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「5年後損する?」FPがあえておすすめしないNISAの6つのデメリット (2ページ目)

ふやす 内山 貴博

①は「当面使わないお金が500万円あるから、老後資金として資産運用しよう」といった場合です。その後NISA制度の存在を知り、「120万円を超えた部分は課税対象になるなら、やっぱり投資に回さない」と方向転換する人が非常に多いのです。家計の状況やこれからのことを考え、500万円を投資に回すべきという決断に至ったはずですが、それを覆して投資額を少なくするのはいかがなものでしょうか?投資をする機会を失う、「機会損失」につながるかもしれません。もちろん、今後の相場動向次第ではありますが、人によってどれだけリスクを取れるのか、投資に回せるのかは異なります。NISA枠にこだわらず、本来のあるべき投資スタイルを優先してほしいと感じています。

そして②も同じことがいえますが、①と状況は逆で「せっかく120万円まで非課税枠があるので使い切ろう」と本人の投資適正額をオーバーして投資に回すケースです。例えば、本当は翌年の車買い替え資金にする予定だった冬のボーナスを、未使用分のNISA枠を使うために投資に回すというケースです。これもいかがでしょうか?投資は長期で余剰資金を使って行うのが原則です。NISA枠を有効活用するために背伸びをしてしまってはいけません。

2-3. 損益の通算ができないというデメリット
NISAは、非課税口座というより「税金無関係口座」と覚えておく方が良いかもしれません。本来、A株で100万円売却益、B株式ファンドで100万円損失となった場合は利益と損失が相殺され、プラスマイナスゼロとなり課税されることはありません。ただし、B株式ファンドをNISA枠を使って購入していた場合はどうでしょうか?
NISAはそもそも税金と関係がないため、NISA枠で生じた損失を他の利益と通算することはできないのです。損益の状況次第では、NISA枠を活用したことがデメリットとなることも覚えておいてください。

2-4. すでに投資している分はNISAを使えないというデメリット
NISAという制度ができる前から投資をしている人はその残高をNISAに移したいところですが、すでに購入している株式や投資信託をNISA枠に移すことはできません。「新たに投資にお金を回す」ということがNISAでは求められています。

こういったさまざまデメリットがありますが、実は最も大きなデメリットで、かつ判断が難しいのが非課税期間満了の到来時です。

3. NISA最大のデメリットは非課税期間の終了、5年後に損するって本当?

投資と時間
【画像出典元】「iStock.com/ismagilov」

NISAが始まったのが2014年、そして昨年(2018年)、初年度に投資した金額が非課税期間の5年満了を迎えました。非課税期間の5年が終わる際に、最大のデメリットが到来するかもしれません。

NISAを利用している投資家の皆さんはもちろん、証券会社や銀行の担当者も非課税期間満了を迎えるのは初めての経験です。筆者自身もいち投資家として、そしてFPとして「当初投資分は今年で5年となり、非課税期間が終了する」ということは認識していましたし、期間満了にともないどのような対応をすべきか、そしてどういった注意点があるのかということも理解していたつもりでした。デメリットを被らないような方法も踏まえているつもりでした。

ただ、実際に手続き方法などの案内が始まるとどう対応するのが適しているのか?と頭を悩ますこともありました。私自身の実際の経験を踏まえ、まずは5年経過となった場合の一般的な対応方法について確認します。

3-1. 5年後、非課税期間が終了する際に対応すべき3つの方法
NISAは毎年120万円を限度に非課税枠を活用し投資ができますが、それぞれ5年が非課税期間となります。よって今年(2019年)は2015年に投資した分が5年の期間満了を迎えることになります。その期間満了までに対応すべき点は、大きく分けて以下の3つです。

①期間満了前に売却する
②課税口座に移管する(手続きは原則不要)
③来年の非課税枠を活用するためにロールオーバーする

まず、①は非課税期間の5年以内に売却をすることです。含み益があれば売却することで売却益が非課税となるため、NISAのメリットを享受できます。「期間満了が近づいています」という案内通知が来た際に、利益が出ているものは一回売却する。シンプルではありますが、最もNISAの恩恵を受けることができる選択かもしれません。

または、素直に期間満了を受け入れ課税口座に移すことを選んでもいいでしょう。これが②に該当します。私はこれを「NISA枠からの卒業」と表現しています。もし、50万円で買っていた株式が70万円になっていたとします。この場合、70万円の株式として“卒業”し、課税口座に“進学”します。その後は70万円からの値上がり分が課税対象となります。よって、NISA期間中に値上がりした分は実質非課税ということになります。

でも、70万円よりもさらに値上がりが期待できそうという場合は③を選ぶのも1つです。この場合、翌年の120万円の枠を活用することができます。これをロールオーバーといいます。ロールオーバーするとその分、翌年のNISA枠での買付額が減りますが、さらに最大5年間非課税で運用することができます。いわば、NISA口座への“再入学”です。「あと5年通学させてください。その間にしかるべきタイミングで卒業しますので」といったところでしょうか。