歯科健診が義務に!?保険は利く?保険診療と自費診療の違いは
皆さんは定期的に歯医者さんに行っていますか?虫歯などの治療で行っている人もいれば、口腔内のメンテナンスやクリーニングで通っている人もいるでしょう。今回は2022年6月に政府が閣議決定した「骨太の方針2022」の中で話題になった「国民皆歯科健診」について触れていきます。また、歯科治療の保険診療と自費診療についても解説します。
なぜ「国民皆歯科健診」が検討されているの?
「国民皆歯科健診」と言う言葉、意味はなんとなく理解できますが、具体的にどのようなことなのでしょうか?現在、高校生までは歯科健診が義務づけられていますが、それ以降の大学生や社会人は対象となっていません。そのため自治体や企業によって、歯科検診の実施状況は大きく異なります。今回、国民皆歯科健診が検討されているのは、口腔内の健康が身体全体の健康に大きな影響をもたらしていることが背景にあります。
厚労省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」によると、近年の研究により、口腔の疾患、特に歯周病は糖尿病と高い関連性があり、また心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患などさまざまな全身疾患にも関連していることが分かってきました。このことから口の健康が全身の健康状態と関係があり、口の健康状態を改善することで平均寿命と健康寿命の差を縮め、医療費の減少につながることが期待されています。
令和2年度の医療費は42.2兆円で、そのうち歯科は3.0兆円。これは全体の7.1%となっています(厚労省:令和2年度 医療費の動向)。労災・全額自費等の費用は含まれていないため、実際はもっとかかっているでしょう。歯科健診を行うことで、歯周病をはじめとする歯の病気を予防できれば、歯科の医療費だけでなく医療費全体を削減できる可能性もあります。
歯の治療は保険診療と自費診療に分かれる
歯の治療は、通常は3割負担の保険診療で受けられます。ただし、歯の治療に使う材料や治療方法によっては保険が適用されないこともあります。まずは歯科診療の仕組みを見てみましょう。
健康保険適用
健康保険で認められた材料を健康保険で認められた技術で治療すると、一部の自己負担ですべての治療を受けられます。
差額自己負担
例えば前歯と総義歯の床部分に健康保険適用外の材料を使用した場合、健康保険で認められたものと、その材料との差額を自己負担します。
自費(自由)診療
健康保険を適用できない貴金属材料や治療方法を希望した場合、技術料なども含めた医療費全般を自己負担します。そのため負担する医療費は保険診療に比べて高額になります。
例えば前歯を治療する場合、食事や会話などの機能を改善することはもちろん、「見た目」を重視するケースも多く、差額や医療費全額を支払っても良いと希望することもあるでしょう。ただし自費診療は、材料や診療内容によっては数十万円の医療費が必要とも言われます。もし自費診療を希望するのであれば、健康保険が適応される材料や治療との違いや費用の見込みなどについて、治療前に医師から十分な説明を受けましょう。
日本年金機構健康保険組合では、健康保険でできる歯科治療例を以下のように示しています。
●虫歯で欠けた部分をつめたりかぶせたりする歯冠修復
●なくなった歯を人工歯で補う欠損補綴
引用:日本年金機構健康保険組合
上記のように、認められている以外の材料を使用した場合は、基本的に自費診療になるといえます。最近では歯が抜けた後の治療でインプラントという差し歯を使うケースが増えてきました。インプラントは見た目やモノを噛んだの時の力の伝わり具合などが優れており、人気がある治療法ですが保険診療の対象外です。
機能を元に戻すことを目的にするのが保険診療、そこに見た目や使い心地・耐久性の要素をプラスすると自費診療や差額診療になると考えて良いでしょう。また、具体的な疾病や症状が無い状態での歯科健診や虫歯予防のための処置などは、基本的に保険適用外で自費診療となります。
まとめ
インプラントのように明らかに自費診療と分かる治療法は別として、一個人で受ける治療が保険診療か自費治療かを判断するのは困難です。いずれにしても治療を始める前の問診などのタイミングで、「保険で治療をしたい」と伝えれば保険治療が優先されるでしょう。その上で、より見た目の自然さを重視して自費診療の選択をしたり、医師から提案があったりすれば、治療内容や費用の概算についてもきちんと尋ねることが必要です。わからないまま・不明なままで診療を受けることは避けましょう。また、自費診療で支払った費用も医療費控除の対象です。領収書を保管し、確定申告を忘れずに行いましょう。