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大阪万博、黒字になった場合の「剰余金」は一体どこに行くのか?

経済とお金のはなし 工藤崇

大阪万博、黒字になった場合の「剰余金」は一体どこに行くのか?

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開催前は赤字が懸念されていた大阪万博ですが、蓋を開けてみるとまさかの大盛況が報じられています。「赤字になったら誰が補填するんだ」とも言われていましたが、補填ではなく、生じた剰余金の行き先を議論することになりました。大阪万博の「剰余金」は、一体どこへ行くのでしょうか。

損益分岐点の突破は確実

損益分岐点
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8月3日現在、大阪・関西万博の入場券販売数は損益分岐点となる販売目標の1840万枚を突破する勢いで、運営費収支が黒字化する見込みとなりました。今後10月に向けて現在のペースである1日あたり40万枚から50万枚の販売数が継続できれば、上記の目標数が達成できる計算です。

万博は集客面においても当初、とかくネガティブな報道が目立っていました。これまで入場者数が目標に足りず赤字になった場合、「国と大阪府・大阪市、経済界で負担方法を協議する」ことだけが決まっており、責任の所在という極めてネガティブな展開にはならない見込みです。

なお未払い問題が報じられている「建築費」に関しては、赤字の場合と同じく国・大阪府および大阪市・経済界による3分の1ずつの負担と決まっており、返済分が損益分岐点の支出項目には含まれていないとみられます。

ただ主催する万博協会によると、この剰余金から「レガシーの一部を保存するための費用」は支出される見込みです。具体的には会場のシンボルである大屋根リングが対象となり、閉幕後も保存する方向で関係機関が検討しています。1970年における「太陽の塔」のような位置付けになっていくのでしょうか。いずれにしても2025年10月の閉幕までには結論は出ない可能性が高いでしょう。

まずは価値観が多様化し、ハコモノで集客するという「前時代的な」方法ながら、黒字という結果をもたらした運営主体や関係者に敬意を表したいと思います。筆者は東京在住ですが、万博を目当てに大阪まで足を運び、満足して帰ってきた周囲の方々も増えている印象です。

1970年万博の黒字の行き先

さて、大阪で万博が開催されるのは2回目です。1970年の第一回の収支はどうだったのでしょうか。万博開催前に特集された朝日新聞の連載によると、1970年の大阪万博の余剰金は約195億円です。この剰余金は基金とされ、今回の建築費に約半額の約95億円が拠出されています。

その35年後の2005年に開催された愛知県における「愛・地球博」は集客上の苦戦が想定されていたものの、世間を驚かせる「冷凍マンモス」の展示が実現したことと、建設費を約350億円減らしたことで、結果約130億円の黒字となりました。

なお、万博と並ぶ経済効果が生じる日本開催の五輪は固定場所でのイベント形態ではないため、収支を計算するのは困難です。海外の万博に目を向けると、2010年の上海万博は中国の存在感を上昇するのに一役買ったと評価される一方、2000年のハノーバー万博(カナダ)は来場者が予測を大幅に下回り、経済効果が期待値に及ばなかったと報じられています。

今回の万博において強いて言うのであれば、この経済効果額が建設会場費と天秤にかけるべき数字と言えそうです。経済効果には数字の根拠が甘い部分もありますが、「万博が成功だったか否か」を数字面で検討するのには、ここまで突き詰める議論が必要でしょう。その次の段階として、やはり「万博のレガシー」をめぐる議論が必要となります。

「万博のレガシー」とは何か

大阪万博
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「万博は時代を映す鏡」という言葉があります。先進的な技術の見本市としての役割から21世紀になり、気候変動やSDGsへと万博の存在価値は大きく変わりました。

その一方で、重い心不全患者に移植するips細胞による心筋細胞や、「ips心臓」が常設展示されています。また海外の産業界や行政、投資家などを招き入れるホームとしての価値も万博には求められます。右肩上がりで成長する中で開催された1970年の第一回大阪万博とは異なり、他国と比較してGDPの低下や少子化問題などネガティブな要素もある中で迎えたのが今回の万博です。

また万博の会場である大阪市の夢洲(ゆめしま)には、2030年代を目標として統合型リゾートである海外IRの建設が進められています。2025年にはあらたな地下鉄の駅が開業するなど、もともと廃棄物処分地として開発されたエリアであることから「大阪の負の遺産」と言われていた周辺地域のイメージを大きく変化させました。

万博の会場跡をどのように活用するかも含め、今後の展開に期待したいところです。日本は内需型から、海外からの旅行者や産業を招いてともに成長していく形へ。筆者は、今回の万博(と海外IR)は、このように価値観が変わる「契機」になるのではないかと考えています。

日本を訪れる海外の方にとって、そしてそもそも日本人が今後の自分たちの社会をデザインするにあたって、今回盛り上がった大阪万博がよき契機になることを願っています。