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最低賃金1500円時代が到来!!果たしてコンビニバイトでも人生楽勝か??

経済とお金のはなし 竹中英生

最低賃金1500円時代が到来!!果たしてコンビニバイトでも人生楽勝か??

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「一生学生時代のままだったら良いのになあ」と考えたことはありませんか?よく居酒屋で集まるおじさん達が「学生の頃は良かったなぁ」と郷愁にふけったりするアレみたいなものです。

残念ながら、好きな時に好きなことをして、何となくアルバイトをするだけで暮らしていけたあの時代は、もう二度と戻って来ることはありません。

でも、もし何となくバイトをするだけで暮らしていくことが出来る時代がやって来るとしたらどうでしょうか?ひょっとしたら、もう一度過ぎ去った日々を取り戻すことが出来るかもしれません。

本日は、そんな夢のような(?)最低賃金を巡るお話しです。

最低時給が1500円になったら

お金が増える
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事業を行い、従業員を雇用する使用者は、正社員やパート・アルバイトなど、その雇用契約の形態に関わらず、最低賃金法によって定められた最低賃金以上の金額を支払わなければなりません。

最低賃金は都道府県ごとに時間給で定められており、東京都がもっとも高くて1013円、次いで神奈川県が1012円となっています。また、秋田県や鳥取県、沖縄県などが792円と最も低く、全国の最低賃金を加重平均すると、令和2年度現在で902円となっています。

全労連が最低時給1500円を公表

全国労働組合総連合(全労連)は令和3年5月31日、生活に必要な経費を調査し、それを賄えるだけの最低賃金の試算を公表しました。

水戸、長野、岡山、那覇の4市で暮らす一人暮らしの25歳の生活費を調査したところ、いずれも各種税金・社会保険料込みで月25万円前後が必要で、これを月平均の法定労働時間で割り、年次休暇分などを調整して月の労働時間を150時間に設定した結果、最低賃金は時給に換算すると1500円になることが分かりました。

もちろんこれは労働者側の一方的な都合であり、また、全労連の支持政党が旧社会党・共産党系であることから政治的影響力はそれほど望めないことを考慮に入れると、最低時給1500円がただちに実現するとはとても思えません。

しかし、もし実現したら夢のような話だと思いませんか?

これまでの最低賃金の推移

内閣官房全世代型社会保障検討室が令和2年6月に発表した資料によると、最低賃金の全国加重平均は、2002年に663円であったものが2019年には901円にまで増えています。

 
引用元 第8回全世代型社会保障検討会議 内閣官房全世代型社会保障検討室作成
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai8/siryou1.pdf

最低賃金の上昇に関しては正直言ってあまり実感がありませんが、少なくともこの17年間で35.8%も引き上げられており、デフレが続いた日本経済下では大健闘の数字だと言えなくもありません。

しかし、全労連が提示した1500円にはまだまだ遠く、道半ばという印象です。

もし最低時給が1500円になったらどうなる?

ではもし、日本で働くすべての人たちの最低賃金が1500円になったらどのようなことが起こるでしょうか?

女性の働き方が大きく変わる
doda女性の転職・求人情報Woman Career(ウーマン・キャリア)が2020年に行った日本全国で働く女性の平均年収ランキングの調査によると、女性の平均年収は348万円となっています。
(引用元doda 女性の平均年収ランキング最新版【2020】
 https://doda.jp/woman/guide/heikin/age/#page_index )

もし最低賃金が1500円になると、コンビニで1日8時間、週に5日、ひと月あたり20日間働いたとすると、月収が1500円×8時間×20日間=24万円となり、年収は288万円にまで伸びるため、現在の平均年収348万円との差は60万円にまで縮まります。

また、年収を103万円以下に抑えて配偶者の扶養家族の範囲内で働く場合であれば、ひと月あたり57時間、週あたり14時間程度の労働で良くなるわけですから、1日5時間で週3日程度働けば十分です。

あるいは、所得税や住民税の扶養からは外れても社会保険の扶養家族にはとどまりたい場合は年収を130万円以内に収めなければなりませんが、この場合でも1日6時間で週3日程度の労働時間で十分です。

このように、最低時給が1500円になれば、働きたい人はバイトでもそれなりの収入を得ることが出来るだけでなく、103万円や130万円以内に抑えたい人は今より少ない労働時間で済むようになります。

夫婦でコンビニバイトをするだけで現在の世帯収入平均を超える
厚生労働省が3年ごとに行っている国民生活基礎調査によると、2019年の最新のもので、世帯収入の平均は552.3万円となっていますが、この金額であれば上述のコンビニバイトを夫婦2人でするだけで年収288万円×2人=576万円となるため、現在の世帯収入平均以上の収入を得ることが出来るようになります。

