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児童手当の振込先、夫から妻へ口座変更は実は難しい?その条件とは?

ためる 中村 賢司

児童手当の振込先、夫から妻へ口座変更は実は難しい?その条件とは?

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児童手当は0歳から中学3年生までの子供を養育している親に支給されますが、この児童手当の受給者は簡単に変更できないことをご存じでしょうか。

家計管理の観点から振込口座を「母親にしたい」と思っても、簡単に変更はできません。また、離婚や別居で受給者変更したい場合でもさまざまな条件があります。

そこで今回は、意外と知られていない、児童手当の受給者を変更する難しさ、変更するための条件、具体的な変更手続き等についてまとめました。振込口座を変更したいという方は参考にしてください。
 

児童手当の振込先は父親・母親どちらでもいい?

児童手当は児童を養育している親(父母等)が請求できます。その受給者は一般的には世帯主ですが、両親とも働いている場合は所得が高い方が受給者となります。

児童手当の受給資格は

児童手当の受給資格は、0歳から中学卒業まで(15歳の誕生日後に迎える3月31日まで)の児童を養育している父母となっています。

子供が生まれて、児童手当を受給開始したい場合は、各自治体の窓口で認定請求を行います。自治体により郵送請求や電子請求ができるところもあります。児童手当を受給するためには必ずこの認定請求が必要です。公務員の方は勤務先でこの認定請求ができます。

児童手当を受給できる要件は原則以下のとおりです。

一般的には父母のどちらかが受給者となり、その受給者名義の銀行口座を児童手当の振込先として申請します。父母ともに働いている場合は、恒常的に所得が高い方が受給者となります。子供が2人以上いる場合でも指定できる振込先はひとつです。

また、毎年6月には児童手当を引き続き受給できるかの状況を把握するために現況届の提出が必要でした。しかし2022年(令和4年)6月以降は下記の方を除き、現況届の提出が不要となりました。

児童手当の振込口座を変更する条件

児童手当
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現在、児童手当を受給している人名義の銀行口座ならば、後述する所定の手続きを取って振込口座を変更することができます。

しかし、配偶者や子供名義の口座へ変更することはできません。つまり、夫の口座から妻の口座に変更することは原則できないのです。

受給者である夫が児童手当を使い込むから妻名義の口座へ変更したいなど、振込口座を変更したい理由はいろいろあるでしょう。しかし、この場合も認められないのです。

しかし次項で述べる理由があれば、受給者でない人の銀行口座へ名義変更できる場合があります。

受給者変更(現在受給者でない人に名義変更)できるケースとは

受給者の変更は原則できませんが、離婚した場合や離婚を前提に別居した場合、受給者が海外へ移住した場合は変更が可能です。

それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。

離婚した場合

離婚をした場合は、夫か妻どちらかが子供を養育することになります。児童手当の受給資格は「児童を養育している父母」ですので、離婚前の受給者が夫でも、離婚後子供と同居するのが妻であれば妻が養育者となり、妻名義の口座に振込先を変更することができます。

離婚の場合は、父母の所得の高低ではなく、誰が子供を養育するかという点が優先されます。また親権がどちらにあるかも関係なく、離婚後に児童と同居する方が受給者となります。

手続きについては、離婚前の受給者が「受給資格消滅届」を提出する必要があります。金銭問題が原因で離婚する場合は、この点も配偶者に約束する必要があるのでご注意ください。受給資格消滅届が提出された後は、新たに受給者となる人が認定請求の提出をする必要がありますので忘れないようにしましょう。

離婚が成立していなくても、協議中で別居している場合は、以下の要件を両方満たしていれば、現受給者から配偶者の口座へ変更することができます。

ただ不仲による別居だけでは受給者を変更できませんのでご注意ください。

受給者が海外に移住する場合

受給者が単身で海外へ移住する場合も配偶者の口座へ変更することができます。

受給者が仕事の関係などで海外へ移住する場合、日本国内に住民票が存在しなくなり、児童手当の受給資格がなくなります。配偶者が日本に残る場合は、現受給者から配偶者へ児童手当の受給者を変更することができます。

しかし、家族全員で海外へ移住する場合は、児童手当の受給資格はなくなります。前述したとおり児童手当の受給資格に、児童が日本国内に住んでいる場合という要件があるからです。

父母が海外へ移住し子供が日本国内に残る場合は、子供を養育する方が代理となり児童手当を受け取ることができます。祖父母など日本国内にいる方を「父母指定者」としておくことで祖父母が児童手当を受け取ることができます。ただし父母指定者にも要件がありますので、詳しくは各自治体に確認するようにしてください。

また、子供のみが海外に移住する場合、3年以内の留学などの要件を満たしていれば児童手当を受給することができますが、それ以外の理由による海外移住の場合は受給できません。

児童手当の口座変更に必要なもの

今まで見てきた理由により、児童手当の受給者を変更できる場合は、以下の必要書類を揃えて振込口座を変更します。

基本的には各自治体の窓口で手続きを行いますが、仕事で窓口に出向くことができない場合などは郵送で手続きができる場合もあります。各自治体のホームページから振込先口座変更届をダウンロードし、印刷して提出するか、郵送で書類を取り寄せることもできます。

手続きにあたっては各自治体により詳細が異なりますので、市区町村の窓口へ確認するようにしてください。

振込口座を変更する場合の注意点

裁判で親権を争う
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児童手当の振込日直前になると変更手続きが間に合わないことがあります。その場合は変更前の口座へ振り込まれるため、現受給者の口座は解約しないように注意しましょう。

児童手当の支給月は、2月、6月、10月の年3回です。10~1月までの4カ月分が2月に、2~5月までの4カ月分が6月に、6~9月までの4カ月分が10月に振り込まれます。

離婚による口座変更の場合、手続きが間に合わなければこの4カ月分が現受給者の口座へ振り込まれます。そうならないためにも、現受給者から早めに受給をストップする「受給資格消滅届」を提出してもらい、新たに受給者となる方が「認定請求書」を速やかに提出する必要があります。

支給月の10日に児童手当が振り込まれますので、遅くともその2週間前までに余裕をもって変更手続きをするようにしましょう。

まとめ

今回は児童手当の口座変更ができる場合とできない場合について解説しました。特に以下の点について理解を深めていただければと思います。

児童手当の振込先を変更したい場合、条件を満たした理由がなければ振込先の口座を変更することはできません。

児童手当とは、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資する制度です。よって受給者はこの趣旨に則って子供の健やかな将来を考え有効に使う必要があることを忘れないようにしましょう。

児童手当についてのQ&A

Q.児童手当の受給者が育児休業により一時的に配偶者より所得が低くなりました。この場合受給者変更はできますか。

A.児童手当は父母のうち所得が高い方が受給者となることが原則です。一時的に所得が逆転した場合は、健康保険上の扶養、税法上の扶養、住民票の世帯主などの要件を考慮した上で総合的に判断されます。詳しくは各自治体の窓口へお問い合わせください。

Q.子どもが生まれてから半年が経ちます。児童手当の手続きをしていなかったのですが、この半年間の児童手当はもらえるのでしょうか。

A.児童手当を新規で受給する場合は認定請求という手続きが必要です。この認定請求は、出生日・児童を養育し始めた日の翌日から15日以内となっています。申請が遅れた場合、遅れた月数分の児童手当は受給できなくなりますのでご注意ください。また引っ越した場合も転居した日から15日以内に転入した自治体で認定請求の手続きが必要となります。