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お金や時間の価値を劇的に変化させたシェアリングエコノミーの進化

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

お金や時間の価値を劇的に変化させたシェアリングエコノミーの進化

「所有」がステータスであったライフプラン1.0~2.0の時代

今までの時代、「モノを買って所有する」ことは当たり前のことでした。むしろ所有することがステータスであった時代がありました。

例えば「マイカーを買って、見せびらかす」という考え方がしばしば豊かさの代名詞のように使われました。男性向け雑誌には、ガールフレンドを作りたい男性はローンを組んで車を買ってデートに誘おう、という感じで「所有」を薦める記事が掲載されました。当時は多くの若者(今では50~70歳代の世代)がそれにならったものです。

豊かさを「所有」と結びつけるのがライフプラン1.0およびライフプラン2.0の世代の考え方です。「所有」するためにお金を稼ぐし、「所有」すればするほど豊かさを実感していた時代でした。

たぶん、今の20~30歳代の世代にとっては意味不明な考え方かもしれません。何百万円もする、高額の商品を借金で所有して、それを自慢げに披露するなんてバカらしいと思うのではないでしょうか。

「ライフプラン3.0の時代」で起きている大きな変化のひとつが、「所有」から「シェア」への変化です。

必要なときだけ利用する「シェア」の時代へ

ある調査によれば、マイカー所有者の多くは、「週末の数時間」だけ運転をして、平日はほとんど利用していないそうです。

もし、一週間(24時間×7日間)のうち4時間しか利用しないということは、98%の時間はただ車庫で眠っているものに、私たちは何百万円もかけていることになります。

また、維持費もかかります。駐車場代とガソリン代はもちろんですが、自動車保険、車検費用、自動車税、修理等のメンテナンス費用など多くの費用がかかっており、毎月の平均では3万円以上となることも珍しくありません。購入費用を分割して毎月の負担に織り込めば、費用はもっと高くなります。

しかし、「必要なときだけ利用して、その分のお金を払う」ことができれば、個人としてはムダな費用を抑えることができ、社会としては限られた資源を有効に活用することにもなります。

「シェア」は新しい時代に必要な発想法であり、個人にとっては家計を改善するチャンスでもあるわけです。

手軽にスタートできる自転車シェア、カーシェア

皆さんの家の近く、職場の近くで「カーシェア」と「バイク(自転車)シェア」のサービスを見かけたことはないでしょうか。ネットで調べてみると、実はレンタカーより手軽に利用できるサービスです。

ネット経由で会員登録をすませておくと、スマホアプリを使って利用申請ができ、使った時間の分だけ課金されます。月額基本利用料を設定している場合もありますが負担はわずかです。

大都市圏や観光地ではバイク(自転車)シェアも普及しています。これは、一回当たりあるいは一日あたりの費用を払って自転車をレンタルするもので、借りたスポットと異なるスポットで返却する「乗り捨て」もできます。

私もバイクシェアをよく利用しますが、運動不足の解消にちょっと役立ち、タクシー代はほぼゼロになります。カーシェアも、メンテナンスをお任せしつつ、いろんな車種に乗れるのが楽しみです。

カーシェア、バイクシェアに限らず、「シェアリングエコノミー」を意識した、いろんなビジネスが始まっています。

あなたがシェアの担い手になることもできる

あなたがもし、自分の「余っている何か」を提供できるなら、シェアをする側になることもできます。

民泊と呼ばれるサービス(Airbnbなど)は「部屋に誰もいない日」を誰かにシェアする仕組みですし、テイクアウトの配達サービス(UberEats)なども、「ちょっと空いている時間」をお店と個人宅との間の配送に提供している仕組みです。マイカーを空いている日に誰かに貸すシェアサービスなども始まっています。

スキルや時間があって、誰かにそれをシェアするサービスもあります。家事や介護・育児を短時間代行してあげたり、もっと専門的な知識を余裕時間で提供するマッチングサービスもあります。

例えば、外国語の知識と、地元の歴史の知識がある人が、本業とは別に「週末だけ外国人向け観光ガイドをする」というシェアをしていることがあります。(ただし、法規制や社内の兼業規定などに配慮する必要あり)

NPOやボランティア活動などもそうしたシェアのひとつといえるかもしれませんね。もし、あなたが「ちょっとだけ」自分のスキルや時間を提供してもいいとお考えなら、いくつかのサイトに登録してみるのもいいでしょう。

捨てるのは「もったいない」シェア

以前読んだコラムの話ですが、アメリカのニューヨークでは不要な家具などを玄関先に出しておくと、欲しい人がめいめいに持って帰っていくそうです。

あなたが所有していたモノを必要としなくなったとき、捨てるには「もったいない」モノを粗大ゴミに出すのではなく、誰かに「シェア」するサービスもあります(ジモティーなど)。

オークションサイトに性格は似ているものの「無料でもかまいません」「地元近隣の方に優先してお譲りします」など、自分の不要品を必要としている人にバトンタッチして長く使い続けてもらうことのほうに力点があるのが特徴です。

私の友人も「子どもが独り立ちしてベッドが不要になったが、誰かほしがる人はいないか」と募集してみたところ、その日のうちに子育て中の家族に引き取られていくことになりました。傷んでないので粗大ゴミにするには惜しいものを誰かが長く使ってもらえるならエコですし気持ちのいいことです。

「所有」のスタイルが変わりつつある

こうしたシェアが成立するのは、ITの進展も大きなところがあります。個人と個人をマッチングする「場」がスマホとインターネットにより創出されたからです。

そして、時代は「購入→所有→廃棄」という流れではなく「購入あるいは譲渡(シェア)→所有→返却もしくは譲渡」のような流れに移行しているのだと思います。

「限りある資源を大切に」とはよく標語で言われたことですが、私たちが様々な新しいサービスを活用することで、素晴らしい理念も実行することができる時代になっているわけです。

ところで、「所有」といえばもうひとつ大きな変化があります。音楽や映像配信などを所有せずに利用する流れ、つまりサブスクリプションサービスです。

実は2020年、もっとも視聴された音楽はCD発売されなかったことで話題となりました。「所有」の大きな変化とお金の流れについて、次回も考えてみたいと思います。