「5年後損する?」FPがあえておすすめしないNISAの6つのデメリット (3ページ目)
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これらの内どの方法にするかを選んで年末までに対応しなければならず、特に③のロールオーバーを希望する場合は、年内11月末までに一定の書類をNISA口座を開いている金融機関に郵送しなければなりません。ここが非常に難しいのです。11月中に判断した後、12月で相場が大きく変動するかもしれません。当然、翌年以降5年間の相場展開もある程度予測しながら判断する必要があります。「たら、れば」といいたくなるような状況が想定され、特に2018年の12月が世界的な株安に見舞われたので誤算だった人も多いと思います。
※金融機関によってロールオーバーの手続き等対応が異なる場合があります。
3-2. NISA最大のデメリットとは?損失したのに税金を払わねばならない
この「誤算」の内容について、もう少し具体的に解説していきましょう。
「5年前に50万円で買ったNISA枠の株式が70万円になっている。売却してもいいけど、しばらく保有を続けたい。来年もNISA枠を活用して新規で買付を予定しているのでロールオーバーもしたくない。よし、このまま課税口座に移そう」。こう決意して、11月末に何も手続きをしなかったとします。
前述のように、このまま70万円で年末を迎え、無事“卒業“できればいいのですが、11月末に判断した後、その年が終わるまでまだ1ヵ月あります。もし、大荒れ相場となり株価が急落したらどうなるでしょうか?12月末で70万円から40万円まで下落し、年内最後の取引を終えた場合は40万円でNISAを”卒業“することとなり、翌年、40万円の取得価額として課税口座へ”進学“することになります。もうこのあたりで「これはデメリットだ!」ということに気づく人も多いと思います。
そうです、このケースは、その後40万円から値上がりした分が課税対象になるのです。新しい年になり、その後5万円ほど値上がりし45万円に。もともと50万円で購入した株式なので、まだ含み損という状況ですが、課税口座では5万円(45万円-40万円)の利益が生じているとみなされるのです。損失が生じているのに課税されるというケースです。これは非常に大きなデメリットとなります。
ロールオーバーした場合も同様です。「もっと利益が期待できる」ということでロールオーバーした結果、その後大きく下落して「再入学した5年間」で一度も適した売却タイミングが無ければ、いつか低い価額で課税口座へ移管することになります。
3-3. デメリットを理解してNISA運用
上で紹介したように、NISA制度には大きなデメリットもあるため注意が必要です。特に、投資初心者の方がNISA口座で取引をしているケースも想定されます。株式や投資信託の売買自体に慣れていない中で、NISAのデメリットにも目を向けなければならないのは、大きな負担となりそうです。
私は、よくNISAをもじって「NISAは2の次、3の次でいいさ」とアドバイスすることがあります。NISAの仕組みや今回紹介したデメリットよりも、そもそも資産運用や投資はどうあるべきなのか?なぜ資産運用を行うのか?こういったことを最優先に考えて、その延長線上でNISAも上手に活用してほしいものです。では、最後にNISAのメリットも確認し、上手な活用方法を紹介します。
4. NISAで損しない、おすすめの活用方法とは
消費税増税を控え、何かと税や社会保険料の負担が増している中、「非課税」というNISAの制度はやっぱり魅力的です。よって、5年または10年程度で大きく上昇しそうな株式や投資信託、あるいは定期的に高い配当利回りが期待できる株式などをNISA枠で活用し、一定のメリットを享受できた後、一度売却をする、または課税口座へ移管するといった活用方法になると思います。
まさに、デメリットで紹介した逆の展開で利用したいところです。とはいえ、やはり投資対象次第、相場次第ということもあり、誰もが理想的な展開で取引できるとは限りません。そうならないように、もう一歩踏み込んで以下のようなNISAの活用方法を検討してみてはいかがでしょうか?
✓特徴の違う株や投資信託を複数NISA枠で購入する
✓積立でNISA枠を活用する
✓長期的な資産形成にはNISAは活用せず株の短期売買でNISAを活用する
まず、タイプの違う投資商品をいくつかNISA枠で購入しておくことで、相場展開次第で柔軟に対応しやすくなります。一般的に株式と債券は、逆の動きをしやすいといわれています。そして景気や相場は循環します。株式市場が好調なときに株を売り、債券系のファンドは次の相場展開を待つといった対応ができると、NISAの非課税メリットを上手に活用することができそうです。
または、毎月の積立などをNISA枠で行うのはいかがでしょうか?そもそも「つみたてNISA」がありますが、一般NISAでも月10万円×12月=120万円というように定時積立が可能です。定時積立は、ドルコスト平均法によって平均単価が下がりやすくなります。毎月5万円A株を購入するという具合にあらかじめ決めているため、A株が下げているときはたくさん株数を買うことができ、A株が高いときには自動的に株数は少なくなります。相場展開が良くても悪くても、定時積立を行っていることで5年、またはロールオーバーをして10年以内には売却益が生じる展開が期待できそうです。