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低収入のシングルマザー、マイホームを建てるためのポイントは?

FPに聞きたいお金のこと 内山 貴博

低収入のシングルマザー、マイホームを建てるためのポイントは?

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今回は、低収入だけど新築のマイホームを建てたいという母子家庭のシングルマザーからのご相談です。夢実現のために、質問に回答させていただきます。

<相談内容>

子供が1人いるシングルマザーです。子供と自分のために「小さくてもいいので新築の一軒家を建てたい」というのが長年の夢です。シングルで低収入ではありますが、住宅ローンは組めるのか、こんな私でも夢は叶えられるのか、そのためにはどのくらいの年収が必要なのか、無理のない返済プランはどういうものか…専門家の見解を聞いてみたいです。(30代女性 Hさん)

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シングルマザーでも住宅ローンは組める

住宅購入を検討する女性
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結論からお伝えしますと、シングルマザーだから住宅ローンが組めない、ということはありません。子育てをしながら仕事を頑張り、住宅ローンを返済しているシングルマザーは多くいます。ローンを組むときには、返済能力を審査されるため、年収が多いに越したことはありませんが、一番重要なのは「返済できる範囲での物件を検討する」ことです。

各銀行のホームページには「住宅ローンをご利用いただける方」という案内があります。銀行によって多少の違いはありますが、概ね、求められている内容は同じです。そして、安定的な収入として年収200万円前後を最低ラインとしている銀行も多いので、1つの目安として参考にしてください。

次に「返済できる範囲」を探るために1つの目安として「年収負担率」も意識してください。
年収負担率とは年収に対する年間ローン返済額の割合のことです。一般的に銀行の審査で年収負担率は30%程度となっています。ですから例えば月7万円を返済額とすると、年間で84万円となり、年収の30%が84万円になるためには84万円÷30%=280万円の年収が必要であるという計算になります。(通常、年収負担率を計算する際の金利は、各銀行が行う引き下げ適用前の店頭金利で計算します)

上記負担率と同様の計算で、より簡易なものとして用いられているのが「住宅ローン借入額は年収の7倍程度」という目安です。もし年収が250万円の場合はその7倍にあたる1750万円が借入額の目安となります。

いずれも目安であるため、返済できるかどうかはもう1歩踏み込む必要があります。シングルマザーの人の原因の多くは離婚で、中には元夫から養育費をもらっていないシングルマザーも少なからずおられます。その場合、実家からの援助をもらったり、当面実家で生活をしながら頭金を貯めるといった方法も選択肢になると思います。

貯めたお金を頭金で使うかどうかは別にして、一定の金融資産を有していることは住宅ローンの審査を受ける上でも有利にはたらきます。シングルマザーで低収入とのことで日々家計管理が大変だとは思いますが、母子2人の夢実現のために、少しでも貯金をすることから始めてください。上記のように購入額・借入可能額の目安を計算しておくことで、より住宅購入が現実的な目標となり、貯蓄・節約への意識も高まると思います。

マイホームの購入時期を決めれば予算や計画が自ずと決まる

仮に年収が200万円~250万円程度の場合、その7倍は1400万円~1750万円となります。「小さな家」とはいえ、人気エリアで新築戸建てとなるとかなり難しい水準です。差額を穴埋めできるだけの頭金を貯めるのか、物件価格の安いエリアにするのか、そういったことを決める上で、子供の教育環境も視野に入れなければならないと思います。

まずは「いつまでに家を買いたいのか」という期限を明確にしてください。母子そろっての夢であるため、きっと食事をしながらそんな話をしているのだと思います。転校も可能かどうか?こういったことも含め、「いつまでに」が決まると、自ずと予算も定まってきます。

どうしても予算内で新築が難しければ中古を検討することも必要です。築年数の古い中古物件をリノベーションして割安で提供している場合もあります。こういった物件も選択肢に入れてみてください。

マイホームを建てる目標達成のためには収入アップも検討を

母親と子供
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「インターハイ出場」「志望校合格」「独立開業」など、夢や目標を達成するには、相応の努力が必要となります。母子そろって新築購入が大きな夢ならば、まさに部活に打ち込む学生が「全国制覇」を目指すように、精いっぱいの努力をしてください。

一人親世帯の貧困率は二人親世帯の貧困率よりも非常に高く、5割を超えていると言われています。(厚生労働省/平成28年国民生活基礎調査より)貧困により、充実した教育を受けることができない「教育格差」が社会問題にもなっています。もし、住宅で無理をして、日々の生活費や教育費で無理が生じてしまっては本末転倒と言わざるを得ません。

「住宅は数年先でも」ということであれば、雇用保険の一般教育訓練給付金や専門実践教育訓練給付金制度を使い、収入アップを目指して資格取得やスキルアップという道もあります。仕事、子育て、そして勉強となるとさらにハードな日々も想定されますが、「夢実現」のためと奮起してもらいたいです。

母子家庭に特化した住宅購入サポートを提供している住宅販売会社もあるようなので、前向きに検討しながら少しずつ、できることから行動に移してみてください。