なぜ?韓国はキャッシュレス96%、日本が遅れる背景にATMの弊害か
目次
最近は国内でも電子マネー決済が普及し、「キャッシュレス」が身近な時代となってきました。しかし日本はまだまだ序の口。海外では現金を持ち歩くことの方が珍しいほどキャッシュレスが進んだ国もあります。今回は、世界各国のキャッシュレス事情について、日本と比較しながらご紹介していきます。
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世界と日本のキャッシュレス比率の違い、日本はまだまだ出遅れている
野村総合研究所が公表した「キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識」資料内で、2016年度における諸外国のキャッシュレス比率がまとめられています。
<諸外国におけるキャッシュレス比率 2016年度>
・韓国 96.4%
・イギリス 68.7%
・中国 約60%(2015年時)
・オーストラリア 59.1%
・シンガポール 58.8%
・カナダ 56.4%
・スウェーデン 51.5%
・アメリカ 46.0%
・フランス 40.0%
・インド 35.1%
・日本 19.8%
・ドイツ 15.6%
出典:野村総合研究所 キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識
特にここ10年で急速にキャッシュレス化が進んでいるのが、韓国・中国・シンガポール・インドといったアジア圏の国々です。一方で日本のキャッシュレス比率は19.8%と低く、先進国としては世界に大きく出遅れています。
韓国のキャッシュレス普及率は約96%。世界各国を見ると「モバイル決済やクレジットカード決済が当たり前」「現金不要」の国も
さてキャッシュレス化が進んでいる世界では、どのような取り組みが行われてきたのでしょう。世界各国のキャッシュレスの事例をみていきましょう。
韓国
韓国はキャッシュレス比率が96.4%となり、世界一キャッシュレス化が進んでいる国です。経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」(2018)によると、韓国でキャッシュレス化が進んだ背景に1997年のアジア通貨危機による影響の打開策として、韓国政府がクレジットカード利用促進を実施してきたことが挙げられます。 その他、韓国銀行が進めるコインレス・キャンペーンや政府主導のクレジットカード手数料を軽減する動きなども追い風となり、韓国が世界1位のキャッシュレス国へと変貌を遂げたのです。
出典:経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」(2018)
韓国は次のような政策を行い、キャッシュレス化を促進しています。
・年間クレジットカード利用額の一部を「所得控除」する減税処置
・クレジットカードの利用控えに「宝くじ」を付ける
・店舗でのクレジットカード取扱義務化 など
このように国をあげて政策が行われ、キャッシュレス化が大きく進みました。
中国
中国はスマホアプリによって急速にキャッシュレス化が進んだ国です。
特に大きな影響を持っているのが、アリババ社が運営する「アリペイ(Alipay)」。アリペイは、買い物、タクシーやホテルの予約、公共料金支払い、病院の予約などあらゆるものに利用できるスマホ決済アプリです。ユーザー数は2017年時点で5億2000万人まで達し、キャッシュレス化を後押ししました。
スウェーデン
スウェーデンは、交通機関での現金取扱停止、ATM削減、さらには現金支払拒否が法的に担保されるなど、国をあげてさまざまな取り組みが行われキャッシュレス化が進みました。背景には「寒い冬の現金輸送の難しさ」、「現金強盗の多発」などの問題があったようです。
2012年にはスイスの主要6銀行が共同開発したキャッシュレス決済アプリ「スウィッシュ(Swish)」が始まり、このアプリが大きく普及したことも、キャッシュレス化の後押しとなりました。
インド
インドでは2016年に、ブラックマネーの撲滅を目的として、1000ルピー紙幣と500ルピー紙幣が廃止されました。突如2種類の高額紙幣が廃止されたことで大混乱となりましたが、現金紙幣の不足を補うためにキャッシュレス化の取り組みが進み、結果的にキャッシュレス社会へ変貌しました。
エストニア
エストニアは今世界中から注目されているIT国家です。国全体でIT化・電子化に取り組んでおり、あらゆる手続きが情報端末で行えます。ゆえに国民のITリテラシーも高く、キャッシュレス化もスムーズに進んだようです。
多くの店舗でキャッシュレス決済が可能であり、レジの無人化も進んでいます。そのため露店など意外な場所でも電子決済が可能。現金いらずの国と変貌を遂げました。
日本のキャッシュレス決済はクレジットカードがメイン。今後はQRコード決済が普及する?
一方で日本は、海外に比べてキャッシュレス化が出遅れています。理由としては諸説ありますが、「日本はATMがいたる所にあり現金が使いやすい」、「偽札がほとんど流通しておらず現金の信頼性が高い」、「キャッシュレスのセキュリティ面を不安視する傾向がある」ことなどが、キャッシュレス化の弊害となっていると考えられています。
さらに日本のキャシュレス化には特徴があり、日本消費者の多くは、店舗先で「クレジットカード」を使うキャッシュレス決済を行っています。電子マネーやスマホアプリを使ってキャッシュレス決済する消費者は、海外に比べるとまだまだ少ないのが現状です。
とはいえ、最近は「PayPay」や「楽天ペイ」など各種Payサービスが普及し始めてきました。さらに2019年8月より、QRコード決済の統一規格「JPQR」もスタート。今後は日本でもクレジットカード以外のキャッシュレス決済が、本格的に始まっていくかもしれません。
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以上、世界各国と日本のキャッシュレス事情についてご紹介しました。日本は海外に比べると出遅れているのが現状ですが、国内でのキャッシュレス化は現在進行形で急速に進んでいます。キャッシュレス決済が可能な店舗も続々と増えており、昨年2018年には大手Payサービス「LINE Pay」が加盟店100万店突破を達成しています。来年、再来年は日本のキャッシュレス事情が大きく変わっている可能性も十分あるでしょう。