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不妊治療の保険適用範囲拡大、デメリットに働くケースとは?

そなえる 白浜 仁子

不妊治療の保険適用範囲拡大、デメリットに働くケースとは?

【画像出典元】「stock.adobe.com/Kyrylenko」

不妊治療はこれまで公的保険の適用範囲が限られていましたが、2022年4月より範囲が拡大されています。妊娠を希望されている方々にはうれしいニュースです。

では、どのような治療が公的保険の適用範囲内なのか、これまでの補助金制度はどうなるのか。デメリットが発生する場合についても一緒に見ていきましょう。

不妊治療が保険適用される背景

筆者が担うライフプラン相談の中で、不妊治療を受けているとお話しを伺うことは、この10年間で明らかに増えているように感じます。しかも治療費は実費負担の自由診療が大半で、100万円単位と高額になることが多く、数年にわたり治療し続けるケースもあります。

先が見えない中での不妊治療は、金銭面だけでなく、肉体的・精神的にも負荷がかかり、夫婦にとって乗り越えなければならない壁です。言わずもがな今の日本は少子化対策が必要なわけですから、金銭的負担について政府(中央社会保険医療協議会)では議論が重ねられており、これまでに助成金制度も整備されてきました。

そして2022年4月からは、高額な体外受精等の不妊治療について保険適用が認められるようになり、さらに一歩前進することになりました。これによって、子供を設けたい夫婦の金銭的な負担が軽減され、治療を諦めていた夫婦も、もう一度不妊治療を検討できるようになります。

保険適用になる不妊治療の範囲

不妊治療の中で、保険適用となるのは次のような治療です。

・人工授精・・子宮内に精子を注入する治療
・体外受精・・卵子と精子を採取し受精させる治療
・顕微授精・・採取した卵子に注射針などで精子を注入する治療

なお、受精卵(胚)の培養や凍結保存も保険適用となります。事実婚のカップルも対象です。

ただし、助成金制度と同様に年齢や回数の制限があります。体外受精や顕微授精が保険適用となるのは、治療を受ける女性が43歳未満で、40歳未満なら子一人につき6回まで、40歳以上43歳未満なら3回までです。

特定不妊治療の補助金制度はどうなる?

これまでは、体外受精や顕微授精のような高額な治療を受けると、「特定不妊治療助成金」という最大30万円まで受け取れる助成制度がありました。こちらも43歳未満の女性が対象で、回数制限があるものでしたが、残念なことに今回の保険適用を機に廃止となりました。

不妊治療保険適用がデメリットに働くケースも

聴診器とお札
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高額な不妊治療が保険適用となることは、妊娠を願う夫婦にとって大変嬉しいことですから、メリットと言えるでしょう。もちろん日本全体の未来に繋がることでもあります。しかし、今回の保険適用がデメリットとなるケースもあるので紹介しておきます。

それは「着床前診断」と並行して利用する場合です。
着床前診断とは、体外で受精させた受精卵の検査を行い、染色体や遺伝子に異常がない可能性が高いものだけを子宮に戻すというものです。命の選別という見方もあり今回は保険適用を見送られています。

現在の日本では、保険が適用される保険診療と自費となる自由診療を同時に受ける「混合診療」が認められていません。つまり、体外受精や顕微鏡受精で、同時に着床前診断も受ける場合はすべて自由診療となり全額自己負担です。さらに今回廃止となった特定不妊治療助成金の30万円もないため、この場合は以前より負担が大きくなってしまいます。この点は注意が必要です。

オンライン診療がお得?

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、不妊治療に限らず医療全般でオンライン診療が特例的に拡大されてきましたが、今回このオンライン診療が恒久化することになりました。ただし、原則として「かかりつけ医」が、対面診療と並行して行うことが要件です。初診料は、対面診療が2880円に対し、オンライン診療2510円と370円安く利用できるようです。例えば、不妊治療を受けたいけど仕事で忙しいというような夫婦にも嬉しい改正といえます。           


不妊治療の保険適用範囲が拡大となることで、人生設計が大きく変わる夫婦は増えることと思います。それによって第2子、3子と検討する方もいらっしゃるでしょうし、マイホーム購入を諦めなくて済む家庭もあると思います。これから日本の未来を拓いていくためにもさらに良い仕組みができると良いですね。