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共稼ぎ、共家事、共育児の時代 お金はどうやって稼ぐのが正解?

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

共稼ぎ、共家事、共育児の時代 お金はどうやって稼ぐのが正解?

ライフプラン3.0の時代は「共家事・共育児」の時代でもある

ライフプラン3.0の時代は、働き方が変化してくる時代です。50年働く時代に複数の働き方と向き合う必要も出てくる、という話は前回にしたところです。

結婚をする場合、共働きを前提としていくというのも大きな変化のひとつです。大正期から昭和にかけては「専業主婦」と「会社員の夫」という分業モデルが普及しました。

今までは会社員という働き方がまだ確立されておらず、特に農家では男女ともに働くのが一般的でした。近代化が進む中で、職住が分離し「家で家事・育児を担当する女性」と「出勤して会社で働く男性」という分業が行われるようになったわけです。

分業には合理性があるようで、差別も内包していました。男性が家事を担当することは奇異の目でみられましたし、女性が家庭に入らず働き続けることも社会が想定していませんでした。かつては「女性だけの定年年齢」があったこともあり、これを撤廃することがひとつの社会運動となっていた時期もあるのです。

今はもちろん、男性と女性が雇用で差別されることはありません。女性だけが不当に解雇されることもなくなりました。

これは「男女ともに働く時代」の到来ですが、考えてみれば「男女ともに家事をする時代」「男女ともに育児をする時代」でなくてはおかしい、ともいえます。

女性はがんばった20年、男性の意識は変われどがんばりは不足

さて、この20年を振り返ってみたとき、子育てと仕事の両立に向けたいろんな政策が実現したとともに、女性自身のがんばりがみられたといえます。

特に女性の年代別就業率の低下が結婚・子育て世代において著しいものではなくなりました。これは「M字カーブ」という社会問題でしたが、女性の多くが離職をしなくなったことで解消されています。「結婚や子育てをしながらも働き続ける」という価値観が普及したことを裏付けています。

一方で、女性が仕事も子育ても家事も同時に抱え込んでしまっている例もしばしば見受けられます。「ワンオペ家事(育児)」という言葉が一時期流行語となりましたが、すべてを女性が担当していることで過剰な負担が女性の肩にのしかかっているわけです。

かつての専業主婦であれば、家事育児に専念すればよかったところ、今の働く女性は仕事も家事も育児も考えなければいけないわけです。

一方、男性はどうか、というと、男性の家事育児を担当する意識と、実際の担当割合は確かに前進を見せています。アデコの「子育て世代男性会社員の家事・育児分担に関する意識調査」によると、子育て世代の30代男性会社員は、「子どもの出生後に家事分担量を増やすなど、7割が協力的」であったそうです。

他の統計を拾ってみても、男性の意識変化は、家事育児を男性が担当することについて肯定的です。特に若い世代ほどその傾向が顕著にみられます。

しかしながら、同調査では、「平日の家事分担は、自分3割:妻7割が最多。6割以上が妻の負担の方が大きいと回答。」とのことで、気持ちとうらはらに、実際の担当割合はあまり高くなっていないことが分かります。

これでも、30年前、40年前よりは圧倒的に男性は家事育児をしているといえるのですが、この数十年の女性のがんばり(特に仕事)と比べて、男性のがんばり(家事育児シェア)は高まりが遅くなっているようです。

ライフプラン3.0の時代、テレワークは家事育児を男性が担う絶好のチャンスかも

男性が家事育児を担当できない「言い訳」があるとすれば「職場が自宅と離れていること」「会社の拘束時間が長いこと」が代表でしょう。

自宅と職場との距離が遠いと、通勤時間がかかります。往復2時間以上ともなれば、平日の家事育児についてどちらかが主担当とならざるを得ません。そして多くが女性に課せられます(その分、女性は時短勤務などをして対応する)。

会社が過剰な残業を求めたり、「つきあい」で長い拘束時間を求めることもありました。夜の10時まで会社にいたり、上司とお酒を飲んでいれば、子どもの寝付かせをすることもままなりません。

こうした悪しき慣習については、ライフプラン3.0の時代に変化が見られ始めました。まず、残業代について制限しコントロールする兆しがみられます。会社もダラダラ残業はやめることがトレンドとなっています。

また、コロナ禍の思わぬ副産物として「つきあい」での飲食が激減しました。本音でイヤなら、さっと帰宅することができるようになったわけです。

テレワークもチャンスです。そもそもの通勤時間がなくなれば、その分の時間を家事や育児に振り向けることができます。緊急事態宣言下で男性の家事育児シェアに変化があったとする家庭では、特に男性の分担割合が増えているという調査があります(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「緊急事態宣言下における夫婦の家事・育児分担」)。

これをみると、感染拡大前、男性の家事シェアは「0~2割」が69.5%もの多数であったところ、分担が増えたという家庭では43.2%まで低下、「3~4割分担」「5~6割分担」の合計が54.1%と半数を超えています。拡大前は合計で29.1%ですから大きな変化です。

通勤時間がない分、「皿洗いはやっておこう」とか「買い物は担当しよう」「子どもの宿題をみてあげよう」というように具体的な行動に移していると考えられます。

テレワークができる働き方であればぜひ、このチャンスを家事育児の分担割合向上に役立ててみてください。

男性の家事シェアは、女性の年収アップに通じる

マネープランの観点からもう一度、「男性の家事育児シェア向上」を考えてみると、これは世帯年収の向上につながる可能性も秘めています。

共働き正社員夫婦の年収比は「夫6割:妻4割」が多いそうです。仮に夫が年収500万円とすれば妻は年収333万円という違いです。

この違いが生じる理由を見極めてみると、「能力の違い」ではなく「労働時間の長短」に大きく影響していることがあります。つまり、妻が時短勤務をして家事育児を多く担当していることが、月収の差やボーナスの計算基礎にも跳ね返っていることで年収が下がっている場合です。時短勤務をしながら昇格昇給のチャンスをねらうことは難しいので、キャリアアップが遅れることもまた、年収の違いとなってあらわれることがあります。

だとすると、男性がしっかり家事や育児の分担をすることは、女性の年収アップのチャンスを広げることにつながります。仮に年収比が「6:4」なら、家事の分担は「4:6」くらいは負担するべきですが、前述の調査では3割負担にとどまります。あるいは「5:5」の負担が実現できれば、女性の年収が男性と同等になるかもしれません。

今の時代は、男性がひとりで二人分の収入を得ることは難しくなっています。家事や育児を働く女性に背負わせて、自分の年収を100万円アップさせることは難しいはずです。

だとすれば、家族が一体となって「世帯年収を増やす方法」を模索する時代だと考えるべきでしょう。男性が家事育児をもっと担当することは、家族全体で考えれば年収を100万円増やすことにつながるかもしれません。

実は年収で夫婦がほぼ対等であったり、妻のほうが高い家族も増えてきています。ライフプラン3.0の時代は、男性が家事育児とどう向き合うかを真剣に考える時代なのです。