お金

もし介護が必要になったら?施設に入ったら?かかる費用や貯め方は?

FPにききたいお金のこと 内山 貴博

もし介護が必要になったら?施設に入ったら?かかる費用や貯め方は?

【画像出典元】「Ground Picture/Shutterstock.com」

連載「FPに聞きたいお金のこと」、今回はご両親の介護を通して、自分が介護される時のお金をどう貯めるか考えはじめた50代女性からのご相談です。介護保険サービスはありますが、実際に介護に必要な平均額なども併せて紹介します。

50代女性Kさんの相談内容

両親の介護を夫と二人で始めて4年目です。介護をしながら思うのは、自分がされる側になった時の貯金額はどれくらいで、どのようにして貯めたらいいのだろうということです。アドバイスお願いします。

既にご両親の介護をされているということで、介護保険の仕組みや実際にかかる介護費用などはかなり把握されていると思いますが、ご自身の際の介護についてはいくらぐらい、どのように貯めるべきなのか?その考え方について提言したいと思います。

介護にかかる費用は?

生命保険文化センターが行った2021(令和3)年度の生命保険に関する全国実態調査によると、世帯主または配偶者が要介護状態となった場合、必要な初期費用の平均は234万円となっています。加えて、初期費用以外にも月々の負担が必要です。その月々の費用の合計平均額(介護保険範囲外)は、なんと3074万円。ただ、その額には大きな開きがあり、300万円未満と回答した人もいれば6000万円以上という回答もあります。一番回答が多かった分布は「1000万円~2000万円」です。

介護施設の利用を想定すると、目標は1人2000万円?

介護費用
【画像出典元】「stock.adobe.com/smile」

先ほどの介護費用のデータを考慮しますと、1人あたり2000万~3000万円程度は介護費用として貯めておきたいところです。ただし、Kさんが実際にいつ、どの程度の介護状態になるかは分かりません。また、その時のご主人やご家族などの状況によるところも大きいと思います。自宅か施設利用かどうかによっても、かかる費用には大きな差が生じます。もちろん70代や80代になっても介護が必要なく、元気でいられる可能性も十分にあります。

将来の介護費用のみならず子供が生まれたばかりの際に考える教育資金なども同じことが言えるのですが、非常に不確定要素が多い中でお金の準備をしていくことは難しいところです。親として公立進学をベースに考えていたとしても、子供が私立に進学する可能性も十分あります。子供の希望、受験の合否など様々な不確定要素が絡み合うためです。こういった場合はしっかりと情報を集めて、具体的なプランニングを行っておくことが大切です。

一番可能性の高いシナリオ&やや厳しめなシナリオを

「結局、介護にそれほどお金がかからなかった」というシナリオが一番理想的ですが、将来のプランニングは少し厳しめに行っておくと良いです。また具体的に、そして一番可能性の高いシナリオを想定してプランを立ててください。具体的には以下がチェック項目となります。

・いつ頃から介護をしてもらう?
・誰が介護をする?
・施設の利用は?
・どこで、どのような介護生活を望む?
・介護期間は?

英語の5W1Hが大切と言われますが、それと同じですね。
なお、先の介護に関する調査結果では介護期間の平均は5年1か月となっています。ただし、介護継続中のケースも含まれるため「亡くなる前10年程度は介護費用が必要となる」といった具体的なプランを前提にKさんの希望などを盛り込みながらイメージしておくと良いでしょう。

満期、運用期間など特徴の違う運用や積立を

資産運用
【画像出典元】「stock.adobe.com/Looker_Studio」

「75歳から85歳にかけて介護が必要になる」といった具体的なプランが視野に入ってくると、そのためのお金の貯め方もより具体的になります。仮にこのプランを前提にすると、50代のKさんの場合、75歳までおよそ20年あります。20年という期間は、資産運用を行う上で、「長期」を通り越して、「超長期」に該当します。よって、投資信託等である程度リスクを取って資産をふやすことを意識するのも大切です。その際にいくつか特徴の違うタイプに分けておくと良いでしょう。

例えば成長著しいアジア株などのファンド、堅実でやや高い利回りが期待できる先進国の債券など。といった具合です。リスクの大きいものほど大きなリターンが期待できます。ただし、そのためには一定の期間を要する場合が多いです。いくつかの運用対象に分けておくことで、将来、介護以外にも様々な老後資金が必要となるため、その都度、より適したものから換金するといった柔軟な対応が可能となります。

例えば、「介護初期の一時金として100万円必要」となった場合、その段階で一番利益が生じているものを解約するといった具合です。

もちろん、民間の生命保険会社が販売している介護保険なども、選択肢の1つとして検討してください。一定の条件を満たせば終身年金として受け取れるものもあります。貯金、保険、そして投資商品、1つ1つ長期的な視野でいくつかに分けておくことが介護への備えとなりそうです。

貯蓄はがんばり過ぎないことも大切

現在、ご両親の介護に向き合われているので「自分の時は・・・」と心配になるお気持ちも十分に理解できます。しかし過度に介護のことばかりを考えお金を貯めるというよりも、「老後資金全般をできるだけ多く蓄えておく」という意識で取り組むことが大切です。ただし、無理のない範囲で取り組んでください。

よくあるケースですが、お金を貯めることや節約すること、住宅ローンを繰り上げることなどに注力し過ぎて、趣味など自分の時間を犠牲にするといった人も少なくありません。もちろん、節約や貯蓄が楽しく趣味としているのであれば良いのですが、過度に買いたいものや遊びたいことなどを我慢して、とにかく貯蓄を優先するという人もいます。

医学的なことは門外漢ではありますが、ある程度、笑顔で趣味を楽しんだり、芸術やコンサートなど一流のものに触れたり、外食や旅行をするような生活が健康にも良い影響を与え、結果的に介護費用がそれほど必要のない人生につながるかもしれません。

「介護費用として、とにかく1円でも多く貯める」という意気込みは大切ですが、だからといって眉間にしわを寄せて家計簿とにらめっこばかりしていては心身ともに疲れてしまうかもしれません。ご両親の介護に向き合いながら、1つ1つできることからご自身の介護準備を始めてください。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。