ふるさと納税と住宅ローン減税の併用時、控除額をムダにしない方法とは!?
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iDeCo(イデコ)やNISAが普及していく中で、節税への意識が高まっているように感じています。ひいては上手に家計を管理しよう、貯蓄をしようという意識にもつながるので、とても良いことだと思います。今回の記事では税制面で知っておきたい住宅ローン控除とふるさと納税について解説をします。特に、併用する場合はせっかくのメリットを最大限享受できないことも想定されますので、1つ1つゆっくり一緒に確認しましょう。
住宅ローン減税制度とは
住宅ローン減税制度は「住宅ローン控除」と呼ばれる税額控除の1つで、年末時点の住宅ローンの残高に応じて所得税・住民税が減税される税額控除です。基本的に減税期間は10年間ですが、消費税率が2019年に8%から10%へアップされたこともあり、増税の影響を受ける購入者への配慮から、原則、2022年末までに入居した場合、10年間+3年間=13年間の減税が適用されます。
例えば年末時点で住宅ローンの残高が3000万円ある場合、その1%にあたる30万円が税額控除となります。
ふるさと納税で税金が控除される仕組みは
ふるさと納税は所得控除の1つである「寄附金控除」に該当します。寄付をした額に応じて控除を受けることができます。以下の表でも分かるように2000円は自己負担となるため、寄付をした額から2000円を引いた額が所得税・住民税の所得控除となります。
税額控除と所得控除の違いは?ふるさと納税の特例分とは?
ふるさと納税は「所得控除」で住宅ローン控除は「税額控除」となります。ここが大きなポイントであり、分かりにくい点でもあります。ここで所得控除と税額控除の違いを解説します。
以下の図のように、様々な所得を1つにまとめて課税する方法を総合課税と言い、まとまった所得のことを「総所得金額」と言います。
そして、この総所得金額から差し引くことができるものを「所得控除」と言います。ふるさと納税の寄附金控除がそれに該当します。所得税の場合、所得が大きくなるほど税率が高くなる超過累進税率が適用されているため、所得控除により総所得金額が小さくなれば、その分、税負担が軽減されるのです。
総所得金額から所得控除を差し引いて、税率を乗じると納めるべき税額が出てきます。ここで、この税額から控除できるものがあります。それが住宅ローン控除をはじめとする税額控除です。よって、先に紹介したように、30万円の住宅ローン控除の場合、そのまま30万円分税負担が軽減されることになります。
一方、ふるさと納税は所得控除であるため、例えば10万円寄付をしたとします。すると2000円を差し引いた9万8000円が所得控除になるのです。「9万8000円分、税額が軽減されるわけではない」ということが分かると思います。もし所得税率が20%であれば、9万8000円の20%、1万9600円分の所得税が減ることになります。これは住民税でも同様の計算をします。住民税の場合、税率が一律10%(原則)のため、9万8000円の10%、9800円分の住民税が減ります。
所得税で1万9600円、住民税で9800円、合計2万9400円税負担が軽減されました。でも、ふるさと納税として10万円寄付し、2万9400円の軽減となれば、差し引き7万円以上も寄付金額が多くなります。「確かに美味しいお肉や特産品をもらったし・・・」と納得できる差額でしょうか?
ふるさと納税は所得控除という仕組み上、全てが税額の軽減にはならないため、特例としてその差額分を住民税からさらに差し引いて良いということになっているのです。これで自己負担の2000円分を除けば、寄付をした額と所得税・住民税の軽減額が一致するような仕組みになるのです。
ふるさと納税は厳密に言えば節税ではありません。所得税は国税であるため、本来、国と皆さんが住んでいる自治体に納税するはずだった所得税と住民税分を他の自治体に納税しているということになります。納税先を自ら選ぶことで特産品などがもらえ、その分、おトクになるのがふるさと納税です。
寄附金控除を適用する上で税務上自己負担額が2000円あるため、ふるさと納税でもらえる特産品が2000円以上分の価値を感じることができれば、ふるさと納税を行って良かったということになります。
ふるさと納税と住宅ローン控除、どちらも住民税での適用には上限がある
ふるさと納税の場合、所得税の軽減額は「納税額-2000円×あなたの所得税率(上記例の場合5%)と限られ、むしろ住民税の方で大きな控除となります。ただし、住民税での控除は住民税のおよそ2割(所得割の2割)が上限となっています。住民税はその年の所得に対して翌年度課税されます。自身の1年間の収入状況を把握しながら住民税額を概算しておかなければふるさと納税が上限額以上となってしまうということも考えられます。
なお、住宅ローン控除も同様のことがいえます。まずは所得税から控除しますが、所得税の額よりも住宅ローン控除の額が多い場合、余った分は住民税で使うことができます。しかしこちらも控除できる住民税に限りがあり、課税総所得金額等の7%または13万6500円が上限となります。よって、そもそも納めるはずの所得税や住民税(上限あり)以上の住宅ローン控除が適用されても使いきれず、恩恵を最大限享受できないということも考えられます。
ふるさと納税と住宅ローン減税を併用すると起こる影響や注意点
それぞれの税の仕組みが複雑なうえ、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用となれば、さらに注意点が増えそうです。これまで説明してきた仕組みを踏まえながら、併用することによる影響や注意点を紹介します。
住宅ローン控除があるためにふるさと納税による節税効果を発揮しない
所得を小さくする「所得控除」より、税額が小さくなる「税額控除」の方が効果が大きいため、住宅ローンを組んだばかりなど、ローン残高が大きく控除額がしっかりある場合、それだけで税金の負担がほとんど生じないという場合があります。そのような状況で、ふるさと納税を行っても、他の自治体に寄付をする金額が増える一方で、それに応じた所得税・住民税額の軽減を受けられないということになります。これが併用する際の代表的な注意点です。
例えば年間の所得税が10万円、住宅ローン控除額が25万円だったとします。ローン控除額が所得税を上回っているため、この年の所得税は0円となります。この場合ふるさと納税を行っても所得税控除の恩恵を最大限に受けることはできません。では、ふるさと納税を住民税だけで適用できれば効果的なのに。と思った人もいるのではないでしょうか?
