加入者増のiDeCo、実はやらない方がよい3タイプの人
老後資金の準備といえば、iDeCo(イデコ)が注目されていますが、「自分はiDeCoを始めるべきか?」と迷う人も少なくないようです。そこで今回は、iDeCoを始めた場合のデメリットについて紹介していこうと思います。加入を検討している人、既に加入している人、どちらの場合でもデメリットをきちんと理解した上で上手に付き合っていきましょう。
加入者が増え続けるiDeCo
iDeCoの正式名称は、個人型確定拠出年金といい、老後資金を準備するための制度です。魅力は、掛け金が全額所得控除されることや、利益が非課税になることです。
iDeCoの加入者数は、2023年6月末現在で約300万人。2001年の施行時は加入できる人が限られていましたが、2017年の法改正によって、原則すべての人が加入できることになりました。これによって2019年には加入者が100万人を突破し、4年後にあたる現在はさらに3倍にまで増えています。
また、iDeCoは60歳まで積み立てられる制度ですが、2022年5月からは、国民年金の任意加入者や、厚生年金を納める立場で働く60歳以降の人も希望すれば65歳まで積み立てられるようになりました。さらに2022年10月からは、企業型DC(企業型確定拠出年金)加入者がiDeCoにも加入しやすいよう、要件が緩和され、今後も加入者の拡大が想定されます。
iDeCoのデメリットをきちんと知っておこう
節税効果が高いとされるiDeCoですが、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
原則60歳まで払い出しができない
iDeCoは、一度加入すると原則60歳まで払い出しができません。例外として、一定の要件を満たせば脱退一時金を受け取ることも可能ですが、要件は厳しいので、通常は解約できないと理解していた方がよいでしょう。
納税者でなければ、所得控除の恩恵が受けられない
iDeCoの一番の魅力は、掛け金が全額所得控除される点です。所得控除は、税金を計算する上でiDeCoの掛け金分を所得から差し引いて計算できるので、それによって納める税金が少なくなります。
つまり、専業主婦やフリーターなど、納める税金が少額である人や、税金を納めていない人の場合は、その恩恵をほとんど受けられません。
管理手数料が掛かる
iDeCoは、毎月、口座管理手数料が掛かります。金融機関によって費用は異なりますが、最低171~600円前後です。そのため、運用の指図を投資信託ではなく金利の低い定期預金にしていると、運用益が期待できず資産が目減りします。ただ、前述の所得控除の恩恵があるので、その分を考慮して管理手数料分が吸収できるかどうかを判断することになります。
受給時に税金が掛かる場合がある
iDeCoで運用した資金を受け取る場合、一括または年金での受け取りを選択でき、受取時に課税されます。ただ、一括で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」という所得控除が適用されるため、上手く利用できれば納める税金はゼロとなるケースも珍しくありません。
しかし、会社から支給される退職金や企業年金、公的年金の受取時も同じ控除を利用するため、退職金や企業年金・公的年金の金額が大きい場合は注意が必要です。受け取り方を工夫することで、税負担を軽減できる可能性もあるため、気になる人は専門家に相談することをお勧めします。
iDeCoをやらない方がいい人とは?
これらのデメリットを踏まえ、iDeCoをやらない方が良いのはどんな人かを考えてみましょう。
預金が少ない人
手元に置いておくべき、もしもの時の資金(生活費)が貯められていない人や、近い将来、マイホームの購入予定があったり、子どもの大学費用の準備が順調でないという人は、資金の見通しが立つまでiDeCoは見合わせた方が良いでしょう。老後に備えることに重きを置きすぎると、現役時の生活が回らなくなり危険です。
専業主婦やパート勤めの人
前述したように、iDeCoは掛け金が所得控除され、税制優遇が大きいことが魅力です。しかし、専業主婦やパートなどで税金を納めていなかったり、少額の人はその恩恵をほとんど受けられません。節税効果があまりないため、iDeCoではなく、いつでも払い出しができ、利益が非課税になるつみたてNISAを検討するのも一手です。既につみたてNISAを限度額まで利用しているのでしたら、所得控除の恩恵がなくても、老後資金のためにiDeCoを始める、という選択肢はあると思います。
住宅ローン控除を受けている人
正社員などしっかり収入を得ている人でも、住宅ローン控除を受けている人は注意が必要です。住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りてマイホームを購入した人が対象となる税額控除で、年末のローン残高の0.7%(または1%)が所得税から差し引かれ、引ききれない場合、一定額が住民税からも差し引けるという仕組みです。
詳細は割愛しますが、住宅ローン控除がある場合、iDeCoの節税効果は意味をなさないケースがあります。もちろん、その人の所得や住宅ローン残高によっては、iDeCoと住宅ローン控除を併用することで節税効果が最大化されるケースもありますので、気になる人は、専門家に確認してみましょう。
まとめ
今回は、iDeCoのデメリットや、始めない方が良い場合についてみてきました。今後もiDeCoはもっと利用しやすく改善・拡大していく流れにあるため、筆者は、前向きに検討した方が良いと思います。もちろん、その方の置かれている状況によっては、今は始めないという選択も必要です。無理のないよう総合的に判断しましょう。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。