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退職後にもらえるお金とは?退職金・給付金・失業保険一覧

そなえる 白浜 仁子

退職後にもらえるお金とは?退職金・給付金・失業保険一覧

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転職が当たり前の社会となり、終身雇用から実力・成果主義へと大きな転換点を迎えています。とはいえ、転職先を探す時は多くの方が「良い条件の会社をじっくり選びたいけれど、早く決めなければ生活費がかさんで心配」と不安を感じるようです。

本記事では、転職時に受け取れる退職金や失業給付のほか、見落としがちな手当等について一覧で確認します。次のステップに進むための糧として事前にチェックしておきましょう。

退職したらもらえるお金・制度一覧

退職後には、失業中の生活を支えるための給付金や、再就職を後押しする手当など、さまざまな公的制度が用意されています。ここでは、退職時に受け取る可能性のある主な給付や制度を、一覧形式で分かりやすくまとめました。

図表:厚生労働省、ハローワークインターネットサービス、内閣府の情報を参照し筆者作成

各制度や手当について個別に見ていきましょう。

雇用保険の基本手当(失業給付)のしくみと受給条件

雇用保険から支給される給付制度で、正式名称は「基本手当」と言います。安定した生活を送りながら求職活動ができるよう失業者をサポートするのが目的です。

給付額は、直近6カ月の平均賃金を基に計算した1日あたりの賃金(賃金日額)に給付率50~80%を掛けて計算します。賃金日額が低いほど高い給付率となります。支給日数は年齢と勤続年数によりますが、90日、120日、150日などです。

給付要件は、雇用保険の被保険者期間が過去2年以内に12カ月以上あり、求職者であること、つまり働ける環境と意欲があることが大前提です。ハローワークで手続きをしますが、7日間の待機期間の後、1カ月の給付制限を経て給付が始まります。なお、会社の倒産や会社都合での退職といった特別な理由の場合は給付の制限はありません。原則として、退職日の翌日から1年以内に手続きをする必要があります。

遠方の面接に行くと支給される「広域求職活動費」

ハローワークの紹介で遠隔地にある企業の面接などを受ける場合に、交通費や宿泊料が支給されます。

「遠隔地」とは、往復の距離が200㎞以上という基準があります。ただし、これは自宅からの距離ではありません。雇用保険の手続きを行っているハローワークから、訪問する事業所を管轄するハローワークまでの往復の鉄道等での距離を計算します。広域求職活動をした日の翌日から10日以内に手続きが必要です。

求職中の病気やけがで受け取れる「傷病手当」

ハローワークで求職の申し込み後、病気やケガで求職活動ができない状態になった時の手当です。傷病が15日以上続くと、その期間は失業給付の支給が一時的に停止され、代わりに傷病手当が支給されます。なお、この傷病手当の受給期間は、失業給付の受給期間から差し引かれます。傷病手当の支給が終了した後は、残りの失業給付期間に戻って給付を受けることが可能です。受け取れる金額は失業手当と同額です。手当を受けるには、病気やケガが治った後の最初の認定日までに申し出ます。

なお、健康保険に「傷病手当金」という給付がありますが、それとは別の制度です。健康保険の傷病手当金は、勤務中の傷病で一定期間働けなくなった場合に支給されるものであり、求職中の傷病手当とは対象や条件が異なります。

再就職で手当がもらえる「就職促進給付」 

男性と割れ目にまたがる紙幣
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再就職手当

失業手当の受給資格がある人が安定した仕事に就いた場合で、失業手当の支給日数の残りが1/3以上ある場合など一定の要件に該当すると支給されます。

給付額は、支給残日数が2/3以上の場合は残日数の7割、1/3以上の場合は残日数の6割を受け取れます。就職した日の翌日から1カ月以内に手続きが必要です。

就業促進定着手当

前述した再就職手当を受けた人が、再就職先に6カ月以上勤め、その間の1日分の賃金が前職の1日分の賃金より低い場合に給付されます。
給付額は、賃金日額が減少した金額に6カ月間の勤務日数を掛けて計算します。手続きの期限は、再就職した日から6カ月を経過した日の翌日から2カ月以内です。

