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お金の本質とブロックチェーン (2ページ目)

松田 学のみらいのお金と経済 松田 学

21世紀は分散型社会に変化

そもそも、これまで人類の文明は、中央集権的な仕組みを高度化させることで発展してきたと言っていいでしょう。銀行や金融だけでなく、どの社会の仕組みも、それぞれを管理運営する中央管理者への信頼で成り立ってきました。実は、ブロックチェーンとは、仮想通貨の基盤としてだけでなく、社会のさまざまな仕組みに実装されることで、人類社会それ自体を、中央集権的な社会から分散型の社会へと変革するとされているものなのです。21世紀はブロックチェーン革命が進行して、分散型社会に変化していくとも言われます。

さて、いまの仮想通貨は、このブロックチェーンと呼ばれる電子的な台帳に記載されたデータに過ぎません。国や銀行の信用の裏付けのある法定通貨とは異なり、電脳空間に存在するまさに「仮想」的なお金に過ぎないのではないかと指摘されてきました。ブロックチェーンを活用したビットコインの生みの親とされるサトシ・ナカモト論文でも、それは空気のような存在とされているようです。

つまり、そこに経済的な価値があると参加者のみんなが思っているから、経済的な価値があるとみんなが思っている、という共同幻想そのものです。しかし、そもそも人類社会におけるお金というものが共同幻想の産物であるということは、ここで述べてきたとおりです。技術に対する信頼さえあれば、お金としての信用は成り立つ…。

仮想通貨が流出!?

相次いで起こった仮想通貨流出事件

21世紀の人類社会を変えると言われるブロックチェーンも、仮想通貨の基盤として使用するにはさまざまな難点があるのは事実です。

当然のことながら、これがインターネットとつながっていないとビットコインなどの仮想通貨の取引はできません。ブロックチェーン自体は安全だとしても、インターネット自体にセキュリティ(安全性)が完全ではないという問題があります。そこで、ハッカーによる攻撃を受けて、仮想通貨が流失してしまう事件が相次いで起こってきました。

2018年1月には、仮想通貨取引所を運営するコインチェック社が保持していた仮想通貨のうちNEM(ネム)建ての顧客資産が、取引所から外部に送金され、さらに別口座に移転されてほぼ100%流出してしまうという「コインチェック事件」が起こったことが大きな話題になりました。流失金額は580億円相当とも報道されていましたが、どうも、北朝鮮のハッカーによる仕業ではないかという噂もあります。

仮想通貨の今の問題点

インターネットと遮断した「コールドウォレット」に保存されていれば、こうした事態は防止できそうですが、この事件の場合、インターネットと接続された「ホットウォレット」と十分に区分した管理体制などが不備だったと指摘されていました。

こうしたセキュリティの問題以外にも、より本質的なブロックチェーン固有の問題点が指摘されています。この仕組みは、参加者がみんなで取引を確認し合うことで信頼性を担保する仕組みですから、巨大なデータのコピーをみんなで共有することになります。

そのため、極端に膨大なデータ容量が必要になり、参加者が増えていくと実用性が低下し、いずれ限界に直面することになるとも言われています。すでにビットコインでは、参加者が増えて取引量が膨大になることで、ブロックに入れられることを待機している取引が増え、取引が遅くなり、手数料も上がるといったことが起こっているようです。

これでは、仮想通貨のメリットそのものが小さくなってしまいます。そもそもビットコインが誕生した頃には、仮想通貨取引への参加者がせいぜい1,000人程度の規模が想定されていたものだったという指摘もあります。

また、新たなハッシュ値の計算はだんだん難しくなっていきますから、コンピュータ側の作業量も膨大化していき、電気代など新たなブロックをつくるマイニングのコストも上がっていくことになります。ところが、ビットコインなど仮想通貨の価格は投機的に乱高下しがちですので、常にマイニングコストを十分に上回る価格が保証されているものではありません。

コストより低い価格となれば、マイナーたちがマイニングから撤退し、ビットコインの新たな「マネーサプライ」も起こりにくくなることになります。一時、ビットコインの価格が低迷していた頃、もうビットコインは終わるなどと、一部でささやかれていました。

そのほか、取引の匿名性が高いためマネーロンダリング(テロや犯罪の資金の隠匿)に使われたりもするなど、色々な問題が言われていますが、大事なのは、指摘されている問題点の多くが、イノベーションによって克服されていく流れにあるということです。

仮想通貨はどんどん進化中!

イノベーションによって進化し続ける仮想通貨

先に、ビットコインは何の価値の裏付けもない空気のような存在だと述べましたが、実は、特定の価値や信用をバックにブロックチェーンを使って発行されるお金も誕生しようとしています。たとえば、中国が発行を計画しているデジタル人民元は法定通貨として国の信用がバックになりますし、いま話題のリブラも、ドルなどの法定通貨で運用する金融資産がバックになることが考えられています。

また、ブロックチェーン技術の使われ方も、現在のような分散型の仕組みではなく、デジタル人民元やリブラのような中央管理型の仕組みとして使われるケースも、これから出てくると思われます。

このように千変万化の可能性を秘めたブロックチェーンですが、これから考えるべき重要な論点としては、第一に、仮想通貨の基盤として使用するのに本当にふさわしい技術なのか、第二に、広く社会実装に使う上で社会を変革するだけの大きなメリットが見込まれるものの、ブロックチェーン技術自体が現段階では黎明期であり、現時点での実用性は明確に見えていない面が多い、といった課題があります。

実は、ブロックチェーンはまだ、これから発展していく技術なのです。お金の基盤としては、日本でも、現在のブロックチェーンを超える技術基盤が開発されてきています。また、社会実装のチャレンジは日本ではこれから始まるものです。

この点はさらに広がりのある議論になりますので、稿を改めてお伝えしてまいります。

そもそもお金って何なの?~電子マネーと仮想通貨と銀行預金の違い~

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