控除額をムダにしないためには?ワンストップ特例制度の活用
ここでもう一度それぞれの特徴の中でも大事な点を整理します。
このような課税の仕組み、流れ、そして上限があるため、最大限恩恵を享受できない可能性があるのです。そこで、注目したいのがワンストップ特例制度です。
ワンストップ特例制度の活用
会社員の方を中心に確定申告に慣れていない人も多いと思います。確定申告が煩雑だという場合はワンストップ特例制度という便利な制度があります。これは5自治体以内への寄付の場合に利用できる制度で、寄付する際に、ワンストップ特例制度のための申請書や必要書類を合わせて添付することで、確定申告が不要となります。
※申請書は「さとふる」よりダウンロードできます。
https://www.satofull.jp/static/onestop.php
このワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からの還付はなく、全額が住民税からの還付となります
所得税では「税額控除」という大きな効果が期待できる住宅ローン控除がどっしり構えているため、ふるさと納税を住民税だけで適用することで最大限の恩恵を受けやすくなるのです。
ワンストップ特例制度の注意点
ワンストップ特例制度を使えば確定申告も必要ないし、併用する際も効果的だし、良いことばかりのようですが、注意点もあります。それは「確定申告を行わなければならない状況」にある場合です。
例えば住宅ローン控除を受ける際、1年目は必ず確定申告が必要となります。ワンストップ特例制度はあくまで確定申告を行わないことが前提の制度なので、確定申告をするとリセットされて、確定申告の際にふるさと納税分も改めて計算することになります。つまり「ふるさと納税を全額住民税で適用したい」ということができなくなるのです。そもそも自営業の方など毎年確定申告が必要な方も同様です。
医療費控除や雑損控除などを申告したい場合
「医療費控除や雑損控除などを確定申告すれば税負担が軽減される」場合です。この時、既にワンストップ特例制度を利用している場合、確定申告を行う方が有利なのか不利なのか、総合的に判断することになります。ふるさと納税の上限額の目安をシミュレーションできるサイトなどもいくつかありますので上手に活用してください。
FPに寄せられる相談事例
冒頭でもお伝えしましたが、ふるさと納税をきっかけに税金や家計のことに意識が高まり、FPに相談するというケースもあります。特に共働きの夫婦から相談を受けることがあります。
共働きの場合、それぞれに税金負担が生じている場合があります。お互いの年収も異なり、一方だけが住宅ローン控除を適用しているというケースも。もうお分かりだと思いますが、この場合、住宅ローン控除を受けていない人がふるさと納税を積極的に行った方が良さそうですね。このように夫婦で家計のことを考える機会となれば、ますます老後に向けて資産形成に弾みがつきそうです。
まとめ
ふるさと納税と住宅ローン控除の併用の際は税金の仕組みを理解することから!
どちらも私たちにとって魅力的な制度です。ただし、1つ1つにも上限など注意点がある中で併用ともなればさらに気を付けなければなりません。ふるさと納税は毎年可能ですが、住宅ローン控除は一定期間だけです。住宅ローン控除を受けるということは住宅を購入したということでもあるため、両制度を併用する上での注意点を表面的に把握するのではなく、せっかくの機会なので所得税や住民税がどのような仕組みになっているのか?しっかり把握してください。さらなる気づきがあり、一段とお金の管理がレベルアップするかもしれませんよ。
ふるさと納税と住宅ローン控除についてのQ&A
Q.住宅ローン控除とふるさと納税の併用の場合と同様、生命保険料を払った際の保険料控除も影響することがありますか?
A.生命保険料控除も所得控除であるため、ふるさと納税と同様のことが考えられます。例えば、「所得税や住民税の負担を軽減したいから」と生命保険料控除活用目的で保険に加入しても、住宅ローン控除が大きい場合はあまり効果がないということも考えられます。ただし、生命保険は長く払い続ける契約が多いのに対し、住宅ローン控除は10年(または13年)で終了となるため、住宅ローン控除が終了した後に効果が期待できるかもしれません。
Q.ふるさと納税を行いましたが、実際に効果が出ているかどうか、どこで確認することができますか?
A.翌年度の住民税の源泉所得税額で確認することができます。ふるさと納税を行った翌年の住民税が減ることとなるため、翌年の6月以降の源泉徴収額が昨年よりも減っているかどうか確認してみてください。ただし、そもそも前年の所得が増えている場合は当然住民税も増えるため、「あまり昨年と住民税の源泉徴収額が変わっていない」ということも考えられます。勤め先からもらう1年間の住民税源泉徴収額の明細(住民税決定通知書)や役所等で詳細はご確認ください。
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