廃材をどう活用する!?自由な発想が楽しい「素材のセレクトショップ」
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廃材をどう活用する!?自由な発想が楽しい「素材のセレクトショップ」

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家具などの製造工程で出る木片やウレタン、規格外となった伝統工芸品からおみくじの切れ端まで、誰が何に使うのか分からないようなものがずらりと並ぶ「MATERIAL MARKET」。自由な発想で素材に新しい命を吹き込む、不思議な「素材のセレクトショップ」を運営するのは福岡在住で建築士、デザイナーなどものづくりを生業とする5人のメンバーたち。今回は、デザイナーとして活躍しながら「MATERIAL MARKET」を運営する久保哲也さん・睦さん夫妻にお話を伺った。

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Q.廃材や端材を集めて「素材のセレクトショップ」を始めようと思ったきっかけは?

Q.廃材や端材を集めて「素材のセレクトショップ」を始めようと思ったきっかけは?

哲也さん:僕はプロダクトデザイナーとして仕事をしているので、工場などにもよく足を運びます。そこで廃材置き場に山積みになった端材などを見て、捨てるのはもったいない、何か使い道はないか…とずっと気になっていました。

睦さん:彼の海外赴任が長かったこともあり、40歳を迎える前に国内で基盤を作っておきたくて、地元の福岡に戻ってきました。そこで福岡市のスタートアップ支援プログラムに参加したところ、そのときのテーマが「隠れた資源を活かす」でした。

哲也さん:自分たちがものづくりを続ける中でずっと抱いてきた思いとテーマが偶然一致して、「じゃあ廃材をそのまま“素材”として販売するのはどうだろう?」という話になって。その考え方に賛同してくれた仲間と5人で、素材のセレクトショップ「MATERIAL MARKET」を立ち上げたんです。

【左:BiVi福岡に期間限定で出店した「マテリアルマーケットブース」 右:糸島産木材の端材。一袋Lサイズ1000円/Sサイズ700円】

Q.スタートアップ時のお金のやりくりについて教えてください。

哲也さん:マテリアルマーケットの運営資金は、自己資金で賄っています。スタート時は、商品の仕入れから展示什器などはまず本業の収入から10万円程度を捻出し、その後はマテリアルマーケットの売り上げから補填しています。

睦さん:プロジェクトのメンバーにも本業をやりながら参加してもらっているのですが、人件費などは賄えていません。その代わりというほどではないのですが、メンバーには取り扱う素材を自由に使ってもらい、各自の創作活動に役立ててもらっています。

その中には商品として販売しているものもありますので、その売り上げはメンバーに還元できるようにしています。

哲也さん:現在はイベント出店やポップアップ出店などの売り上げを実店舗の出店資金として一つの口座にプールしていて、ある程度の目処が立ってきたところです。

Q.ネットショップではなく、リアルショップにこだわるのはなぜですか?

Q.ネットショップではなく、リアルショップにこだわるのはなぜですか?

哲也さん:一部の取扱いショップではネットでも販売していますが、ものをつくるとき素材感や手触りなどはすごく大事なものなので、実際に素材を手に取って触れることができる場を大切にしたいと思っています。また、イベントに出店するなどして、さまざまなワークショップを開いています。

素材を仕入れるときも、「こういうふうに使ってほしい」といったことは決めていません。直接見て、触れて、一人ひとりに素材の使い方を自由に発想する時間も楽しんでもらいたい。ただ、ご要望が多かったため取り扱い商品のご紹介というかたちで、ホームページにも一部掲載しています。

取扱商品(素材)紹介はこちら

【左:大分県日田市中津江村で見つけたマテリアル。ヒノキの枝を丸くカットしたもので、木材の節埋めに使うはずが、割れや汚れ、ヤニ等で商品にならなかったもの。マテリアルマーケットで「ヒノキコマ」として発売 右:マテリアルの活用例「ヒノキコマのリース」。メープルの輪にヒノキコマを木工ボンドで接着して作成。風に揺れるたびに香るヒノキが爽快】

Q.素材を「ハンティング」する基準は?

