10年前にあの株買っていたら今いくら?激アツ銘柄の株価を検証
監修・ライター
誰でも一度は「もしあの時に戻れたら」と考えたことがあるのではないでしょうか?過去の出来事や選択を変えることができるとしたら、人生はどのように変わっていたのか、どんな可能性が待っていたのかを思い描いたことが、きっと誰にでもあるはずです。
この「もしも」を資産運用に当てはめた場合、10年前に今上昇している株や投資信託を購入していたら、そこから10年後である私たちの「いま」はどのように変わっていたのでしょうか?今回は、そんな「もしもの世界」に思いを巡らせ、10年前の株式市場での購入が私たちにもたらす可能性について考えてみたいと思います。
10年前に戻ったらどの株・投資信託を買うか
はじめに、10年前に戻ったらどの銘柄を買うのかを考えてみます。世界中の市場を探せば、この10年で株価が1000倍以上になっているようなものも見つかるかもしれませんが、それを買ったらどうなるのかを考えるのはあまり現実的ではありません。
そこで、実際にあり得そうな以下の4パターンで、10年前に買っていてもおかしくなさそうな銘柄を考えてみます。ちなみに、①~③までは投資信託、④のみが個別銘柄となります。
① 日経225
② バンガード・トータル・ワールド・ストックETF
③ S&P500
④ 5大商社
①日経225
日経225とは、日本経済新聞社が算出・公表している日本の株式市場を表す最も代表的な株価指数のことで、日経平均株価(日経平均)とも呼ばれています。
日経平均株価は毎日TVや新聞でも報道されていますから、株式投資がはじめての方にとっても身近に感じられるのではないでしょうか。
この日経225に連動した投資信託を、10年前に購入した場合どうなるのかが、パターン①です。
②バンガード・トータル・ワールド・ストックETF
バンガード・トータル・ワールド・ストックETFとは、新興国を含む世界47カ国の株式に分散投資ができる投資信託のことで、「VT」という略称で呼ばれることもあります。
日経225が国内市場の株式のみを対象にしているのに対し、VTは世界各国が対象です。特定の国の状況に関係なく世界経済全体の発展に応じたパフォーマンスが得られるため、日本でも多くの個人投資家から支持されています。
これを10年前にドル建てで買ったらどうなるのかが、パターン②です。
③S&P500
S&P500とは、「スタンダード・アンド・プアーズ500種指数」の略称で、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出している、アメリカの代表的な株価指数のことです。
日経225の米国版のようなものだと考えていただけば、イメージしやすいと思います。②のVTと比べると対象が米国市場に限られるためリスクは高くなりますが、世界経済をけん引している米国市場のリターンのみを抽出して得ることができます。
このS&P500に連動した投資信託を、10年前にドル建てで購入したらどうなるのかが、パターン③です
④5大商社
最後は、投資信託でなく個別銘柄です。普通の人が普通に株式を購入する場合、リターン率の高さよりもリスクを抑えようとする力の方が強く働くはずです。
したがって、旧東証一部の上場企業の中でも時価総額が特に大きな企業を対象としたプライム市場から選択します。
ここでは、「投資の神様」として有名なウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ社も所有している日本5大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)を10年前に購入した場合どうなるのかを、パターン④として考えてみます。
なお、10年前に投資する金額はそれぞれ100万円とし、パターン④で投資する5大商社に関しては、それぞれ20万円ずつ投資したものとします。また、ドル円のレートに関しては、10年前の2013年7月11日が99円、10年後の2023年7月11日を141円とします。
日経225、ETF、S&P500、5大商社…4つの銘柄に投資していたら10年後どうなってた?
