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おひとりさまという「人生の選択」は◯歳までに決めるが正解!?

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

おひとりさまという「人生の選択」は◯歳までに決めるが正解!?

4人に1人はおひとりさまの時代が到来

ライフプラン3.0の時代のライフスタイルとして避けて通れないテーマのひとつが「おひとりさま」問題です。

独身というライフスタイルは今や珍しいものではありません。大学の同級生が20歳代の後半と30歳代を経て多くは結婚するものの、4~5人に1人は独身のままアラフォーと呼ばれる年代を迎えます。

婚姻率は年齢に応じて上昇しますが、アラフォー世代に入ったところでひと段落して大幅な上昇をみせなくなります。50歳時点での未婚者の多くはそのまま一生を独身で過ごすことになります。

50歳時点の未婚率を生涯未婚率といいます(正確には40歳代後半と50歳代前半の数値の平均)。2015年の国勢調査では男性23.4%、女性14.1%となっています。将来はさらに伸びると予測されており、2040年頃には男性29.5%、女性18.7%まで生涯未婚率の上昇があると予想されています。(本コラム掲載直前に飛び込んできた2020年調査結果では男性25.7%、女性16.4%に上昇したとのことです)

1990年頃までは生涯未婚率は5%程度でしたから、おひとりさまは少数派でした。しかし、今はおひとりさまは決して少数派ではありません。

しかし、「一生おひとりさまで生きていく準備」をしっかりできている独身者は明らかに少数派でしょう。

実は、50歳ではなく、もっと早いうちから「自分の人生とおひとりさま」について考え、資産形成も考えていく必要があります。これはライフプラン3.0時代の難しさのひとつです。

今回はおひとりさまという人生の準備について考えてみます。

おひとりさまを許さなかったライフプラン1.0社会からの解放

おひとりさまというライフスタイルを、社会そのものが許容していなかったのがライフプラン1.0の時代でした。

男性は就職して社会人になってもまだ半人前で「結婚してようやく一人前」といわれていました。遅くとも30歳になるころまでには結婚することを周囲が求め、独身者には見合いをセッティングしたりして結婚するよう強制的なサポート体制すらありました。

これはこれで結婚するチャンスがなかなかみつからない人にとってはありがたい仕組みでしたが、しばしば「家のために結婚する」「長男だから結婚する」のような強制的因習とも結びついていました。

女性は「結婚するまでは」という考え方で人生の区切りを設定されていました。「結婚するまで一時的に働く」とか「結婚するまで家事手伝い(無職の独身女性の呼び名)」という位置づけです。

「結婚したら夫の『家に入る』」という意味合いが設定されていました。一度、結婚して嫁入りしたら基本的にはもう戻ってこないという社会モデルです。

社会制度も夫婦を前提として構築されていたので、離婚をしたり死別をした場合は、周囲が同様の境遇にある相手を探して再婚のセッティングさえしていたものです。

今の若い世代からすれば、違和感の多い考え方のオンパレードでしょう。独身であること、離婚も人生の選択としてありうることが社会的に徐々に認知され始めたのがライフプラン2.0の時代でした。

ライフプラン2.0世代は、「おひとりさまでもいい」ということを親や親戚、職場の上司の偏見とぶつかりながら認めさせてきた世代でもあるのです。

今ではおひとりさまは個人の生き方のひとつであると考えられるようになりました。独身の人生を前向きに捉えられるようになったのがライフプラン3.0時代といえるでしょう。

おひとりさまは老後の収入が不足することに注意が必要

これからの時代、おひとりさまの人生を恥じる必要はまったくありません。しかし、自分で選んだ人生を悔いなく生きていくための備えは自分でする覚悟が必要です。日常生活からお金の契約まで、問題のすべてをひとりで解決していくことになるからです。

何より重要なのは経済的な備えでしょう。老後に病気になったり介助が必要になったとき、役立つものはお金です。誰かに代わってもらって洗濯や買い物といった家事をしてもらえばお金がかかりますし、通院にタクシーを使えば交通費もかかります。

しかし、おひとりさまの公的年金はおひとりさまの生活スタイルに見合う水準ではありません。仮に国民年金のみに加入していたとすれば満額でも月6.8万円です。厚生年金が一般的な会社員の水準で支給されたとしても、月15.5万円くらいですから、余裕のある水準とはいえません。

もし共働き正社員夫婦であった場合、月25~30万円くらいの支給になると見込まれるため(女性の働き方による)、単純な「老後の定期収入」においては2倍の差が生じることもあります。

