お金

資産運用の前に知っておきたい"お金の機能"と"新しいお金の形"

お金をとことん増やしたい人のための 「資産運用」超入門 泉 正人

資産運用の前に知っておきたい"お金の機能"と"新しいお金の形"

そろそろ資産運用を始めてみたいと思っているみなさん。ようこそ、泉先生の「資産運用 超入門」講座へ。

この講座は、「お金をとことん増やしたい!」と考えてはいるものの、「まだ何もはじめていない」、「何からはじめていいかわからない……」という人に、自分に合った資産運用法を見つけ、実際に行動に移せる力を身につけてもらう講座です。

資産運用の方法をマスターできれば、夢や目標をかなえたり、老後にゆとりを持って暮らしたりするための資産を自分でつくることができるように。さぁ、心もお金も豊かに、自分らしいライフスタイルを楽しめる人生をここから手に入れましょう!

お金の機能をフル活用しよう!

僕たちが毎日、当たり前のことのように使っている「お金」だけど、そもそもお金とは何なのか、お金にはどのような機能があるのか、Kくんはじっくり考えたことがあるかな?

お金の機能ですか。当たり前の存在すぎて、考えたことなかったです。

大半の人はそうかもしれないね。お金には、大きく分けて「①交換」「②尺度」「③貯蔵」の3つの機能があるんだ。

わかるような、わからないような。

1つずつ解説していこう。今後、資産運用でお金を増やしたいと思う人は、まずお金の役割を知っておくと、もっと上手な使い方ができるようになるよ。

お願いします。

まず機能①の「交換」。太古の時代、人間は魚と木の実を交換するといった物々交換で欲しいものを手に入れてきたことは知っているよね。でも、お互いに欲しいものが一致しない場合や価値が釣り合わない場合など、時代が進むにつれて、すベてを物々交換で解決するのは難しくなったんだ。そこで、「お金(貨幣)」が誕生した。今では、世界中のどこのお店でもお金を出せば、欲しいものを手に入れることができる。

なるほど、「交換」。わかります。

次に機能②の「尺度」。例えば100円で売られているものと、1万円で売られているものがあった場合、どちらの方が価値が高いか、すぐにわかるよね。このような尺度も貨幣の持つ機能。これにより、物の価値を「お金」という公平な基準で測ることができるようになったんだ。

ものさし的な役割ですね。

そして機能③の「貯蔵」。今すぐ使う必要がなければ、お金を貯めておくことができるのも貨幣の機能の1つなんだ。貯金しておいて必要なときに物やサービスと換えられることは、便利なだけでなく安心感をもたらしてくれる。逆に、お金をたくさん持っていれば不安感から解放されるともいえる。

確かに。こうして聞くと、そうだな、って思いますね。

でも通常、僕たちが生活のなかでお金を使うとき、多くの場合では、これらの機能のうち1つ、もしくは2つしか使っていないんだ。一方、資産運用でうまくいくには、お金の機能である3つすべてを使って行うことが大事なんだよ。

普段は機能を全て使えてない?どういうことですか?

たとえば、私たちが普段の生活のなかで買い物をするとき、こんな思考回路にならないかな?「○○を買いたい」と思ったとき、僕らは機能②の「尺度」を使い、「その○○が高いか?安いか?」「その○○が、その値段以上の価値があるか? ないか?」を判断する。そして「尺度」でメリットのほうが大きいと感じたとき、機能①「交換」で「支払い」を行い、お金とその○○を交換する。

あれ、機能2つを使って完結しちゃいましたね。

もしくは、今すぐ使わないお金があった場合に、定期預金をするとする。その場合には、「交換」や「尺度」はほぼ関係なく、使うのは、機能③の「貯蔵」だけ。

ほんとですね。では「資産運用で、3つの機能すべてを使う」とは、どういうことなんですか?

たとえばKくんに、△△という好きな会社があったとしよう。その会社は上場企業なので、株を買うことができる。そのときにまず行うのは、価値を測ること。「尺度」だよね。つまり、買い物と同じように、「その△△の株価が高いか? 安いか?」「その△△が、その株価以上の価値があるか? ないか?」を判断するんだ。そして、メリットのほうが大きいと感じたとき、買い物と同じように「交換」、つまり「支払い」を行い、お金とその△△の株を交換する。

買い物では通常、これで終わりだけれど、資産運用はここからが違う、ということですね?

