ではありません。日本の総資産は1京2649兆円と過去最高」
「負債だけじゃなくて資産を言わないのが財務省のやり口。バランスシートをちゃんと見てほしい。それに自国通貨建ての国債でデフォルトに陥ることはありえない。」
サイエンスライターで情報番組の出演も多い竹内薫氏も日本経済新聞電子版で次のようにコメントしています。
「ちょっと気になりました。資産の発表はないのでしょうか。マイナス面だけを強調し、プラス面の情報を出さない手法は批判が高まっているように感じます。」
日本の金融資産は約1京円
SNS上では「国の借金なんか気にする必要がない派」が多数を占めていますが、財政赤字がどんどん増えていくことに危機感をあらわにしている人も少なからずいます。財政赤字をこのまま放置していいかどうかは、経済学者やエコノミストなど専門家の間でも意見が分かれるところです。そのため、軽々にどちらが正しいということはできません。
ただ、この問題を考える上で有益なやり取りを国会質疑で見つけたので、それを読者の皆さんに共有したいと思います。2024年4月5日に行われた衆議院財政金融委員会での立憲民主党・江田憲司議員と財務省の官僚のやり取りです。内容を要約してお伝えします。
江田議員「“日本は借金があるから破綻寸前だ、破綻寸前だ”というのはおかしい。一方的に負債だけ言って国民をだますのは止めてほしい。直近の日本の個人の金融資産はいくらですか?」
財務官僚「2141兆円でございます。」
江田議員「国と企業の金融資産を合わせた全体の金融資産はいくらですか?」
財務官僚「9704兆円でございます。」
江田議員「ほぼ1京円ですよ。対外純資産はいくらですか?」
財務官僚「418.6兆円でございます。」
江田議員「世界最大の債権国ですよ、日本は。どこが破綻するんですか?」
日本はギリシャのようにはならない
財政破綻した国と言えば、多くの方が思い浮かべるのはギリシャではないでしょうか。ギリシャは、2009年10月の政権交代をきっかけに、旧政権で多額の財政赤字が隠蔽されていたことが明らかになりました。
市場ではギリシャの財政状況に対する不信感が高まり、国債利回りが上昇。国債利回りが上昇するということは、借金の利息が増えるということです。政府や企業が海外から大量の借金をしていたギリシャは、利息が一気に上がったことにより借金返済が困難になり、債務危機に陥りました。ギリシャの借金は政府のものだけで約30兆円に上り(2012年末)、債務残高はGDP比で約160%を記録しました。
翻って日本はどうでしょうか。ギリシャのようになるのでしょうか。当時のギリシャと最も違うのは、日本が債権国という点。日本は政府と企業、それに家計を加えた国内合計では、471兆3,061億円の超過資産(2024年末時点)です。この超過資産は海外に貸し出しています。
つまり、ギリシャとは逆で日本は海外に資金を貸し出している債権国なのです。いざとなれば、日本の財政赤字は国内の資産で埋めることが可能です。こうしたことを説明せずに、借金にだけ注目して発表することはやはり少々フェアではないと言わざるを得ません。「国民の危機感をあおりにあおって、増税へと持っていきたいのでは?」というのは筆者の考えすぎでしょうか。