教育資金にNISAの解約を検討。引き出し方や注意点をFPが解説
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今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、30代女性IさんからNISAの解約に関する相談です。2023年までの旧NISA制度には、「つみたてNISA」と「一般NISA」があり、いずれかを選択する形でした。
2024年から新NISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できるようになりました。これにより、年間投資上限額も拡充されています。より利便性が高まり、NISA口座で積み立てをしている人も多いでしょう。Iさんからの相談でもある、この「つみたて」は途中で解約できるのでしょうか?NISAのつみたて投資枠の途中解約の可否や課税関係、注意点などを整理していきましょう。
30代女性Iさんの相談内容
子どもの教育費用を積み立てNISAで貯めています。子どもの成長に伴い、途中で一部解約することはできるのでしょうか?その場合、課税はされますか?
NISAのつみたて枠はいつでも一部解約可能で非課税
最初に結論をお伝えすると、NISA口座で積み立てた商品はいつでも一部または全額を解約(売却)することができます。
NISAは配当金や分配金が非課税になるのはもちろん、解約(売却)した際に生じる譲渡益も非課税になります。NISAとよく比較されるiDeCoは老後資金準備が目的であるため60歳まで引き出すことができませんが、NISAはいつでも解約し、換金することができます。
教育費のためにNISAを一部解約したい場合
「教育費用を積み立てNISAで準備している」とのことですので、おそらく新NISAの「つみたて投資枠」を利用し、投資信託を積み立てられていると思います。
投資信託の場合、保有口数の範囲内で解約を行うことができます。さらに「100万円分保有している投資信託から50万円分を解約したい」という具合に金額指定での解約も可能です。
つまり、必要な分だけ柔軟に資金化することができる仕組みになっているので、教育費など、時期や金額がある程度見えている支出には活用しやすい制度と言えるでしょう。
約定日と受渡日の違いに注意
投資信託を解約した場合、換金代金が手元に入るまでには数日かかります。注文を出して取引が成立する日を約定日と言い、解約代金を受け取ることができる日を受渡日と言います。投資信託の商品によって異なりますが、一般的には約定日から起算して4~5営業日後が受渡日となります。土日を挟む可能性もあるため、1週間程度見込んでおくと良いでしょう。入学料や受験料などまとまったお金が必要な時は、日数に余裕を持って解約してください。
計画的な解約のために投資信託の分散や見直しも
ご相談では「成長に伴い、一部解約」とのことですが、それはもともと予定していた解約でしょうか?中学、高校、大学と進学に伴い、通常、教育費の負担はどんどん増えていきます。進学のタイミングごとに、一定額ずつ解約することを見込んでいたのであれば、定期的に解約しても良いと思います。
一方、「大学の入学資金」と明確な目的があったにも関わらず、その途中で教育費が必要となり一部解約となれば状況は違います。大きな目的があるにも関わらず、途中で少しずつ解約をしていると、当然、目標に向けた積み立てが順調に行われているとは言えません。
このような場合は「どうしても今回解約しなければならないのか?」をもう一度、家計の収支状況や金融資産の状況を確認し、再考してみましょう。
NISAでの積み立ては、通常、時間をかけるほど成果を期待しやすいです。のちに「今回解約していなければ、もっと増えていたのに」ということも考えられます。こういった判断は非常に難しいところですが、今後も何度か途中解約を行う必要があるのであれば、今のうちから積み立て対象の投資信託の内容を見直しておくのも1つです。
投資信託の分散で柔軟な対応を
積み立てる投資信託の本数を増やすというのも見直し方法となります。例えば、月3万円を1つの投資信託にするのではなく1万円ずつタイプの違う投資信託3本に分けるという方法があります。
数年に1度、解約のタイミングが来た際に、それぞれの投資信託の運用状況、その時点での世界経済、相場状況などを考慮しながら、「Aファンドから30万円、Bファンドから20万円、Cファンドは好調で今後も価額の上昇が期待できそうなので解約しない」という具合に様々な解約の仕方が考えられます。
NISA対象の投資商品はリスクがあるため、リスクの低いNISA以外の金融商品でも教育費を準備しておくのも効果的です。
教育費は人生の3大支出の1つです。特にお子様が2人、3人と複数の場合は、一時的にまとまった資金が必要で大変な局面を迎えることもあります。ぜひ早めに先を見据えて、計画的にやりくりしていくことをおすすめします。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします