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転職か今の会社に留まるか、ライフプラン3.0時代のキャリア術

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

転職か今の会社に留まるか、ライフプラン3.0時代のキャリア術

同期入社が次々と辞めていき、転職してきた同い年と仲良くなる時代

ライフプラン1.0および2.0の時代は「終身雇用」を前提とした働き方が中心でした。最初に就職した会社と定年退職までつきあう働き方です。不意の倒産や家庭の事情などを除けば、人生で複数の会社に勤めることはあまりなかったのです。

これは、「最初の会社選び」が人生のほとんどを決めてしまうということでもあります。それだけに最初の就活が大事になりましたし、そこでうまくいかないと一生そのままということもありました。

ライフプラン2.0の終わりの頃、バブル景気の時期に入社した世代あたりから、転職は珍しいものではなくなってきました。それでも転職するヤツは変わり者という雰囲気があったり(あるいは前の会社でトラブルを起こしたので辞めたのだろうと偏見を持たれたり)、転職してきた人は部長以上にはなれないというような暗黙の差別ルールがあったりしました。

優秀な人はわざわざ転職はしない。あるいは役員になれるのは「外様」ではなく、新入社員からのたたき上げの社員に限る、という理屈です。

さすがに今ではそんな考え方はなくなってきました。転職してから役員になる人もいますし、転職してきたことで処遇が不利になることはありません。

令和の時代に入り、転職してきた人がひとりもいない会社はまずありません。同じ会社に同期入社した仲間の何人かは転職をしていきますし、同じ年度に社会人になった人たちが新しく転職して仲間になる、そんな時代になっています。

しかし、転職が当たり前の時代に、どういう働き方を考えていけばいいのでしょうか。ライフプラン3.0時代の転職について考えてみます。

”能力に見合う年収をあなたはもらえているか”分析することが大切

私たちは自分のビジネススキルを会社に提供し、その対価として給与や賞与、その他の待遇を得ています。最初のうちは能力も低く、責任も軽いことから年収も低くスタートしますが、いつまでもそのままではありません。

ビジネスの経験を蓄えたこと、会社の売上に貢献する仕事ができるようになること、責任を負う仕事がこなせること、そういった能力の高まりを反映する形で年収も少しずつ増えていきます。

会社の人事制度は、大きく3つのプロセスであなたを遇します。まずあなたの能力や業績を「評価」し、それに応じて役職等を見直す「処遇」を行います。そして処遇に応じて「報酬」を支払う仕組みを持っています。

あなたのビジネスキャリアを成長させていくに当たっては「能力は高まっているのに、年収は変わらない」という状態を看過しないことが大切です。

逆に言えば、能力向上をサポートしてくれ、実際に高まった能力や業績に応じた年収アップが実現するのであれば、転職を無理にしなくてもいい、ということです。

もちろん、お金以外の部分で転職を考えることもあります。職場の人間関係が良好ではなく、パワハラを受けていたり、ストレスを感じる状態が改善されないのなら、違う会社で働いてみる方法を考えてみても良いでしょう。

自分の能力と、会社からの自分の評価とのバランスを、客観的な目線で見極めてみることがライフプラン3.0の時代のキャリア術の基本ということになります。

転職があなたのキャリアを伸ばすか、横滑りになるか

若い世代ほど、転職に対するマイナスイメージは少ないと思います。しかし、転職を「仕事がイヤになったから選ぶもの」と考えて行うのはもったいないことです。

ライフプラン3.0の時代における転職は、しっかりとしたキャリアアップにつなげることを意識する必要があります。あなた自身のビジネススキルを伸ばしていく過程に、転職が結果としてあるわけで、自分自身を成長させるものかどうか、考えてみて欲しいと思うのです。

よくないのは、「スライド転職」です。これは私の造語ですが、開発の仕事を少しやって転職、入力事務の仕事をやってまた転職、営業の仕事につく……というように、転職前後の仕事に何の関連性もない転職を繰り返すことです。

これではあなたのビジネススキルが高まっていかないどころか、いつまでたっても「新人」という評価しか受けられないことになります。しかも年収もほとんど増えません。そうではなく、

能力アップ→評価アップ→処遇・報酬アップ

のような上昇サイクルを描ける転職を考えてみましょう。そして「能力アップ」を図る努力もあわせて考えていくことが大切です。能力はないのに、年収だけ上がる、というウマい話はなかなかないのです。

キャリアアップをするということは、年収においても上昇を勝ち取るチャレンジでもあるのです。

自分の誇れる「職種」が見つかればプロフェッショナルを目指してみてもいい

転職の問題を議論するとき、しばしば取り上げられるのは「ゼネラリスト」になるか「プロフェッショナル」になるのか、という問題があります。

会社に長くいると、人事異動を通じていろんな職種を体験することになります。「営業」「総務」「経理」「人事」「経営企画」のような感じです。いろんな部署を経験しながらビジネスマンとして成長するのだ、と会社は説明します。

ライフプラン1.0時代は特にこの「何でも屋さん」になることがよしとされてきました。広範囲の知識を持つ人、つまり「ゼネラリスト」を育てるのが会社の人材育成だというわけです。

今でもそうした人はたくさんいますが、必ずしも全員がゼネラリストになれるわけではありません。向き不向きもあり、まったく性に合わない職種で何年も過ごすこともあります。

「向いていない職種」を知るのもひとつの経験ですが、それなら「向いている職種」に集中してスキルを伸ばすというのもアリです。つまり「スペシャリスト」になるキャリア育成です。

実は、転職が上手くいっている人は「自分の強み」を上手に出しているスペシャリストであったりします。例えば人事部で人事評価制度改革を担当して、その経験を武器に違う会社でまた人事部の課長として腕を振るったりする転職をする人がいます。

先ほど述べた職種のうち、自分に向いているものがみつかったら、ぜひスペシャリストを目指してみてください。スペシャリストはその強みが分かりやすいので、採用する側も評価がしやすくなります。つまり転職に有利というわけです。

スペシャリストがキャリアを究めることができるのがライフプラン3.0の時代の特徴といえるでしょう。


次回は、ライフプラン3.0の時代の転職活動の作法について考えてみたいと思います。