雇用保険がない人向けの求職者支援制度

再就職や転職、スキルアップを目指す人で、雇用保険受給資格者ではないなど一定の要件を満たす人が、無料でビジネスパソコンや医療事務などの職業訓練を受けられます。

さらに生活支援として月10万円の給付金も受けられます。給付要件は、本人収入が月8万円以下、世帯の収入が月30万円以下で金融資産が300万円以下などです。

短期雇用の人向けの「特例一時金」

季節的に雇用される短期労働者が失業状態となった時に、失業手当に代えて支払われる手当です。離職前1年間に11日以上働いた月が通算6カ月以上あることなどが要件です。

失業手当と同様に計算された給付日額の30日分(現在は暫定措置で40日分)を一括で受け取れます。受給期限は離職日の翌日から6カ月です。

生活費が足りない時に借りられる「求職者支援金融資制度」

前述の求職者支援制度で職業訓練受講給付金10万円の受給予定者を対象にした貸付制度です。職業訓練受講給付金だけでは生活費が不足する場合にお金を借りることができます。

貸付額の上限は配偶者等の有無によって月5万円、または10万円となっており、金利は年3%です。

会社の倒産時にもらえる「未払賃金立替払制度」

会社が倒産したことによって賃金が未払いのまま退職した人に対して、独立行政法人労働者健康安全機構が未払い賃金の一部を立て替え払いする制度です。立て替え払いした場合は、同機構がその分の賃金債権を代位取得し、本来の支払い責任者である使用者に求償します。

退職日の6カ月前から請求日の前日までに支払期日が到来している給与や退職金が対象となりボーナスは含まれません。手続きは、退職日の翌日から起算して6カ月以内に行う必要があります。

退職金の種類

退職金とひと口に言っても会社によって形態は異なります。退職一時金、確定給付企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(DC)などがあり、一つだけの場合、いくつか併用している場合などそれぞれです。

退職一時金

退職一時金は、イメージ通り退職後すぐに受け取れるものです。次の仕事が見つかるまでの生活の支えや、資格取得などのスキルアップ費用、独立して事業を始める人は開業資金にまわすといった活用法もあるでしょう。

退職一時金は課税されますが、退職所得控除によって納税が発生しないケースは珍しくありません。退職所得控除とは、勤続年数によって決まっており、勤続20年までは1年あたり40万円、20年超の場合は1年あたり70万円です。

仮に勤続25年の場合、退職所得控除額は1150万円です。退職金がこの範囲なら税金はかかりません。超えた時は、超えた額のうち半分に課税されることになります。

年金

退職金制度の企業年金となるDBやDCは基本的に60歳以降など老後に受け取るものです。ただし、DBは制度を脱退してすぐに一時金で受け取るなども可能です。一方DCは脱退要件が厳しいため、すぐに受け取れないと考えた方が良いでしょう。退職後は個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換し運用します。

退職後の税金・社会保険手続きを忘れずに

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退職後の納税について特に知っておきたいのは住民税についてです。会社員の住民税は、前年の所得に基づき6月~翌5月にかけて給与天引き(特別徴収)されるのが通常です。

そのため1月~5月に退職した場合は、5月までに払うべき住民税が最終の給与や退職金から一括徴収されることになります。6月~12月に退職した場合は、市区町村から納付書が届き普通徴収として自分で納めます。

ただし、希望すると翌5月までの住民税を給与や退職金から一括で徴収してもらうことも可能です。

所得税は、退職時に年末調整の処理がされていれば基本的に確定申告の必要はありません。退職した年に転職した場合は、転職先の年末調整で前職分も合わせて再計算してくれます。

また、社会保険の手続きも忘れないようにしましょう。暫く求職活動をする場合は、職場の健康保険を任意継続で加入する、国民健康保険に加入する、状況によっては家族の扶養に入る、の3択です。

公的年金は、厚生年金から国民年金への手続きを速やかに役所で行います。国民年金の支払が難しい場合は、免除を受けられないか相談しましょう。

まとめ

退職時の主な給付金や退職時の税や社会保険の注意点を紹介しました。国の制度を活用しながら、今後どのようなワークプランを描いていきたいのか自分と向き合い検討していきましょう。