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「豊かさ」って何?これからの時代に必要な豊かさの捉え方とは?

山崎俊輔のライフプラン3.0時代を生きるルール 山崎 俊輔

「豊かさ」って何?これからの時代に必要な豊かさの捉え方とは?

ちょっとだけ、50年前の暮らしをイメージしてみよう

私たちは「今の豊かさ」と「将来の豊かさ」を実感しにくい時代に生きています。それどころか、今よりも未来のほうがよくないのでは、と悲観的に捉える人もいます。

豊かさというのは変化があると実感しやすく、変化が小さいとピンとこないものです。また、最初から得られている豊かさはむしろ標準的なものと考えてしまうので、自分が豊かだと考えられません。

でも、確実にイノベーションは生じ、私たちは豊かさを手に入れています。それは未来も同様でしょう。そして、数十年をさかのぼってみると「こんな暮らし方でやっていけたの?」と思うほど、大変な暮らしがあったりします。

そこで今回は「ライフプラン3.0世代ライフ VS ライフプラン1.0世代ライフ」を考えてみたいと思います。

今はおじいちゃんおばあちゃん世代となっているライフプラン1.0世代の若い頃がこんなものだったの?とびっくりするかもしれません。そして意外に無計画だったりします。

1970年代の豊かさ、2020年代の豊かさ

私たちが当たり前のように思って利用しているものも、1970年代には影も形もなかったものがいくつもあります。たとえば

・パソコン
・スマートフォン(携帯電話機能)
・テレビゲーム機
・インターネット
・動画や音楽の配信(ダウンロード、オンデマンド)
・SNSやメッセンジャーアプリ
・スマホアプリのすべて(電子書籍、ゲームなど)
・ネットの検索機能のすべて

は1970年代には存在しません。

私たちが待ち合わせに遅刻する時、「ちょっと遅刻するね」とメッセンジャーアプリを使って連絡しますが、当時は家を一度でも出ると連絡手段はありませんでした。家の電話しかなかったからです。

音楽はリアルタイムでラジオを聞くか、レコードを自宅で再生するくらいが選択肢です。好きなタイミングで好きな音楽や動画を見ることはできませんでした。

それぞれ、考えれば考えるほど、想像もつかない世界だと思います。でも、1970年代を学生として過ごしていた世代は自分たちは豊かさを楽しんでいる、と思っていたわけです。

住環境もまったく違います。フォークソングの定番に「神田川」という曲があります。場所的には早稲田大学の学生でしょうか、その恋愛模様を歌った一節を読み解くとこんな暮らしをしています。

・風呂なし(銭湯まで歩いて行く)
・おそらくトイレは共同
・畳の1部屋だけ(4.5畳ということも)
・当然、エアコンなし
・壁は薄くて隣の音が筒抜け

今では一人暮らしの選択肢として当たり前となっているワンルームマンションがあります。そこに住んでも特別に豊かさは感じないでしょう。しかし、1970年代には「風呂、トイレ、エアコンあり」はとても贅沢だったわけです。

私たちの当たり前は、かつてはとても高い買い物だった

私たちは10万円も出せば大抵のものを買うことができます。家電量販店によっては、5万円で「冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、炊飯器、掃除機」が買えるキャンペーンを春に行うことがあります。液晶テレビを足しても10万円でやりくりできてしまうでしょう。

ところが、私たちにとっての当たり前は、かつてはとても高い買い物でした。新しく登場した、イノベーションは「給料の○カ月分」を出さないと買えないものだったのです。例えば、

・テレビ
・洗濯機
・冷蔵庫
・電気掃除機
・炊飯器
・電子レンジ
・エアコン

といった家電製品が次々に誕生したとき、1カ月の給料ではひとつも買うことができませんでした。これらを分割払いで無理をして買い、数年ごとにひとつずつ買いそろえていく状況だったので、入手するごとに感動がありました。

私たちの感覚でいえば、ひとつ家電品を購入するたびに、40~60万円くらいを出さないといけないイメージです。

当時はどうしていたかというと、まずはガマンして家電がなくてもやりくりをします。そのうえでボーナスを貯めてから買うか、分割払いで何年もかけて支払っていました。

大量生産や生産プロセスの効率化による、低価格化もイノベーションのひとつです。ライフプラン3.0世代は、そうした豊かさを最初から手に入れている世代なのです。

マネーリテラシーはゼロ? 「お酒を飲まずに貯金しましょう」

「そんな大変な時代に暮らしてお金のやりくりをしていたなんて、ライフプラン1.0世代はさぞかし計画的だったのだろう」と思うかもしれません。

おじいちゃんおばあちゃん世代が楽しそうな老後を送っている様子をみると、年長者世代はしっかり堅実にお金の管理をしてきたように思えます。

しかし、ライフプラン1.0世代のお金の管理はそれほどしっかりしたものではありませんでした。ある鉱山の資料館に残されていた古いポスターには「今日はお酒を飲まずに貯金して、それを子どもの将来の学費に回そう」と書かれていたそうです。

1970年代に流行した映画では、毎日酔っ払って電車のホームや路上で朝まで寝てしまう会社員の姿がしばしば描かれます。

私たちの「収支のバランスを考えて1カ月のやりくりをしよう」とか「将来のことも考えて資産形成も考えよう」という意識はまだまだ遠いものだったのです。

それでも、日本の高度経済成長はめざましいものがあり、賃金がどんどん増えていったので(インフレもかなり高いものがありましたが)、当時の人たちは豊かさを楽しみながら、お金の問題もなんとなくクリアしてしまったというわけです。

ライフプラン3.0世代のみつける「豊かさ」とは

今回はちょっと不思議なタイムスリップをしてみました。1970年代から80年代の人たちが感じていた豊かさより、今現在の私たちの暮らしのほうが圧倒的に豊かで楽しいものなのです。

しかし、それを豊かな生活だと実感しにくいのが今を生きるライフプラン3.0世代の難問でもあります。最初からその豊かさが手に入っていて、当たり前のことだと感じているからです。

だからといって、「昔の人は大変だったんだぞ!先達に感謝しなさい!」と言われても
面白くありませんし、豊かな気分になれるわけではありません。

ライフプラン3.0世代は、かつての世代と違う豊かさの感覚を持つ必要があると思います。

【自分を豊かさの評価軸の中心に置く】
・自分自身が個人的にステップアップし、豊かさを増やすことを自覚的になること
・モノの豊かさを増やすことよりも、精神的なゆとりや満足を得ることに意識を向けてみること

【世界を相対的な視点で捉えてみる】
・社会の変化やイノベーションに敏感になり、その変化を感じること
・新興国や政情が不安な国に思いを向けてみること

国家レベルでも、豊かさや幸福度を金銭的付加価値(例えば国のGDP指標)のようなものだけで計るのではなく、違う指標がありうるのではないかという議論が続いています。

私たちも、自分の豊かさや幸せについて、ちょっと考えてみてはいかがでしょうか。

ヒットソングの歌詞ではありませんが、「今そこにある小さな幸せ」も、自分がそれを
認識してこそ幸せたり得るのです。周囲を見回してみてください。あなたにもあなただけの
幸せや豊かさがたくさんあるはずです。