離婚後の年末調整は注意!あの控除が無くなり負担増?損しないタイミングは
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年内に離婚をすると、予定されていた控除が受けられなくなり、税金の負担が増す場合があることをご存じでしょうか?特に会社員の場合は、年末調整で過不足が調整されるため、思わぬ出費になりかねません。今回は、離婚をした場合に影響する控除の種類や、具体的にいくら負担があっるのか、それを回避するための離婚のタイミングについて見ていきます。
離婚したら年末調整に影響が出ることがある
まずは、年末調整についておさらいです。年末調整とは、これまで毎月ざっくりと会社が差し引いてくれていた所得税を総決算するものです。それによって所得税が多めに差し引かれていることが分かると、12月や翌年1月の給与支給時に還付され、反対に不足していると徴収されます。
所得税は、1~12月の1年間の所得から「一定の控除」を差し引いたもの(課税所得)に税率を掛け計算されるのですが、その「一定の控除」が人によって異なるため、今回のテーマとなる離婚時に影響する可能性があるというわけです。
離婚したら受けられなくなる控除とは
では、具体的に離婚によってどのような控除が影響を受けるか見ていきましょう。
配偶者控除
配偶者控除とは、配偶者が専業主婦(夫)の場合や、働いていても一定以下の収入の場合に差し引くことができる控除です。
・配偶者の所得要件:合計所得48万円以下(給与の場合:収入103万円以下)
・控除額:38万円 (※1)
(※1)ただし、控除を受ける者の合計所得によって、控除額は以下のように異なります。
・900万円超950万円以下:26万円
・950万円超1000万円以下:13万円
・1000万円超:控除なし
配偶者特別控除
配偶者の所得要件を超えてしまい配偶者控除が受けられない場合でも、以下の要件を満たせば配偶者特別控除が受けられます。
・配偶者の所得要件:合計所得48万円超~133万円以下(給与の場合:収入103万円超~201万円以下)
・控除額:38万円~3万円(配偶者の所得に応じて徐々に下がる)(※2)
(※2)ただし、控除を受ける者の合計所得によって、控除額は以下のように異なります。
・900万円超950万円以下:26万円~2万円
・950万円超1000万円以下:13万円~1万円
・1000万円超:控除なし
配偶者控除も配偶者特別控除も生計を一にする(家計がひとつである)ものでなければなりません。別居していて家計も別という場合は対象外です。
扶養控除
・扶養される者の所得要件:合計所得:48万円以下(給与の場合:103万円以下)
・控除額:
一般・・38万円
特定・・63万円
老人扶養親族・・(同居)58万円、(同居以外)48万円
一般とは、16歳以上の親族(6親等内の血族や3親等内の姻族)を扶養している場合の控除ですが、そのうち19歳以上23歳未満の親族を扶養している場合は、特定扶養親族として控除額が大きくなります。
つまり、高校1年生になる年から税務上は扶養しているとみなされ控除が受けられるようになり、大学生になる年から大学卒業の年までは特定扶養控除の対象となるという感じです。子供が中学生以下なら、離婚してもしなくても控除はありません。
また、配偶者の両親を扶養している場合もあるでしょう。70歳以上の場合は老人扶養親族となり、同居の場合58万円、同居以外の場合48万円と、一般の扶養控除より多くの控除が受けられます。こちらは離婚をすると控除が受けられなくなります。
生命保険料控除
控除額:最大12万円
死亡保険や医療保険、がん保険、個人年金保険などにを支払っている時に受けられる控除です。
しかし、保険金等の受取人が、本人、配偶者、またはその他の親族とする保険契約に限られます。
死亡保険に加入している場合、多くの方が配偶者を受取人に指定していると思います。もし受取人を配偶者のまま変更していなかった場合は、離婚後に支払った保険料は控除の対象になりません。
つまり、婚姻期間中に支払った保険料のみが生命保険料控除の対象というわけです。離婚後、親や子供に受取人を変更すれば、その後に支払った保険料も控除の対象にできます。
損しない離婚のタイミングとは
それでは、税金面で損をしない離婚のタイミングはいつでしょうか。
年末調整は年末に判定されるため、年明けに離婚した方が有利になることが
離婚は、税金の損得だけで離婚のタイミングを決めるのは難しいと思いますが、敢えて申し上げるなら離婚は年明けにした方が有利になります。
その理由は、年末調整が「12月31日時点の扶養状況がどうなっているか」を申告するものだからです。たとえ1月から11月まで配偶者や子を扶養していたとしても12月に離婚が成立したのなら12月31日時点では扶養していないこととなり、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなります。月割りをしてくれたら良いのですが・・・
