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趣味のつながりが幸せを産む?今ドキの生きがいの見つけ方とは?

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

趣味のつながりが幸せを産む?今ドキの生きがいの見つけ方とは?

無趣味な若者が増えている?インターネットをするのが唯一の楽しみ?

ライフプラン3.0世代は、上の世代の失敗や課題、社会変革をしっかり捉え、生き生きと暮らすことができる、そんなポジティブなイメージがあります。

ところが、アンケートによってはこれに反した数字が現れることがあります。「趣味」や「生きがい」「自由時間の使い方」といった問題です。

年金シニアプラン総合研究機構が実施する「サラリーマンの生活と生きがいに関する調査」というデータがあります。20年以上にわたって、同種類の調査を継続しているので、時代変化に伴う回答の違いを読み取ることができるユニークな調査です。

この調査によれば、会社員が「生きがいがある」と回答する人の割合は一貫して下がり続けています。かつて78%にもなった(1996年の第2回調査)数字が、最新調査では43.6%まで低下しています(2016年の第6回調査)。しかも、心の安らぎが得られる場が減少し、「どこにもない」とする人が増えているといいます。

生きがい減少の要因のひとつは「仕事が生きがい」という割合が下がっていることです。これは会社に支配され働くことだけを人生の意味とするようなライフプラン1.0的価値観であり、低下することは結構です。しかし、その分ほかの生きがいが上昇しているわけではありません。

自由時間の過ごし方を聞くと「SNSやインターネットをして過ごす」というような回答がもっとも高い数字(44.3%)に来ていたりして、はっきりとした趣味を持つ人があまり増加していない傾向が読み取れます。

インターネットをスマホやタブレットで眺めているだけが自由時間の過ごし方と考えるのはちょっともったいない話です。

ライフプラン3.0らしい、趣味や生きがいのあり方とはどういうものでしょうか。

ライフプラン1.0世代は定年になって初めて趣味を探す

ライフプラン1.0の世代は、現役世代中に趣味をあまり意識せず、仕事一筋の世代でした。娯楽として酒を飲んだりゴルフに出かけるものの、それはむしろ仕事の延長線で、同僚との懇親や取引先の接待を含むものでした。カラオケも「仕事の飲み会で歌うとき、取引先の○○さんにウケるかどうか」というような選曲理由で新曲を覚えていたのです。

あるいは、「住んでいる地域」のコミュニティのようなつながりに依存していました。町内会で旅行に出かけるのが年に一度の楽しみ、のような感じです。また、「引退してから趣味のことは考えよう」という発想が支配的でした。

これに対して、ライフプラン2.0世代は自分なりの趣味を楽しむようになった世代です。テレビゲーム、個室のカラオケが普及した最初の世代ですし、コンサートやライブイベントが増加し、またスポーツイベントも増えました。ディズニーランドなどのアミューズメント施設、スーパー銭湯(温泉)などの娯楽施設も充実した時代です。

それでもまだ「会社の同僚」「大学のときの同級生」といったつながりが支配的で、関係が硬直的であったことは否めません。

ライフプラン3.0の感覚であれば、「好きなモノを軸につながる」ことがカギとなります。そこでは、性別、年齢、職業、どこに住んでいるかも関係がありません。

そしてもちろん、現役世代のうちから趣味を持ち長く楽しむことが新しい時代の趣味や生きがいのあり方です。

ライフプラン3.0時代の趣味は「会社外」で作る

ちょっと私自身の話をしてみたいと思います。実は私はオタクFPという通り名があるほど趣味人として知られているからです。


私はまちあるきの趣味があります。人気テレビ番組「ブラタモリ」のような地理と歴史を楽しむフィールドワークが大好きです。

東京スリバチ学会というまちあるきサークルの会員でもあり、東京都内で消滅間近な建築様式「看板建築」のコレクター(スマホで撮影)でもあります。

こうした趣味は、10年前は「あやしい集団が町を歩いている」と言われたものです。しかし今は「ブラタモリのようなことをやっています」と言えば、ああなるほどと言ってもらえるようになりました。