そう。株を持つということは、それが消費されるわけではなく、会社が倒産しない限り、なくなることもない。つまりその株は、「貯蔵」という機能を使って貯められ、保管される。その結果、長期的に資産が増えていくんだよ。

おぉ、機能を3つ使いましたね。

でしょう? では資産運用で失敗した事例も一緒に考えてみようか。たとえば、××という好きな会社があったとする。その会社は上場企業なので、株を買うことができる。先ほどの事例と同様、まず行うのは、価値を測ること。「その××の株価が高いか? 安いか?」「その××が、その値段以上の価値があるか? ないか?」を判断する。そして、メリットのほうが大きいと感じたとき、買い物と同じように、「支払い」(交換)を行い、お金とその××の株を交換する。

ここまでは同じですね。

でもその××社の価値の見極め方がわからなかったり、その目利きが甘かったりした場合、「貯蔵」をしていたとしても、日に日に価値が減っていき…つまり株価が下落していき、資産が減っていく。この事例から、お金の3つの機能を使えば何でもよい、というわけではないことがわかるはずだよ。

なるほど! これって、買い物でも同じかもしれないですね。価値を見誤ってしまうと、無駄に高いお金を払って価値のないものを手にすることもあるし、身の丈以上の借金をして支払った場合にも、その負担が後々、大変なことになってくる場合もある…。

そうだね。お金の機能が3つあるという知識も必要だけれど、その3つの機能の正しい使い方まで知っておくことが大切だよね。資産運用の特徴である「時間が経つと資産が増える」ということは、「3つの機能すべてを正しく使っている」場合、つまりフル活用している場合に、その特徴を享受することができるということなんだ。

現金だけが、通貨ではない!?

物々交換の時代から進化して、紙幣や硬貨の形で「お金(現金)」が誕生したわけだけど、時代が進むにつれて、実体のない概念としての「お金」が利用されるようになってきたよね。

クレジットカードや電子マネー、スマホ型決済といったもののことですか?

そう。これらは、紙幣や硬貨のような実体はないけれど、「お金」と同じ機能を持っている。例えば「クレジットカード」。「クレジット」とは、「信用」という意味だね。クレジットカードは、クレジットカード会社が購入代金を立て替える後払い方式で、支払い能力が本当にあるかどうかなど、入会審査では一定の基準を満たす必要があるけれど、基準を満たし、得たカードを使うことで、手元に現金がなくても商品が購入可能になる。購入金額に応じてポイントが貯まることもあるよね。

もはや僕は、ポイント欲しさに現金よりクレジットカード派です。

そういう人も多いかもしれない。次に「電子マネー」は、お金をデータに換えることで、データ通信で決済を行うもの。クレジットカードと同じように、使った金額を後払いする「ポストペイ方式」と、現金を先にチャージしておき、使うたびに残額が減っていく「プリペイド方式」の2種類がある。

それぞれ、どんなものが該当しますか?

「QUICPay」や「iD」などがポストペイ方式。審査が必要だけれど、チャージが不要で高額商品の購入もできる。一方、Suicaや、WAON、nanaco、楽天Edyなどがプリペイド方式。こちらは審査は不要だけれど、残高が不足するたびにチャージが必要だね。

そして、スマホ型決済ですね。僕も数年前から利用する機会がすごく増えました。

うん。 LINE PayやPayPayなどの「スマホ型(モバイル)決済」は、スマートフォンに登録したアプリによる決済で、支払いの際に現金が不要、スマホ1つあれば完結するという手軽さで、利用者が急速に増えているよね。QRコードやバーコードを表示させたスマホを店側に読み取ってもらうか、店側のORコードやバーコードをスマホで読み取って決済するQRコード決済が一般的かな。

ここ数年で、本当に便利になりましたよね。

本当だね。これらが現金と大きく異なるのは、本来即時である支払いタイミングをずらせるということ。現金ならば購入する際に必要だけれど、クレジットカードやポストペイ方式の電子マネーなら支払いは約1か月後だし、プリペイド方式の電子マネーなら支払う前にチャージしておけばお金を持っている必要はないからね。

「手持ちがない!」と焦ることがなくなりました。その分、つい使いすぎてしまったりするんですけどね…。

新しいお金の形、知っていますか?

Kくんは、「仮想通貨」という言葉を耳にしたことはあるかな?