これでも、「老後は子どもに仕送りしてもらえ」というライフプラン1.0以前に比べれば、おひとりさまの老後の安定さは増したわけですが、十分とはいえないことを心がけておく必要があります。

おひとりさまの準備はおひとりさまが確定してからでは遅い

多くの場合、50歳ないし55歳位で「自分は一生おひとりさまで生きていこう」と決心することになるでしょう。20歳代あるいは30歳代では強く覚悟を決めることが難しいものです。

ところが、「自分は一生おひとりさまで暮らしていくことになりそうだ」と覚悟を決めてからおひとりさまの老後の準備をスタートすると、時間が足りないという問題があります。

例えば、ひとり分の家を買おうと思っても50歳代以降の購入では住宅ローンの返済期間を長くとれません。15年程度で一気に返済できる計画が必要になり、返済額が高くなってしまいます(それでも、マイホームの確保は重要です)。

また、iDeCoやつみたてNISAを活用して老後の備えを手厚くしようと思っても、期間が短い分、積み上がる金額も少なくなってしまいます。

例えば企業年金のない会社員は月2.3万円のiDeCoの積み立てができますが、50歳で気がついて65歳まで満額を貯めたとします(現在は60歳まで。65歳まで加入できる法律改正が2022年に行われる)。iDeCoが15年分の元本414万円、仮に年3.5%の運用収益込みなら543万円です。

これでは老後の余裕は限られるため、年40万円のつみたてNISAを15年やってみると元本600万円、年3.5%の運用収益をのせて788万円です。退職金を加えても「老後に2000万円(生活費ではなく老後の趣味やゆとりの予算)」を確保するのが精一杯です。

ところが、35歳くらいでおひとりさまの覚悟を決め、iDeCo月2.3万円(年27.6万円)、つみたてNISA年40万円を積み立てていけば、2028万円の元本、年3.5%の収益も加味すると3579万円の資産となり、あなたの老後の安心を提供する力となってきます。

つまり「おひとりさまの老後の準備は、おひとりさまの覚悟を決める前からスタート」ということが重要なのです。

(ところで、おひとりさまを覚悟して貯めたお金は、縁があって結婚することになっても使い道はたくさんあり、お金を貯めておいて困ることはありません。人生がどっちに転んだとしても、計画的にお金を貯めておいたことは、プラスになるはずです)

一生の友人とルームシェアして支えあえるならそれもあり?

おひとりさまの悩みは健康管理や家事負担の重さにもあります。一人暮らしゆえに部屋が汚部屋になり、また食生活が偏ってしまったりすることはよく指摘されています。

ある分析では「独身男性は既婚男性より10年以上短命である」という結果が出たそうです。カゼをこじらせての肺炎、高血圧や糖尿病などの死因が高くなっているそうで、日常生活の不摂生が少なからず影響を与えていることがうかがえます。

実は人気ドラマにあったように、健康や生活に意識高くおひとりさまをエンジョイしている人はあまり多くないわけです。誰かと結婚して共同生活をすることは、部屋をきれいに維持したり、 決まった時間に寝起きするなどの生活習慣をきちんとしたり、食事をちゃんととるような効果もあるのかもしれません。

おひとりさまがきちんと生活をするために何かヒントがあるとしたら、ひとつの可能性は「ルームシェア」です。これは生活コストを効率的にすることにもつながりますし、家事の分担などを行いつつきちんとした生活をすることにもつながります。

とはいえ、「誰とルームシェアするか」という問題もあります。友情関係だけで維持するシェア生活は解消されることもあるでしょう。ケンカをして解消したり、どちらかの依存関係が解消を迫ることもあります。病気やケガがシェア生活解消の理由になった場合、残されたほうは生活に苦労することもあります。

それでも「一生の友人」とお互いに認められる友達があってどちらも独身でいるなら、40歳代を過ぎたあたりで一度話をしてみるのもいいかもしれません。

また、若い世代のルームシェアのように、友人でなくても生活を協同する発想は、もしかすると50歳代以降あるいは年金生活者のルームシェアにも使われていく可能性があります。

こう考えてみると、おひとりさまにとって重要なのはまず「お金の問題」であり、次が「生活のメリハリ」だといえます。おひとりさまといってもすべての時間をひとりで過ごすわけではなく、友人関係や趣味によるネットワーク構築が必要になってきます。

せっかくなので、次回は「趣味や生きがい」についてライフプラン3.0視点で考えてみたいと思います。