そこではいろんな人がまちあるきに参加しています。「実は地理と歴史が好きだったが話し相手が今までひとりもいなかった専業主婦」の女性もいれば、「70歳の年金生活者」もいます。男女問わず会社員の世代もたくさん参加しています。

「有名IT企業のエンジニア」と「大学教授(社会学)」がそれぞれのプロフィールには触れずに仲良く歩いて趣味の話題で盛り上がっています。それどころか、仕事のことなんかまったく聞かない友人関係も多々あります。趣味が一致しているなら年齢も職業も関係ないからです。

年季の入った公団住宅を眺め、かつての川筋の存在を示す橋跡に盛り上がり、レアなマンホールについて教えを請いながら楽しく歩きます。

私のSNSでつながっている人たちの半分が「仕事つながり(ファイナンシャルプランナーとして)」ですが、残り半分は「趣味つながり(まちあるき好き)」の人たちです。

皆さんのSNSでも同僚の日常の投稿より、友人の投稿のほうが面白いと思いますが、そういう「趣味のつながり」をたくさん見つけられると、それが生きがいになり、知的好奇心を充足することになっていきます。

生きがいにお金を使うことはムダとは言わない

ところで、ファイナンシャルプランナーといえば、ムダづかいを戒める存在、という印象があるかもしれません。アレはムダ、コレもムダ、という具合に家計の支出を次々とあぶり出しては出費の見直しを迫り、支出過多の状態を改善していくイメージですよね。

ここまでの連載でも家計を黒字化することの重要性がライフプラン3.0の基本的な価値観のひとつだと繰り返し述べてきました。ライフプラン1.0および2.0世代のように借金に追われる人生にしないことが重要であるからです。

しかし、趣味や生きがいに使う予算を全否定するわけではありません。仕事からのリフレッシュ、家族との大切な時間を過ごすための一定の予算は必要不可欠なものです(実は、どんな厳しいFPでも一定額は認めてくれます)。

普通の家計であれば、ざっくり手取りの10%くらいは教養・娯楽費、交際費として家計から捻出されています。私たちは趣味や交際のためにお金を使ってもよく、前向きにそうした支出を検討していっていいのです。

問題はそのコスパであり、収入とのバランスです。赤字の家計で収入の半分をスマホゲームのガチャやパチンコにつぎ込むようなケースは趣味ではなく依存症です。費用と満足度を意識しながら計画的に趣味にお金を使っていくようにしましょう。

趣味というのは、のめり込むほど予算額がアップしていきがちです。特におひとりさまほど、予算管理がルーズになります。できれば、家計の5%くらいに収まるようであれば上出来です。

おひとりさまの場合であれば、「どハマり」した趣味があったとしても、月1万円くらいを上限にするイメージです。普通の家庭の場合、家族全員で月3万円を超えてきたら要注意です。

家族がいる場合、どうしても予算はアップしていきます。ひとりでそれぞれが持つ趣味と、家族で使う娯楽費とのバランスを意識しつつ、予算を家計の10%以下に収まるようにしてみてください。

何か自分なりの趣味と生きがいをみつけてみよう

予算には注意が必要ですが、「無趣味」の人生と比べれば、「どハマりした趣味」があるほうが人生は楽しく明るいものとなります。

毎日がつまらなく張り合いもなかった人が、たまたま友達に誘われた宝塚にハマったところ、いきなり元気になった、なんて話は実際にあります。推しの公演を楽しみに仕事にも集中できるようになったりします。月に数万円の支出は、むしろ健康や生きがいをもたらしてくれたとしたら安いものです。

ある調査では、リアルに会える友人がいてその人と直接会って楽しい話を聞かせてもらうだけで、自分の幸福度が上がるそうです。まさに幸せのお裾分けというわけです。

日曜日は、一度も家を出ずにぼーっとネットをしているというのはもったいないもの。趣味や交際は、私たちに活力をもたらす力が確かにあります。予算だけには留意しつつ、何年も楽しめる趣味をいくつかみつけてみてください(そう、趣味はいくつか持ってもいいのです)。