ですから、離婚によって控除が受けられなくなることを避けるには、離婚を年明けに遅らせた方が有利になるというわけです。当然ですが、離婚したことで控除が受けられるようになることもあるでしょう。これまで相手の扶養に入っていた子供の親権者となり扶養控除を受けられるようになるというケースです。そうなると、年内に離婚した方が有利になります。
離婚したら受けられる控除は
離婚をしたことによって受けられるようになる控除は他にもあります。該当する場合は、離婚することによって扶養控除とひとり親控除または、寡婦控除を受けられるようになるため税負担が減ります。早速見ていきましょう。
ひとり親控除
ひとり親控除は、離婚後に生計を一にする子(総所得金額48万円以下)がいる場合で、子が他の人の扶養親族になっていない場合に受けられます。
所得要件:合計所得500万円以下
控除額:35万円
なお、離婚後に事実上の婚姻関係と同様の事情と認められる一定の人がいる場合は認められません。
寡婦控除
寡婦控除は、「婦」という文字が入っていることから分かるように女性のみが受けられる控除です。夫と離婚したもののひとり親控除が受けられない女性で、扶養親族がいる場合が対象となります。
所得要件:合計所得500万円以下
控除額:27万円
つまり、ひとり親控除は子を扶養していることが要件ですが、寡婦控除は子がいなくてもそれ以外の扶養親族がいれば要件を満たし対象となります。控除額はひとり親控除の方が大きくなっており、子を扶養していることへの配慮が感じられます。
こちらも、離婚後に事実上婚姻関係と同様の事情と認められる一定の人がいる場合は認められません。
離婚したら、追徴されるお金がある?
これまで見てきたように、離婚によって控除される金額が変わるため、離婚前より控除額が減る場合は、追加で税金を支払わなければならなくなります。どのくらい負担が変わるのか見ていきましょう。
扶養が減ったことによる所得税追徴のケース
配偶者控除、扶養控除以外は変化がなかったとします。
例1)
Aさん:会社員、年収600万円(合計所得436万円・所得税率10%)
配偶者:パート、年収100万円
長女:7歳(小学1年生)
これまで受けていた控除
・配偶者控除38万円
離婚により、38万円の控除が受けられなくなるため
(控除38万円)×(所得税率10%)=3.8万円
よって、3.8万円の所得税の負担増となります。
例2)
Aさん:会社員、年収800万円(合計所得610万円・所得税率20%)
配偶者:パート、年収100万円
長男:20歳(大学生)、アルバイト年収40万円
次男:17歳(高校生)
これまで受けていた控除
・配偶者控除38万円
・長男:扶養控除63万円
・次男:扶養控除38万円
計139万円
親権が配偶者に移った場合、139万円の控除が受けられなくなるため
(控除計139万円)×(所得税率20%)=27.8万円
よって、27.8万円の所得税の負担増となります。
なお、養育費などの支払いで扶養しているとみなされる場合は、扶養控除は受けることも可能です。しかし、両親ともに控除を受けることはできないので注意しましょう。
なお、住民税は1年遅れで計算され、今年分を翌年の6月~翌々年の5月に支払います。つまり、最初から離婚後の控除をもとに住民税が計算され、それを翌年納めることになるため追徴はありません。
まとめ
今回は、離婚によって年末調整にどのような影響があるかを見てきました。各控除の詳細は、社内の担当部署や税務署などに確認するとよいでしょう。これまでの内容をまとめます。
1.離婚をすると、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられなくなる
2.扶養控除が受けられなくなる場合がある
3.控除額が減ると、年末調整で追徴される
4.離婚をするなら年明けがお得
5.離婚をすることで受けられる控除もある
離婚は結婚の何十倍も何百倍もパワーが必要です。年をまたぐ可能性があるという場合、年内に離婚を成立させて新たな気持ちで新年を迎えたいと考える人も少なくないのではないでしょうか。税金の負担を意識して離婚を決めていくことは考えにくいですが、いずれにせよ離婚をして子供をシングルで育てていくという立場では特に、税の知識もきちんと知ってマネープランにより関心をもってみてはいかがでしょうか。
年末調整と控除についてのQ&A
Q.離婚協議中の控除はどうなる?
A.離婚協議中や別居をしている場合でも、法的に離婚が成立しておらず実際に扶養をしているのなら配偶者控除や扶養控除を受けることができます。
Q.子供の国民年金を支払っていますがどうなりますか?
A.子を扶養していれば控除の対象となり、社会保険料控除を受けることができます。