では、実際に上述の4パターンで投資した場合、10年後にどうなるのかを見てみましょう。なお、検証にあたっては、配当金や信託報酬等は考慮しないものとします。
①もし10年前に日経225を買っていたら
はじめに、日経225の10年分のチャートを見てみます。下図をご覧ください。
図では分かりにくいのですが、10年前の日経225が1万3388円なのに対し、10年後の終値は3万2190円となっています。
したがって、10年前にもし日経225に連動した投資信託を購入していた場合の現在価格は、以下のようになります。
- 10年後の日経225・・・100万円×3万2190円÷1万3338円≒241万3405円
「日本企業は収益性が悪い」と言われることもありますが、この10年で株価が約2.5倍に増えていることが分かります。
②もし10年前にバンガード・トータル・ワールド・ストックETFを買っていたら
次は、バンガード・トータル・ワールド・ストックETFです。
10年前の終値が52.84ドルなのに対し、10年後の終値は96.1ドルとなっています。
また、ドル円レートがこの10年の間に99円から141円と円安方向にシフトしていることから、10年前にバンガード・トータル・ワールド・ストックETFを購入していた場合の現在価格は、以下のようになります。
- 10年後のバンガード・トータル・ワールド・ストックETF・・・100万円×(96.1ドル÷52.84ドル)×(141円÷99円)≒259万266円
③もし10年前にS&P500を買っていたら
次は、S&P500です。
10年前の終値が1632.97ポイントだったのに対し、10年後は上図のように4410ポイントとなっています。したがって、為替の変動も考慮に入れた上で、10年前にS&P500を購入していた場合の現在価格は、以下のようになります。
- 10年後のS&P500・・・100万円×(4,410ポイント÷1632.97ポイント)×(141円÷99円)≒384万6310円
①もし10年前に5大商社を買っていたら
最後は、5大商社です。それぞれ20万円ずつ買っていたものとして、計算してみます。まずは三菱商事です。
10年前の終値が1842円だったのに対し、10年後の終値は上図のように6862円です。したがって、10年前に20万円購入していた場合の現在価格は、以下のようになります。
- 10年後の三菱商事・・・20万円×6862円÷1842円≒74万5059円
次は三井物産です。
10年前の終値が1369円、10年後が5157円であることから、同様の計算を行うと以下のようになります。
- 10年後の三井物産・・・20万円×5157円÷1369円≒75万3396円
次は伊藤忠商事です。
10年前の終値が1114円、10年後が5524円であることから、同様の計算を行うと以下のようになります。
- 10年後の伊藤忠商事・・・20万円×5524円÷1114円≒99万1741円
次は、住友商事です。
10年前の終値が1246円、10年後が2954円であることから、同様の計算を行うと以下のようになります。
- 10年後の住友商事・・・20万円×2954円÷1246円≒47万4157円
最後は丸紅です。
10年前の終値が716円、10年後が2395円であることから、同様の計算を行うと以下のようになります。
- 10年後の丸紅・・・20万円×2395円÷716円≒66万8994円
これらの結果をまとめると、以下のようになります。
- 10年後の5大商社・・・74万5059円+75万3396円+99万1741円+47万4157円+66万8994円=363万3347円
今株価が上がっている株を10年前の株価と比較してみる
それでは最後に、今上がっている銘柄を10年前に買ったと仮定すると、それぞれいくらになったかを比較してみます。
- 1位:S&P500・・・384万6310円
- 2位:5大商社・・・363万3347円
- 3位:バンガード・トータル・ワールド・ストックETF ・・・259万266円
- 4位:日経225・・・241万3405円
1位はやはりS&P500でしたが、特筆すべきは5大商社の値上がり率の凄さです。S&P500やバンガード・トータル・ワールド・ストックETFの運用益のかなりの部分は円安による為替差益が占めていますが、そのような差益とは関係ない国内の商社でありながらこれだけ順調に株価を上げることができるとは驚きです。
さすが、ウォーレン・バフェット氏が選んだ銘柄だけのことはあります。
反対に最下位は、やはり一番ボラティリティが低そうな日経225となりました。しかし、世界市場を対象にしたバンガード・トータル・ワールド・ストックETFと比べてみると決して悪い数字ではありません。
ちなみに5大商社を除くと、残りの3つは多くの一般投資家から投資先として選択されているもので、特段珍しいものではありません。
この10年で多くの日本人の所得は実質的に減少し続けていますが、今回の検証結果から、一般的に広く知られている手法で株式投資を行った投資家の多くは、恐らく金融資産を増やしたのではないかと思われます。
少なくともこの10年間に限って言えば、株式投資を行った人とそうでない人との間で、所有する金融資産に大きな差が生じることになったのではないかと推測されます。
まとめ
今回は、株式投資における4種類の銘柄(投資信託3つ、個別銘柄の購入1つ)を用い、10年前に遡ってその銘柄を購入していた場合のパフォーマンスにどれくらいの違いが現れるのかを比較してみました。
幸い今回の場合はどの手法を用いてもプラスになっていましたが、資産運用にはマイナスになるリスクも付き物です。株式投資を行う際には、ご自身で許容できる範囲内にリスクをコントロールするように心がけてください。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。