【保存版】定年退職前に確認しておきたいお金の手続きまとめ

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定年退職を迎えると、税金や保険等で様々な手続きが発生します。退職後は各種手続きを自分で行わなければならず、前もって準備しておかないとミスやトラブルの原因になりかねません。
そこで今回は、定年退職前に確認しておきたいお金周りの手続きのポイントについて紹介します。
意外と多い定年退職に伴う税金・保険など手続き

定年退職時に行う大きな手続きとしては、主に以下の4つが挙げられます。
・年金
・雇用保険
・医療保険
・税金
詳細は後述しますが、例えば退職金にかかる税金の手続き、退職後の医療保険の切り替え手続きなど、様々な手続きが発生します。
会社に在職していた時にはこうした各種事務手続きは会社側が行ってくれていましたが、退職後は基本的に自分で行わなければなりません。
会社側との書類のやりとりも多い
退職前後は、例えば「離職票」を会社から受け取ったり、「健康保険証」を会社側へ返却したりと、勤めていた会社との書類のやりとりも発生します。受け取り忘れや返却忘れがあるとトラブルになりかねず、退職後も会社に出向かないといけないケースもあるため、漏れなく忘れずに行っておく必要があります。
年金(年金の請求手続き)

年金は65歳から受給資格が得られますが、請求手続きをしないと受給できません。受給開始年齢に到達する3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書」が届くため、すぐに受給する場合には年金請求書に必要事項を記入し郵送します(窓口での提出や電子申請も可能)。
なお、すぐに年金を受給せずに「繰り下げ受給」をしたい場合には、66歳以降で受給を開始したい時期に年金事務所または年金相談センターに請求書を提出することになります。
退職前にやることは?
退職前には「ねんきん定期便」などで加入記録等を確認しておきましょう。また会社が「年金手帳」を保管している場合、退職時に忘れずに返却してもらいます。
雇用保険(失業給付の受給)

雇用保険は、基本的に就労を希望している人のための制度であり、該当者は再就職活動中の一定期間、失業給付(失業手当)を受給できます。
退職後に再就職を希望している場合は、離職票と個人番号確認書類などを持ってハローワークで求職の申し込みをし、雇用保険受給者初回説明会に出席することで「失業給付(失業手当)」の受給資格が得られます。
なお、失業給付は20歳以上65歳未満を対象としており、年齢が65歳以上である場合は受給できません。その代わりに、65歳以上の方には「高年齢求職者給付金」が用意されていますが、給付日数が最大で50日となり通常の失業給付より短くなります(通常の失業給付の給付日数は最大150日)。
また失業給付を毎月受給するには継続的に再就職活動を行い、4週間に1回、指定認定日にハローワークで失業認定を受ける必要があります。
退職前にやることは?
失業給付の試算のために退職前6カ月間の給与明細を保管しておきましょう。また退職時に会社側が「離職票」を発行するため、忘れずに受け取っておきます。
医療保険(医療保険の加入手続き)
退職すると、これまで加入していた会社の医療保険(健康保険)からは外れることになります。退職後の医療保険については「①健康保険の任意継続被保険者になる」「②国民健康保険に加入する 」「③家族の健康保険の被扶養者になる」の3パターンの選択肢があります。
①健康保険の任意継続被保険者になる場合:
退職後も「任意継続被保険者」として、これまで勤めていた会社の医療保険に引き続き加入することができます。希望者は、退職日の翌日から20日以内に管轄の全国健康保険協会(協会けんぽ)の都道府県支部または各健康保険組合で手続きを行います。
②国民健康保険に加入する場合:
退職して会社の健康保険から外れた方(他の公的健康保険制度に加入していない方)は、「国民健康保険」に加入することができます。希望者は、資格喪失後14日以内に、居住地の市町村(特別区を含む)役場で加入手続きを行います。
③家族の健康保険の被扶養者になる:
配偶者や子どもなどが加入している公的健康保険の被扶養者となる方法です。希望者は、資格喪失から原則5日以内に家族の勤務先を通じて加入手続きを行います。被扶養者になると保険料の負担はありません。
ただし被扶養者になるためには、収入面などにおいて細かな条件が設定されています。
「国民皆保険制度」のもと、すべての国民が何らかの医療保険に加入する必要があるため、退職後はどの医療保険に加入するかを自分で選択することになります。
税金(所得税・住民税)

退職時に手続きが必要となる税金は「所得税」と「住民税」の大きく2つです(退職金にかかる税金は後述)。ここではそれぞれの注意点について解説します。
所得税
所得税は、年度末の年末調整まで正しい納税額は分からないため、概算額として月々の給料から天引きされています。そのため年度の途中で退職した場合には所得税を払いすぎていることが多いのです。払いすぎた所得税は、退職した年の翌年の2月16日から3月15日に「確定申告」を行うことで戻ってきます。
住民税
住民税は、前年度の所得をもとに計算され、翌年6月から翌々年5月まで納付を行う後払いの形式であり、退職後はこの期間住民税を個別に支払う必要があります。自治体から納付書が送られてくるので忘れずに納付しましょう。ただし、退職時に最後の給料で住民税を全額支払いしている場合は個別に支払う必要はありません。
退職金やiDeCoの受け取り方
退職金やiDeCo(老齢給付金)には、受け取り時に所得税が発生します。受け取り方によって支払う税金が減ることもあるため、課税の仕組みを理解しておくことが大切です。
退職金の受け取り方
退職金の受け取り方法は「一括で受け取る」「年金として分割で受け取る」、「その両方を組み合わせる」の3パターンが基本です。また、一括で受け取る場合は「退職所得控除」、分割して受け取る場合は「公的年金等控除」が適用になります。
iDeCo
iDeCoは満60歳から受け取りが可能になります。iDeCoの受け取り方法は「一括で受け取る」「年金として分割で受け取る」の2パターンが基本であり、退職金と同様、一括で受け取る場合は「退職所得控除」、分割して受け取る場合は「公的年金等控除」が適用になります。
両方一括での受け取りはよく考えよう
退職金とiDeCoの両方を一括で同時に受け取ってしまうと、退職所得控除の恩恵が十分に受けられず、支払う所得税が余計にかかってしまうことがあります。一括で受け取るのであれば、退職金とiDeCoの受け取る年をずらす、もしくは片方を一括ではなく年金として分割で受け取るなど、パターンを変えて受け取る方法も視野に入れたいところです。退職金の額や勤続年数などによってもどのパターンが最適なのかは変わってきますので、ご自身の状況を反映させた上で、各パターンでよくシミュレーションしてみましょう。
以上、定年退職前後のお金周りの手続きについて解説しました。
退職後の手続きには期限が設けられているものもあり、手続きにミスや漏れがあると、本来得られるはずのお金が得られなかったり、トラブルに発展したりすることもあります。定年退職前後はただでさえ生活のスタイルが変わり、慌ただしい日々が続く可能性もあるため、できることは早めに準備し計画的に進めていきましょう。