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改正された確定拠出年金、マッチング拠出とiDeCo併用、どちらがお得?

FPにききたいお金のこと 権藤 知弘

改正された確定拠出年金、マッチング拠出とiDeCo併用、どちらがお得?

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確定拠出年金は老後資金の準備にぴったりの制度ですが、時代のニーズに合わせて制度変更が度々行われています。今回は2022年10月の改正で可能となった、確定拠出年金とiDeCoの併用について、既に企業型確定拠出年金でマッチング拠出を行っている女性からのご相談です。

マッチング拠出をしている40代女性からの相談内容

確定拠出年金とiDeCoの併用が可能となりましたが、既にマッチング拠出をしている場合はiDeCoとの併用ができないと聞きました。マッチング拠出をやめてiDeCoを併用した方がいいのか、このままマッチング拠出をしたままの方がいいのか・・・どちらがオススメでしょうか?

 確定拠出年金とは

まずは確定拠出年金をおさらいしてみましょう。
確定拠出年金という言葉を分解すると以下のようになります。

  • 確定→あらかじめ決まった金額
  • 拠出→積み立てる
  • 年金→老後資金

確定拠出年金が「老後資金のため毎月決まった金額を積み立てる」という制度であることが分かります。また確定拠出年金は積み立てる資金を自分で運用する仕組みになっており、運用成果により将来受け取れる給付額も変動します。

企業型と個人型

老後資金を準備するのに適した確定拠出年金ですが、積み立てる資金を誰が負担するかの違いによって企業型と個人型の二つに分けられます。

  • 企業型→積み立てる資金を企業が負担する
  • 個人型→積み立てる資金を個人が負担する

企業型は「退職金を自分で運用する」という性格が強く、個人型は「自分で老後資金を準備する」という考え方です。

  マッチング拠出とは?

企業型確定拠出年金には、会社が拠出している掛金に加入者本人が掛金を上乗せして積み立てる制度があり、これをマッチング拠出と呼びます。マッチング拠出をすることで、老後資金のための積立額を増やせるだけでなく、節税効果もあります。

企業型確定拠出年金とiDeCoの併用とは?

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2022年10月、企業型確定拠出年金(以下企業型DC)と個人型確定拠出年金(以下iDeCo)の併用について制度が改正されます。これまでは、企業型DCを導入している企業に勤務している場合、iDeCo加入を認める規約がある企業に勤務している人しかiDeCoに加入できませんでした。

10月以降は企業型DCとiDeCoを併用するための条件が緩和され、原則として企業型DCの加入者もiDeCoに加入できるようになります。併用することで老後資金を増やす・より節税できるなどの効果が期待できます。

企業型(企業型DC)と個人型(iDeCo)を併用する際の掛金の条件

企業型DCに加入している人がiDeCoを併用する場合、毎月の掛金の合計は以下の範囲です。

〈2022年10月以降の拠出限度額〉

筆者作成

10月の制度改正により、企業型DCに加入している人も、掛金の合計が5万5000円以内であればiDeCoを併用して老後資金を準備できます。ただし相談者の方のご指摘通り、マッチング拠出とiDeCoの併用はできません。

マッチング拠出とiDeCo、どんな違いがある?

マッチング拠出とiDeCo、どちらを選ぶかは悩ましいところです。主な違いを見てみましょう。

筆者作成

幅広い選択肢の中から運用する商品を選びたいということであれば、iDeCoの方が優れていますが、企業が口座管理手数料を負担してくれるマッチング拠出も捨てがたいものです。ただしインターネット専業の証券会社やインターネットに力を入れている銀行などであれば、iDeCoの年間の手数料が2000円を少し超えるぐらいで済みます。手数料負担がこれくらいで済むのであればiDeCoを活用するという選択も良いでしょう。

マッチング拠出とiDeCo、どちらをやるべきか?

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マッチング拠出とiDeCo、どちらのメリットが多いのでしょうか?掛金の視点から比較してみます。マッチング拠出とiDeCoはどちらも「事業主掛金との合計が最大5万5000円」という点が同じです。ただし、マッチング拠出では事業主掛金と同額が上限、iDeCoでは最大2万円が上限です。そのため企業型DCの事業主掛金が2万円以下であれば、iDeCoの方が積み立てられる金額が多くなります。一方で事業主掛金が2万円を超えていればマッチング拠出の方が積み立てられる金額が多くなります。

*企業型DCの事業主掛金が仮に5000円であれば、マッチング拠出の上限額は5000円です。

まとめ

マッチング拠出とiDeCo、どちらを選ぶかは悩むところです。現在マッチング拠出をしている方は、運用商品に「先進国株式・日本株式・先進国債券・日本債券」の4つの分野を対象にしている手数料の安いインデックス型の投資信託がないか確認してみましょう。もしあれば、企業型DC以外の商品を選ぶためにiDeCoを開設する必要性は低いと思われます。

また、企業型DCで運用できる投資信託とiDeCoで運用できる投資信託の、それぞれの信託報酬(維持費にあたる手数料)を比較すると、一般的に企業型DCの投資信託の方が少し高いことが多いようです。しかし一方で、企業型DCでは口座管理手数料を企業が負担してくれます。

そう考えると、どうしても積み立てしたい商品があるなら話は別ですが、事業主掛金が2万円を超えていなければiDeCo、超えていればマッチング拠出を選択するということで良いでしょう。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。