今年がラストチャンス!「ジュニアNISA」廃止後の賢い使い方を解説
少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」には、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類があります。このうち未成年を対象としたジュニアNISAは2023年12月末で廃止が決まっています。
ジュニアNISAには払い出し制限などのルールがあり、使い勝手が悪いと人気がなかったのですが、廃止が決まってからというもの、その制度が改正されて再び注目が集まり、利用者数が急増しています。
そこで今回は、ジュニアNISAの制度概要やメリット・デメリット、廃止後の変更点、賢い使い方などを解説します。
ジュニアNISAの利用を迷っている人は今年がラストチャンスです。ジュニアNISA廃止後のことを正しく理解して、今後の賢い使い方を検討してください。
ジュニアNISAの基本
ジュニアNISAとは未成年者が利用できる少額投資非課税制度のことで、2016年からスタートしました。
*1 …成年年齢の引き下げに伴い、2023年は、0歳~17歳の方が利用できます。
*2 …未使用分があっても翌年以降への繰り越しはできません。
*3 …期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)による継続保有が可能です。
*4 …2024年以降、ジュニアNISAでは、新規購入ができません。なお、2024年以降、当初の非課税期間(5年間)の満了を迎えても、18歳になるまで引き続き非課税で保有できます。
*5 …金融機関によって異なる場合がありますので、口座を開設される金融機関にお問い合わせください。
*6 …3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までの間は、原則として払出しができません。ただし、災害等やむを得ない場合には、非課税での払出しが可能です。
*7 …2024年以降には、保有している株式・投資信託等および金銭の全額について、年齢にかかわらず、災害等やむを得ない事由によらない場合でも、非課税での払出しが可能です。
出典:金融庁「ジュニアNISAの概要」
ジュニアNISAの廃止が決まったのは、2020年3月です。その前年2019年末のジュニアNISAの口座数は、20万6493口座でした。(※日本証券業協会調べ)
あまり普及が進まなかったのは、後述する「18歳になるまでの払い出し制限」が原因でした。しかし廃止が決まり、払い出し制限が撤廃されたことで、急激に注目が集まり、2022年6月末の口座数は68万8489口座と、2019年末と比べて3倍以上も増えています。
そして今年2023年がジュニアNISA口座の開設ができる最後の年となります。
NISAの年齢制限変更について
ジュニアNISA口座を開設できる対象年齢は0~19歳以下の未成年でしたが、2022年4月の民法改正で成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、対象年齢が0~17歳と変更されました。
これに伴い一般NISAとつみたてNISAの対象年齢が18歳以上となりました。
2023年1月以降にジュニアNISA口座を開設する場合、その年の1月1日の年齢が17歳以下(2022年12月まで19歳)と年齢制限が引き下げられています。
つまり、2023年1月1日の年齢が18歳の場合は成人とみなされてジュニアNISA口座は開設できず、一般NISAかつみたてNISAを開設することとなります。
ジュニアNISA廃止後、運用のルール変更点
ジュニアNISA廃止後は、払い出し制限やロールオーバーなどの運用ルールが変わります。
払い出し制限が解除
ジュニアNISAが不人気だった理由に「払い出し制限」がありました。今までのジュニアNISAは、3月31日時点で18歳となる前年12月31日まで、即ち高校3年生の12月末まで引き出すことができませんでした。
これは、ジュニアNISAが進学や就職といった子供の将来のための資産形成を目的とした制度のためでした。中長期的な資産形成を促すため、払い出し制限を設けていたのです。
もちろん、非課税期間の5年以内にジュニアNISAで保有している上場株式や投資信託を売却することもできました。非課税口座なので売却して譲渡益がある場合や配当金を受け取った場合も非課税です。しかし、その売却した株式や受け取った配当金を現金として払い出すと、遡って利益に対して課税されていたのです。この払い出し制限が2024年以降は解除されます。
高校3年生まで制限があったジュニアNISAでしたが、2024年以降はいつでも非課税で売却して現金化できるようになります。大学の進学資金としてしか使えなかった制度が高校や中学校の教育資金としても非課税で運用して使えるのです。
ジュニアNISAの利用者が増えた最大の理由は、この払い出し制限の撤廃です。
ただし売却して現金として払い出す場合、一部だけ売却して現金として払い出すことはできません。この場合、ジュニアNISAを廃止して全額を払い出す形となります。
ロールオーバーによって成人になるまで非課税で運用が可能
ジュニアNISA廃止後は、ロールオーバーによって成人になるまで非課税で運用が継続できるようになりました。
もう少し詳しく説明すると、2023年までにジュニアNISA口座で購入した上場株式や投資信託が非課税期間の5年を経過した場合でも、子供の年齢が1月1日時点で18歳になる前年12月31日までロールオーバー(継続管理勘定へ移管)して非課税で運用できるのです。
この継続管理勘定では新たな投資はできませんが、継続して非課税で運用することができ、いつでも売却して現金化することが可能です。
また、ジュニアNISAで投資できる金額は80万円までですが、ロールオーバーする際の評価額が80万円を超えていても、その全額を継続管理勘定へ移管することができます。
ジュニアNISA廃止時の年齢による対応の違い
ジュニアNISA廃止後、ロールオーバーできることは前述した通りですが、廃止される2023年12月末時点での年齢によって対応が異なります。
