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33年ぶり高値の日経平均。初心者が今株式投資を始める注意点は?

経済とお金のはなし 山下 耕太郎

33年ぶり高値の日経平均。初心者が今株式投資を始める注意点は?

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2023年5月に入って日経平均株価は3万円台を回復し、約33年ぶりの高値を更新しました。この記事では、日経平均株価が上昇している理由と、今回のような高値で株式投資を始めるときにどのような点に注意すればいいのかについて解説します。

日経平均株価とは

日経平均株価は日本を代表する株価指数で、東京証券取引所のプライム市場に上場している約2000銘柄の中から、市場の流動性が高い225銘柄の株価をもとに算出。そして、東証で株式が売買されている時間帯(9~15時)に、5秒間隔で算出・配信されます。

日経平均株価の構成銘柄は、年に1回(原則10月上旬)、定期的に入れ替えを行います。定期見直しでは、市場の流動性や6つのセクター(テクノロジー、金融、消費、素材、資本財・その他、運輸・公共)のバランスなどを考慮して決定します。そして、市場流動性が高い銘柄を組み入れ、市場流動性が低い銘柄を除外するのです。また、定期見直し以外にも構成銘柄が上場廃止になるなど不測の事態が発生した場合、臨時的に入れ替えを行います。

日経平均株価は、日本の株式市場を代表する指数として、広く利用されています。また日本の経済状況を示す指標にもなっています。

日経平均株価の推移

株価の推移
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5月29日、日経平均株価は3万1500円台まで上昇し、バブル期の1990年7月以来、約33年ぶりの高値となりました。ちなみに日経平均株価が3万円を初めて超えたのは1988年です。1985年のプラザ合意に伴うドル高是正のための協調合意で、日銀は公定歩合を引き下げ、円高を回避しました。これが地価や株価が高騰する「バブル経済」の引き金となり、日経平均株価は1988年12月に初めて3万円の大台に乗ったのです。

日経平均株価の史上最高値は、1989年12月につけた3万8915円。しかしその後のバブル崩壊によって価格は下落します。2008年9月には米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻を契機に、連鎖的に金融・経済危機が世界中に広がりました。そして、2009年3月にはバブル後の最安値となる7054円をつけたのです。

このデフレ経済からの脱却を目指し、2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣は大胆な金融緩和を中心とした経済政策「アベノミクス」を推進。そして2013年3月に黒田氏が日銀総裁に就任し、「黒田バズーカ」と呼ばれる大規模な金融緩和策を打ち出しました。

こうして2019年末の日経平均株価は2万3656円まで上昇しましたが、2020年3月のコロナショック時には1万6000円台まで下落しました。しかし、その後、各国の大規模な金融緩和や財政政策により株価は急反発し、2021年9月にはバブル崩壊後の最高値となる3万670円まで上昇します。

2022年に入ってロシアのウクライナ侵攻や米国の利上げにより日経平均株価は下落しましたが、2023年に再び高値を更新しているのです。

海外投資家が日本株を買う理由

投資家
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投資部門別の売買動向を見ると、日本株の値動きの要因は外国人投資家の存在が大きいことが分かります。バブル崩壊後、タイミングよく日経平均が上昇したのは、外国人投資家の資金によるものでした。アベノミクス相場が盛り上がった2013年には買い越し額が15兆円を超え、過去最高を更新しました。1982年から東証は集計を始めましたが、これまで最高だった2005年の10兆3219億円を大きく上回ったのです。

今回外国人投資家が日本株を買っている主な要因は、以下の通りです。

1.日本の株価が低水準で放置されている
2.日本銀行の異次元金融緩和が当面続くと予想されること
3.東京証券取引所が株価純資産倍率(PBR)1倍を下回る上場企業に対する改善策を要求したこと

日本株の今後の展開は、海外投資家の動向次第です。ただ、短期的な視点で取引を行う投資家は、一定の利益が出た時点で、保有する日本株を売却する可能性があります。そのため、一直線に上昇し続けるという展開は考えにくいと思います。

外国人投資家が中長期的に日本株を購入するためには、日本企業の成長戦略が問われることになります。成長への取り組みを強化する企業もありますが、全体としてはまだ市場のごく一部に過ぎません。外国人投資家は、日本企業の成長性を重視して投資を行っています。そのため、成長戦略がない企業は、外国人投資家から敬遠されることになります。

日本企業が成長戦略を策定して実行し、外国人投資家からの評価を高めることができれば、日本株のさらなる上昇につなげることができるでしょう。

個人投資家も日本株を買っている

日本の個人投資家は、長い間、日本株の「売り手」でした。バブル崩壊後も、株価が回復すると塩漬けにしていた株を売り続けていたからです。しかし、2021年、2022年と2年連続で個人が株を買い越すという、個人投資家の投資行動に変化が出始めています。これは、少額投資非課税制度(NISA)による資産形成が若い世代に定着し始め、株式投資の裾野が広がっていることが大きな要因と考えられます。

さらに、日本企業の自社株買いは2009年度を底に増加傾向にあり、2022年度には9兆円を超え、2021年度比34%増となりました。日本企業は欧米企業に比べ、株主還元が少ないといわれていますが、最近では、東証がPBRの低い企業に対して是正勧告を出し、株主還元を高める企業も増えています。

「貯蓄から投資」へと日本人の行動が変われば、日本の個人投資家も日本株を買い始め、日経平均株価はバブル時の最高値を目指す展開もあるでしょう。ただ、投資にはリスクもあるので、必ず余裕資金で運用することが大切です。

日経平均株価に連動するインデックスファンドを購入する

インデックスファンド
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日経平均株価は、投資信託(インデックスファンド)を利用して購入することもできます。インデックスファンドとは、特定の指数(株価指数や債券指数など)に連動するように運用される投資信託です。インデックスファンドは、インデックスに含まれる銘柄のすべて、または大部分を含み、インデックスの値動きに連動するように運用されます。したがって、インデックスファンドに投資することで、指数に連動したリターンを得ることができます。

インデックスファンドは手数料が安く、幅広い銘柄に分散投資できるなどのメリットがあります。そのため、初心者や長期投資に向いているのです。日経平均株価を対象にしたインデックスファンドで純資産残高が最も大きいのは、「日経225ノーロードオープン」の約2000億円です。ネット証券を利用すれば100円からインデックスファンドを購入できます。

ただ、2023年5月末現在、日経平均株価は33年ぶりの高値圏にあるので、まとまった金額での購入は避けた方が良いでしょう。つみたてNISA(少額投資非課税制度)などを利用し、少額から積立投資で購入することをおすすめします。

※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。