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「投資信託」は、例えると、金融商品の「福袋」!?

お金をとことん増やしたい人のための「資産運用」超入門 泉 正人

「投資信託」は、例えると、金融商品の「福袋」!?

  そろそろ資産運用を始めてみたいと思っているみなさん。ようこそ、泉先生の「資産運用 超入門」講座へ。

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そもそも、「投資信託」とは?

先生、早速ですが、「投資信託」とはどういうものですか?

たくさんの投資家から集められたお金を一つにまとめて、専門家が運用し、その成果を分配金として投資家に還元する仕組みの金融商品のことだよ。商品の中には、株式、債券、不動産、商品などの金融商品がミックスで入っていて、いわゆる「福袋」みたいなものなんだ。

「福袋」!表現が面白いですね。

興味を持ちやすくなったかな? ちなみに「投資信託」のことは「投信」「ファンド」、運用の専門家のことは「ファンドマネージャー」、さらに上場している投資信託のことは「ETF」というので覚えておこう。さらにオフィスビルやマンションなどの不動産で構成され、そこからの賃料収入や売却益を投資家に分配する不動産投資信託は「REIT(リート)」。日本で上場している不動産投資信託は「J-REIT」というよ。

覚えておきます! では、「投資信託で運用する」とはどういうことですか?

投資家が、投資信託という「金融商品の福袋」を購入することで、その商品にはたくさんのお金が集められる。その中身である個別の金融商品の売買、つまり運用は、プロであるファンドマネージャーに任せてしまうので、投資家の視点で見ると、投資信託の購入後は基本的には何もしなくてよくて、運用自体はプロが行ってくれるということになるんだ。

えっ、おまかせできるんですか?それは楽だなぁ。

 

投資信託の中身の金融商品の価値が上がれば、その投資信託は値上がりし、下がれば値下がりする。利益が出れば、分配金を受け取ることもできるよ。なお2021年現在、国内で販売されている投資信託の数は、約6000種類もあるんだ。

6000種類も!? どんなバリエーションがあるんですか?

国内株式のみで運用している商品もあれば、外国株式のみで運用している商品もある。国内株式の自動車関連の株式のみ、原油などの商品先物のみ、株式と債券のミックス商品、不動産も加えたミックス商品、アジア地域の株式のみなど多種多様だよ。

そんなたくさんの中からセレクトするの、ちょっと大変ですね。どう判断すれば良いんだろう…。

それぞれの投資信託には「目論見書(もくろみしょ)」という商品説明書がついているんだ。この目論見書を確認すると、その投資信託がどういう金融商品で構成されていて、ファンドマネージャーがどのような目的で運用していくかという運用方針などがわかるよ。

それはありがたい。安心感がありますね!

運用にかかる手数料やこれまでの運用実績など、投資判断に必要な重要事項も説明してあるので、それらを確認すれば、どの投資信託を購入するべきか判断できるようになると思うよ。

投資信託のコストは?

「福袋」と聞いてちょっとワクワクしていますが、金融商品なので気になるのはコストです。どうなっているんですか?

投資信託で資産運用する際の主なコストは4つ。プロに運用を任せるので、株式や債券などの個別の金融商品を運用することに比べると、運用コストがちょっと高くなる傾向にあるかな。これも、購入前によく確認しておこう。

目論見書、読み込みます!

うん、ぜひそうしてみよう。さて、最初のコストは購入時にかかる販売手数料。銀行や証券会社など、投資信託を販売している会社に支払う手数料だよ。購入額に対して0.5~3%が一般的だけど、「ノーロード」といって、まったくかからないものもあるんだ。

販売手数料がゼロ?どうしてですか?

店舗を持たない証券会社の普及がその大きな理由だよ。ネット証券に限って言えば、実はもう「ノーロード」が基本になっているんだ。

へぇぇ! なかなか良心的ですね。

そして保有時にかかるのが信託報酬。運用管理費用ともいうよ。これは、投資信託を保有している期間、毎日一定割合で運用に対してかかるもの。「運用をプロにお願いするための費用」ととらえておこう。額は投資信託の種類によって異なるけれど、年間0.5~3%程度が一般的。新興国の株式など個人投資家が扱いづらい商品で構成されている投資信託や、「アクティブファンド」と呼ばれるファンドマネージャーが詳細に分析して投資を行うタイプの投資信託は、信託報酬が高めに設定されることが多いかな。

それは仕方ない。プロに頼る部分が多いんですもんね。

そうだね。そして投資信託によっては、信託財産留保額といって、解約時に手数料がかかるものもあるので覚えておこう。ちなみに、以上3つの手数料のなかで特に気をつけたいのは信託報酬かな。販売手数料や信託財産留保額は、購入時と解約時にそれぞれ1回だけ支払えばよい手数料だけれど、信託報酬は保有している間、ずっと支払わなければならないもの。仮に購入した投資信託自体が4%の利回りだったとしても、信託報酬で3%を支払ったら、1%の利回りの投資信託と同じになるということだよ。プロにお願いすれば必ず大きな利益を出してくれるというわけではないので、その点はぜひ踏まえておこう。

数パーセントの手数料くらい…なんて思っていたら、とんでもないことになりそうですね。心得ます!

