通帳1冊1100円!日本の銀行は近い将来こうなる!!
監修・ライター
こんにちは、金融メディアライターのマドレーヌです。
みずほ銀行は8月21日、2021年1月18日から通帳の発行を有料化すると発表しました。新規発行だけでなく通帳繰越時も通帳発行手数料は1100円(税込)で、法人・個人ともに対象となるそうです(ただし70歳以上の場合は無料)。
このニュースは新聞やテレビなどの大手メディアなどで大々的に取り上げられ、多くの人たちの関心を集めました。通帳有料化の流れはおそらく他の銀行へも波及し、数年以内に銀行をはじめとする金融機関のすべては通帳有料化へ舵を切るだろうと言われています。
しかし本格的な変化はまだまだこれからで、異次元の金融緩和により収益が悪化した銀行は、迫りくる人口減少と高齢化の波を乗り切るため、そのあり方を変えようと模索しています。
そこで本日は、岐路に立たされている銀行が今後どのように変わり、そして私たちの生活とどのように関わっていくのかを予測してみたいと思います。
数年以内に起こる銀行の変化と流れ
ではまず、現在進行形で起きている銀行の変化と数年以内に起こると思われる流れについて押さえてみましょう。
冒頭でお話しした通帳有料化は、数年以内に日本中の金融機関に普及すると予測されています。そしてもうひとつ、たびたび話題に上がるのが、銀行口座の口座維持管理手数料です。
口座維持管理手数料とは
口座維持管理手数料とは、銀行口座を維持するために支払う手数料です。海外の多くの金融機関ではこのような手数料を徴収しており、月払いもしくは年払いにより徴収しています。
ただし、一定の条件(当月残高や当月の入金額など)を満たすとその月の口座維持管理手数料が無料になる銀行(シティバンクなど)もあります。
海外の金融機関に通帳はある?
海外の金融機関との比較ついでに、通帳についても比較してみましょう。日本以外に韓国の銀行などごく一部の銀行を除くと、世界中のほぼすべての銀行は通帳を発行していません。
半年に1回程度取引明細を郵送してくる(ただし有料)銀行はありますが、海外の銀行は基本的にすべてデジタル通帳です。
今起きている変化は国際水準に合わせているだけ
銀行の通帳有料化や口座維持管理手数料の流れはセンセーショナルに捉えられがちですが、実は世界的にみると当たり前のことで、珍しいことではありません。むしろ、本当の変化はこれからです。
銀行が将来的にどのように変わっていくのかをお伝えする前に、まず銀行が抱えている現状を整理してみましょう。
岐路に立たされている銀行の現状
「銀行の収益が上がらない」という話をよく聞きますが、いったいどうしてそうなってしまったのでしょうか?
金余り現象と異次元の金融緩和
日銀の発表によると、マネタリーベース(日銀が世の中に直接的に供給するお金)はこの5年間で3.58倍に増えていますが、マネーストック(金融機関から経済全体に供給されている通貨の総量)は1.17倍しか増えていません。
これは別に銀行が貸し渋りをしているわけではなく、そもそも民間に資金需要がないためです。企業はかつての金融危機時に懲りて、手元に資金を確保するようにしています。その反面、企業の設備投資がそれほど増えないため、借り入れの需要が少ないのです。
企業の内部留保といえば、かつては工場などの設備や機械などへ形を変えていましたが、現在の企業の内部留保は、現金がそのまま積み上がった状態で企業内に残っているのです。これでは資金需要が起こりえません。
また、日銀による異次元の金融緩和によって異様な低金利が続き、貸出金利も低金利となってしまうため銀行の収益が圧迫されてしまっているのです。
少子化による人口減少がさらに拍車をかける
これ以外にも、少子化による人口減少がさらに拍車をかけています。2010年に日本の人口は減り始め、この10年間でざっと200万人ほどの人口が減りました。これは佐賀県と宮崎県の人口の合計よりも多く、今から28年後の2048年には1億人を割るといわれています。
ピーク時と比べ日本の人口が2割近く減少するわけですから、国内のマーケットは縮小します。当然銀行もこの影響を受けます。
銀行というビジネスモデルが崩壊したわけではない
このように、さまざまな外的要因によって銀行の収益が圧迫されているのは事実ですが、銀行というビジネスモデルが崩壊したわけではありません。
銀行が提供していた従来型のサービスは国際基準に合わせる形で変化していきますが、今とは少し違う形で金融サービスを提供する機関として残り続けます。
フィンテックを活用した海外の銀行の取り組み
フィンテック(FinTech)とは「Finance(金融)」と「Technology(技術)」の2つが合わさってできた造語で、インターネットを使った新しい金融サービスの一種のことをいいます。
フィンテックは、実はすでに私たちの生活の中でも活用されており、例えばスマートフォンでの決済や電子マネー、仮想通貨などのように日々当たり前のように利用しているサービスなども、フィンテックによってできたものです。
日本の銀行に先んじて積極的にフィンテックを取り入れてきた海外の金融機関は、おもにデータ活用や顧客へのリーチ、そして融資の審査などでフィンテックを積極的に活用しています。
例えばJPモルガンは、かなり早い時点でAPIを活用した外部からのデータアクセスを開始しており、オンライン融資OnDeckとの提携によりスピード審査を実現しています。
またゴールドマンサックスは、AI活用による人員削減を行い、株式の現物取引トレーダーを600人から2人にまで減らしたほか、データ解析ソフトウェアKenshoの社内活用などを進めています。
近未来の銀行はおそらく4つのタイプに分かれていく
これまで述べてきたように、日本の銀行を取り巻く状況の変化と金融の技術革新の流れを考えたとき、おそらく近い将来銀行は以下の4つのタイプに分類されていくと思われます。
タイプ① モバイル型
スマートフォンなどのモバイル端末で日々の決済から資産形成、借り入れまでのすべてを完結することができ、実店舗は最小限しか持たない銀行。
タイプ② プライベートバンク型
富裕層向けに特化した資産運用を中心とした銀行で、現在証券会社などが行っているプライベートバンキングのサービスに特化したもの。
タイプ③ 投資銀行型
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーのように、法人に向けた専門的な金融サービスに特化したタイプの銀行で、クロスボーダー取引なども積極的に行うことのできる高い専門能力を兼ね備えたもの。
タイプ④ クラウド型
決算データや大量の取引データをもとに、リスク内容と提供できる信用を機械的に判断し、貸し出しを行う銀行。フィンテックの技術を積極的に活用し、AIによる判断で大量の仕事を瞬時にこなすことができます。
この4つの分類は、泉田良輔氏の著書『銀行はこれからどうなるのか』から引用したものです。この通り綺麗に4つに分かれるのかどうか確かではありませんが、生き残りをかけていくつかのタイプに分かれていくことは間違いないでしょう。
最後に
時代の変化や技術革新により多くの業種がその形態を変えたように、銀行も従来の形を変え、新しいタイプの銀行に生まれ変わることでしょう。
しかしこれは、銀行にとって間違いなくチャンスです。現在のように他行との差別化がつきにくい状況は一変し、各銀行がそれぞれの特色を出しやすくなる時代がやってきます。
各銀行が新しい金融技術を用い、これからどのようなサービスが展開されていくのかが、今から楽しみです。