これであれば、夫婦のどちらかが失業しても「とりあえずバイトでもしようかな」程度で済みますし、退職後もバイト先さえ見つけることが出来れば年金の心配をする必要もありません。

世界の最低賃金と比較してみよう

国旗
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次に、日本の最低賃金を諸外国と比べた上で、日本より賃金の高い国はどのように賃上げを行っていったのかを見てみましょう。

OECDに加盟している先進国の最低賃金をベースに物価調整を行い、米ドルで比較したデータOECD.STAT   https://stats.oecd.org/index.aspx?DataSetCode=RMW、最新の2018年版で比較してみると、日本は韓国の11位に次ぐ12位となっています。上位国は1位ルクセンブルク、2位オランダとなっていますが、GDPの規模が小さすぎるため、日本の参考になりそうなのは3位のオーストラリアでしょう。

オーストラリアの最低賃金

オーストラリアの最低賃金は、2020年6月の時点で24.36オーストラリアドル(1ドル84.5円換算で約2058円)で、パートタイムでも19.49オーストラリアドル(同レートで約1646円)と極めて高い水準を維持しています。もちろんその分物価も高く、ちょっとしたランチでも日本円で2000円を切ることはありません。

ちなみに、今から30年くらい前にオーストラリア旅行が日本人の新婚旅行先として流行ったことがありましたが、最近ではオーストラリアに行った人の話をあまり聞きません。理由は色々とあるでしょうが、30年前はお値打ちだったオーストラリア旅行も、今や日本人にとっては高嶺の花になってしまったことも少なからず影響している事は間違いないでしょう。

 
出典 世界経済のネタ帳 
https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=PCPIPCH&c1=AU&c2=JP&s=&e

上図をご覧ください。オーストラリア経済はこの30年間で平均2~3%前後の理想的なインフレ率を達成していますが、日本は1991年にバブル経済が崩壊してからはジリジリと物価が下がり続け、1997年に橋本内閣が消費税を増税してからは一気にデフレ経済に突入しています。

この間に両国の物価は逆転し、オーストラリア人は北海道へ冬にスキーを楽しみに訪れるようになり、日本人はより物価の安いベトナムやインドネシアへ旅行先を変えるようになりました。

オーストラリア経済の特徴

オーストラリア経済の特徴は、何と言っても天然資源が豊富な事です。石油、石炭、天然ガス、ウランをはじめさまざまな天然資源を採掘することが出来るだけでなく、四方を海に囲まれているため海洋資源も豊富です。

また、積極的な移民政策により人口が増えたために労働人口が増加し続けており、金融機関の規制緩和により積極的な融資も行われています。

さらに、天然資源の確保を目的とする中国からの投資を受け入れたことも、オーストラリアの経済成長の大きな要因のひとつとなっています。

日本の最低賃金を上げるためにはどうすれば良いか?

線を超えて伸びる光る矢印
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では、日本もオーストラリアに倣い、全労連の提案通り最低時給を今すぐ1500円に上げたらどうなるでしょうか?

間違いなく、企業は雇用を控えるようになるでしょう。コンビニは、現在実験的に行っている無人店舗の本格導入を検討するでしょうし、スーパーのレジ打ちもセルフレジやネットスーパーで代用するようになるでしょう。

また、外国人技能実習制度を悪用する企業は増え、形だけ自営業者として業務委託をする「グレーゾーン労働」なども横行するようになるでしょう。

最低賃金を引き上げたために余剰してしまった労働力は、国債を刷って公共投資で吸収するしかありませんが、公共投資を引き受ける側の企業が労働者にどうやって対価を支払うのかは企業次第ですから、その効果は不透明です。ひょっとしたら企業の内部留保だけが増えることになるかもしれません。

最低賃金の引き上げは日本経済の成長次第

日本経済はこれまで外需ではなく内需主導で拡大してきましたが、度重なる消費税増税で国内消費は冷え込み続け、国際競争力をなくした企業は従業員の賃金アップを控え、旧態依然の利権を守るための岩盤規制はベンチャー企業のイノベーションを阻害しています。

これでは、賃金が上がる余地があるとは到底思えません。政府が無理やり最低賃金を上げようとすれば、企業が国外へ逃げていくだけでしょう。結局のところ、最低賃金を引き上げるためには日本経済が成長するしかないのです。

まとめ

私たちの生活やライフスタイルを豊かにするためには、最低賃金の引上げは必要不可欠です。しかし、最低賃金を上げるためには、国内景気を回復させて需要拡大により人手不足を起こし、労働力不足の結果として自然に賃金が上がっていく以外に方法はありません。

日本の国力は衰退の一途を辿っていますが、今ならまだぎりぎり何とか間に合います。しかし、今のうちにあらゆる手段を講じておかなければ、最低賃金が1500円を迎える日は到底来ないでしょう。