あります。でも正直、よくわからないです。

「仮想通貨(暗号資産)」とは、デジタルデータとして存在していて、紙幣や硬貨と言った実体を持たない「新しいお金」のこと。通常、日本なら「日本円」、アメリカなら「米ドル」などの通貨は国の中央銀行が発行し、価値を保証するものだけれど、仮想通貨は特定の国が発行していない点が大きな特徴なんだ。

実際に、どうやって成り立っているんですか?

国による保証がないかわりに、仕組みを支えているのが「ブロックチェーン」という技術。取引する当事者全員が取引履歴を含めた全データを管理して、取引の正当性を担保することで成り立っているんだ。ところで今、仮想通貨って世界にどれくらいあると思う?

いくつか聞いたことがあるから…10くらい?

その数なんと、2000種以上と言われているんだ。

そんなに!?

その中で最も有名なのが「ビットコイン」。ビットコインが誕生したときに、ブロックチェーンという技術も同時に誕生したんだ。国による保証がない、ネット上のデジタルデータと聞くと、データのコピーや改ざんなどが怖いと敬遠されがちだけれど、そのような悪用を防ぐ仕組みがブロックチェーンなんだよ。

う~ん、やっぱりまだ良くわからないけど…。あちこちで「仮想通貨」っていう言葉を聞くようになったことを考えると、かなり一般的になってきているんでしょうね。

これまでは買い物への利用というより、投資としての利用がメインとなっていたけれど、ほかのお金と同じように買い物をしたり、ドルや円との交換もできるし、将来的には日常的な決済での利用も多くなっていくんじゃないかな。それがビットコインなのか、ほかの仮想通貨なのかは現時点ではわからないけどね。とにかく、ブロックチェーンの仕組みが日常に直結する未来は、すぐそこまで来ていると思うよ。

お金って、着実に進化しているんですね…。

そうだね。仮想通貨だけでなく、「概念としてのお金」は日々進化している。近年では、ニュースや新聞などで「フィンテック(fintech)」という言葉を目にすることも多くなったよね?

知ってます。確か金融(finance)と技術(technology)を合わせた造語ですよね。

そう!「フィンテック(fintech)」とは、金融サービスと情報技術を結びつけた最先端のサービス全般を表すもの。仮想通貨はもちろんのこと、スマートフォンのアプリによるモバイル決済や、同じくアプリによる自動家計簿などもフィンテックの一種といえる。身近なところでは、「LINE Pay」による送金サービスや、「Wealth Navi」のようなロボットアドバイザーによる資産運用サービスなども挙げられるよ。

なんだかこれからも、革新的な金融サービスが次々と誕生しそうですね。

そうだね。フィンテックはきっと、僕たちの生活を劇的に便利にしてくれる。

思い起こしてみれば、「Suica」みたいな電子マネーも、登場した当時は使っている人、少なかったですよね。でもすぐに普及して、今では使っていない人の方が少ないくらい。

キャッシュレス決済などの、それまでの常識を覆すような新しい技術やサービスって、最初は難しく感じるもの。大事な資産に新しい技術を使うのを怖いと感じる人もいるよね。

そうですね。生活を便利にしてくれる技術であることはわかっていても、最初はやっぱり怖気付いちゃいます。

でも、「難しい」、「怖い」、と敬遠するのではなく、そのサービスの何が便利なのかを知り、その便利さを活用できるようになれたらとても良い。このことは、資産運用においても同様で、自分が知らないもの、よくわからないものをむやみに遠ざけるのではなく、よいチャンスと前向きに受け止め、理解することが大切なんだ。今後、自分の資産を現金だけでなく、別の金融資産でも所有していくことを考えると、仮想通貨やブロックチェーンの仕組み、新しい金融技術について知っておくことはとても重要なことなんだよ。

本当ですね。お金のこと、ますます知りたくなりました!

まとめ

お金には、「交換」「尺度」「貯蔵」の3つの機能があり、それら3つの機能すべてを正しく使えてはじめて、資産運用の「時間が経つと資産が増える」という特徴を享受することができます。また「お金」は日々進化しており、特に金融サービスと情報技術を結びつけた「フィンテック」と呼ばれるサービスの多くは、わたしたちの生活を劇的に便利にしてくれるもの。「よくわからない」と敬遠せず、前向きに受け止めながら、その便利さを活用する。そうした積極的な姿勢が資産運用にも生きてきます。

次回は、「最低限、知っておきたい経済のしくみ」についてお話ししていきます。お楽しみに!