睦さん:基準は「萌えたもの」でしょうか(笑)。心にひっかかるもの、これは何だかいい!と思うものを仕入れています。

哲也さん:仕入れるものは担当したスタッフの目利きによって形や素材もさまざまですね。もちろん、全然売れない…というものもありますが、仕入れた人が責任を持って売ります(笑)。素材への思い入れもありますし、対面販売なのでご提案もしやすいんです。ありがたいことに、仕入れ先からのご紹介や、「こういうものがあるよ」と声をかけていただくことも増えてきましたね。

Q.どんな方が買っていかれるのですか?

睦さん:ものづくりが好きな方から、ショップで働いていてディスプレイに使いたいという方までさまざまです。

【伝統工芸「博多曲げ物」の廃材を使ったフレーム(右)と苔を埋め込んだプランター「こけわっぱ」(左)】

睦さん:私たちが考えていなかった新たな使い方を工夫される方もいます。博多の伝統工芸、曲げわっぱの枠の中にクッションを敷きつめて、「猫のベッド」にした方がいらっしゃいました。それまで、私たちはプランターカバーやランプシェードなどの使い方を提案していたのですが、これは面白い!と思い、この商品を対面販売するときは「猫のベッド」としてご提案しています。

【博多曲げ物の杉端材で作ったコースター。カットと彫り加工がおしゃれ。一枚500円※素材が無くなってしまったので現在は販売していません】

【手前:ウニ棒(ウニ箱用の長さのそろった端材)一束300円 右:大分日田 ヒノキコマ 一袋 500円 奥:ウニ棒とヒノキコマで作ったツリー】

Q.これから先、どんなことを行っていきたいですか?

Q.これから先、どんなことを行っていきたいですか?

睦さん:このお店を始めて、今までの「もったいない」という思いから解放されました。仕入れ先の工場の方や職人さんも、わざわざ私たちのイベントに足を運んでくださったりして、「自分たちが捨てていたものが、キレイに飾られて、名前までつけてもらって、売ってもらえるのがありがたい」と喜んでくださっています。やっぱりものづくりをしている方たちだから、本当はそんなふうに素材を捨てることにも心のどこかで引っかかっていたと思うんです。

それに、お店やイベントでたくさんの方とお話することで、新たな人間関係ができたり、いろいろな出会いのきっかけにもなります。だからこそ、このお店をずっと続けていけるように、利益などもしっかり考えて、今後は運営にも力を入れていきたいです。

哲也さん:そのためにも、販路ももっと広げていきたいです。今、主な仕入先は九州なんですが、今後は仕入先のエリアを拡大して取り扱う素材も増やしたいですし、残していきたい伝統工芸もたくさんありますので、そういったものに触れるきっかけづくりの場にもなれればと思っています。

現時点では実店舗がないので、いずれは素材を販売できるショップと、購入した素材をその場で加工できる作業場が一体となった場所をつくりたい。人や素材との新しい出会いのきっかけをつくれたらうれしいです。

※文中の価格はすべて税別 ※価格は予告なく変更になることがありますので予めご了承ください

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MATERIAL MARKET デザイナー 久保 哲也/久保 睦

MATERIAL MARKET デザイナー 久保 哲也/久保 睦

久保 哲也/1979年生まれ、長崎県出身。プロダクトデザイナー
久保 睦/1979年生まれ、福岡県出身。グラフィックデザイナー

ともに福岡の大学でデザインを学んだのち、哲也氏はプロダクトデザイナーとしてメーカーに勤め、東京・北京・上海等で勤務。帰国後、睦さんとともに「KUBO DESIGN STUDIO」を立ち上げる。ものづくりの中で生じる廃材等を“素材”としてハンティングし、新しい発想と素材の出会いの場を提供している。