制度廃止時の年齢が未成年の場合、先ほど説明したように、成人になるまでロールオーバーができ、引き続き継続管理勘定で非課税での運用ができます。
しかし、制度廃止時までに成人になっている場合は、少し手続きが異なります。
制度廃止時の2023年12月末時点で18歳に到達している場合、2024年1月1日に自動的にNISA口座が開設されます。この際、一般NISAにするかつみたてNISAにするか選択することが可能です。
一般NISAを選択した場合は、今までジュニアNISAで運用してきた上場株式や投資信託を一般NISA口座へ移すことができます。よって引き続き非課税で運用できるということです。
つみたてNISAを選択した場合は、ジュニアNISAで運用してきた金融商品を移すことはできませんのでご注意ください。
制度終了後の方が使いやすくなる?賢い使い方は
制度廃止が決まってから人気が出たジュニアNISAですが、果たして今から始めるメリットはあるのでしょうか。私個人の意見としては、充分メリットがあると考えます。
その理由として次の3つを挙げます。
・家族で運用する非課税枠を増やすことができる
・ジュニアNISA廃止後も非課税で運用できるため長期投資が可能
・子供への投資教育や相続税対策にもなる
それぞれ詳しく見ていきます。
家族で運用する非課税枠を増やすことができる
例えば両親が既に一般NISA口座を保有していて非課税枠の限度額まで投資をしている場合は、非課税枠が2人で年間240万円あります。
しかし、仮に子供が2人いる場合、1人80万円の非課税枠を2人分(160万円)利用でき、家族で最大400万円まで非課税で投資をすることができるようになります。
ジュニアNISAは子供の口座ですが、親権者が代理で運用を行うため、実質家族の非課税口座といっても良いでしょう。これは子供の数が多い家族ほどメリットが大きいといえます。
今すぐに投資を考えていなくてもジュニアNISA口座を開設するだけでもしておいて、2023年中に投資できる非課税枠を確保しておいても損はないと考えます。
また、夫婦で老後の資産形成のためつみたてNISAを開設して運用している場合、投資できる対象は投資信託やETFに限られます。上場株式への投資にも興味がある場合は、両親のつみたてNISAはそのままで子供のジュニアNISAを利用して上場株式への投資をすることも可能となります。
ジュニアNISA廃止後も非課税で運用できるため長期投資が可能
ジュニアNISAを利用して投資できるのは2023年が最後となります。今年非課税枠を目一杯活用して80万円投資して、仮に10年間3%複利で運用できた場合、10年後には約108万円となります。
リスクが高めの上場株式や株式投資信託などで運用する場合、短期や中期での運用期間であれば元本割れのリスクもありますが、まだ子供が小さいご家庭などは10年以上の運用期間が確保できるので、そのリスクも多少軽減できるでしょう。
教育資金として運用する場合、リスクはあまり取りたくありませんが、外国株式のインデックスファンドと外国債券のインデックスファンドを50%ずつ投資するというポートフォリオで長期運用することも悪くはないと思います。
子供への投資教育や相続税対策にもなる
お子さまが中学生や高校生の場合、ジュニアNISA口座を一緒に開設して、投資する商品も一緒に選択することで子供への投資教育にも繋がるでしょう。金融教育の一環として子供に投資先を選ばせても良いかもしれません。
非課税枠80万円を子供に贈与しても贈与税の非課税枠(年間110万円)の範囲内です。子供が2人いれば年間160万円を非課税で子供に贈与できるので将来的な相続対策にも繋がります。
両親からの贈与ではなく祖父母からの贈与を視野に入れても良いでしょう。相続税対策が必要な場合、孫へ非課税の範囲内で資産を移転することもジュニアNISAでは可能です。
まとめ
今回は2023年で廃止となるジュニアNISAの活用方法について解説しました。特に以下の点について理解を深めていただければと思います。
・ジュニアNISAは廃止が決まってから注目され始めた
・ジュニアNISA廃止後は、払い出し制限が撤廃される
・制度終了後も成人するまで非課税で運用を継続できる
・制度終了後の方が使い勝手が良くなる
・ジュニアNISA口座開設は今年がラストチャンス
2023年12月末でジュニアNISAは廃止され、2024年から新しいNISA制度が始まります。非課税投資枠は、一般NISAが今の2倍の年間240万円、つみたてNISAは3倍の年間120万円に増えます。さらに一般NISAとつみたてNISAの併用が可能となり、NISA制度は恒久化され非課税の保有期間も無期限になる予定です。恒久化された後の生涯投資枠は買い付け残高で1800万円となり、評価益は含みません。
※自民、公明両党が12月16日に発表した2023年度与党税制改正大綱による(非課税投資枠は、今後変更されることもあります)
今後ますます子供への金融教育、投資教育が必要となってきます。子供と一緒に投資を勉強する機会を、ジュニアNISAを通じて作ってみてはいかがでしょうか。将来子供に「おまえの大学資金は投資で賄ったんだ」と言えるようになるといいですね。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。
ジュニアNISAについてのQ&A
Q.子供の名義で証券口座を開設したいと考えていますが、ジュニアNISA口座も作ったほうがいいでしょうか。
A.ジュニアNISA口座では、上場株式や投資信託が購入できます。子供名義の証券口座を作るのであれば、同時にジュニアNISA口座も開設されると良いでしょう。非課税期間は5年ですが、ロールオーバーもでき子供が成人するまで非課税で運用することができます。
Q.ジュニアNISAが廃止された後、運用してきた資産は課税口座へ移行されることもあるのですか。
A.ジュニアNISA廃止時に子供が成人の場合、NISA口座が自動的に開設されます。一般NISAを選択すると引き続き非課税で運用できますが、つみたてNISAを選択した場合、今までジュニアNISAで運用してきた金融商品は課税口座(特定口座)へ移管されることになります。