それから税金についても話しておくね。投資信託にかかる税金には、大きく分けて「キャピタルゲイン課税」と「分配金課税」の2種類がある。「キャピタルゲイン課税」は、投資信託を売買して売却益を得たときにかかる税金のこと。その年の1月1日から12月31日までに発生した売却益から、手数料などを差し引いた金額に対して約20%かかってくるよ。そして「分配金課税」は、分配金を受け取ったときにかかる税金のこと。こちらも、約20%の税金が天引きされる。

税金20%って、なかなかですね。利益を出すことはできるんでしょうか?

税金に関しては以前、「株式投資」の講座の時に話したことがあるけれど、毎年120万円分の取引を上限とした「少額投資非課税制度」(NISA)があるので、有効活用することをおすすめするよ。

投資信託のメリット・デメリットは?

では、メリット・デメリットについても教えてください。

うん。まずメリットをわかりやすくまとめるとこんな感じかな。

えっ!投資信託って、100円からスタートできるんですか !?

そうなんだよ。投資信託の最大の魅力は、少ない資金で幅広い取引ができ、かつ、運用はプロに任せておくことができるということ。投資信託を利用せずに、A社とB社の株式、C社の債券、不動産、小麦の商品先物を購入しようとすれば、それは数百万円~数千万円という資金がなければできないよね。それに、値上がり益を踏まえた売買タイミングの見極めなどもすべて自分で行わなければならない。投資信託にはそれがないんだ。もちろん、資産運用である以上、運用している金融商品の特性を理解しておくことは大切だけど、限られた資金を有効活用しながら分散投資を行うには最適な資産運用法といえるよ。

デメリットにはどんなものがあるんですか?

投資信託の中身は、今まで個別に学んできたような金融商品だと話したよね。なので、それらと同じようなリスクを有していると理解すればいいよ。

なるほど。投資信託の中身が債券だけだったら、債券投資のデメリットと同じということですね。

そうだね。代表的なものを挙げるとすると価格変動リスク。投資信託が組み入れている株式や債券の価格が変動する可能性のことで、最終的には、市場における需給によって決まるけれど、一般的には国内や海外の政治・経済情勢、企業の業績などの影響を受ける。そして為替変動リスク。外国通貨建ての資産に投資する投資信託の場合、一般的には円高になれば基準価格にマイナス、円安ならプラスの影響がある。外国の株式や債券で運用する投資信託には、基本的に為替変動リスクがあると考えておこう。

基本的な資産運用法と目指せる成果は?

これまでの金融商品より、ずいぶんチャレンジしやすそうに感じましたが、投資信託で着実に成果を出していくコツなどがあれば教えてください!

まずは、「目論見書」の内容をしっかり理解し、自分の資産運用方針に近い金融商品・運用方針のものを選べるようになること。それが選択できたら次は、時間を分散しながら積立購入していくことをおすすめするよ。

時間を分散する。のんびりやるのがいいということですか?

投資信託は性質上、株式や商品取引と異なって、日々の商品価格推移をチェックしなければならないものではないんだ。数か月おきに資産の推移を確認しながら、その商品を保有しつづけるか、別の商品に切り替えるか考えて、保有割合を変えていくのがいいと思うよ。もともと分散性が高い商品なので、市場全体に大きな変動がない限り、大きな値上がりは見込めないけれど、まずは続けること。そのうえで、コストを差し引いて、5%以上の年間利回りを継続できれば十分な成果といえるんじゃないかな。

しっかり、腰を据えてやってみようという気になりました。今回もありがとうございました!

まとめ

たくさんの投資家から集められたお金を一つにまとめ、専門家が運用し、その成果を分配金として投資家に還元する仕組みを持つ「投資信託」は、株式、債券、不動産、商品などの金融商品がミックスされている「福袋」のような金融商品。

購入後はプロが運用をしてくれるので、投資家は基本的に何もしなくても良いのですが、購入前にはしっかりと「目論見書」に目を通し、運用方針やコストについて知っておくことが大切です。

分散性が高い商品なので、大きな値上がりは見込めませんが、続けることがポイント。5%以上の年間利回りの継続を目指して挑戦してみましょう。

次回は、「現預金(為替)」について学んでいきます。お楽しみに!