年金の繰り下げ受給で配偶者の加給年金がなくなる!?受給額への影響は
今回の「FPに聞きたいお金のこと」は公的年金を繰り下げして、将来増えた年金を受け取りたいと考える50代男性からの相談です。配偶者がいるため加給年金が支給されるようですが、繰り下げをした場合はどうなるのか気にされています。加給年金も増額されるのか、先にもらうほうが有利か?まさか、加給年金が無くなるということはないですよね…?さっそく見て行きましょう。
50代男性Fさんからの相談
年金受給を一年繰り下げて66歳から受給しようと考えていますが、5歳年下である配偶者の加給年金はどうなるのでしょうか? 老齢年金同様、年間で8.4%増額されるのでしょうか? それとも加給年金だけ65歳から受給できるのでしょうか?
加給年金とは
年金を繰り下げる場合、加給年金はどうなるか、というご質問ですね。まずは、加給年金がどのような性質か知っておくことが大切なため、そこから確認していくことにしましょう。
加給年金とは、文字通り「加えて給付」される年金で、厚生年金(老齢厚生年金)の上乗せ分として支給されます。受給できるのは、厚生年金に20年以上加入していた人です。その人が厚生年金を受け取れる65歳になった時に、65歳未満の配偶者がいる場合に受け取れます。受給額は、年間39万7500円(令和5年度)です。なお、扶養する子がいる場合も支給されますが、ご質問内容から離れるためここでは触れません。
受給開始年齢を繰り下げた時、配偶者の加給年金はどうなる?
年金は1カ月繰り下げると0.7%ずつ増額され、増えた年金が一生受け取れることから、人生100年時代の今、Fさんのように関心を寄せる方が増えています。1年繰り下げて66歳から受け取ると、年金は8.4%増え、70歳から受け取るなら42%増です。最長75歳まで繰り下げられ、その場合、84%が一生涯上乗せされることになります。
では、繰り下げた場合の加給年金はどうなるのでしょうか。実は、残念なことに全く増えません。増えないばかりか、繰り下げ中は支給すらされないのです。前述のように、加給年金は、厚生年金を受け取る時に扶養される者がいる場合に受け取れる、という厚生年金とセットの年金です。繰り下げをする人は、言ってみれば、厚生年金を受け取らなくても生活ができる、ということでもありますので、扶養者の生活を支える加給年金も必要ないと判断されるわけです。Fさんの配偶者は5歳年下ということですから、仮に70歳まで繰り下げた場合に受け取れなくなる加給年金の総額は、200万円(約40万円/年×5年)ほどになります。悩ましいですね。
繰り下げても加給年金を受け取る方法
ただ、年金を繰り下げしながら加給年金を受け取る方法もあります。意外と見落としがちですが、年金は国民年金と厚生年金を別々に繰り下げることができます。つまり、国民年金だけ繰り下げをして、厚生年金は、繰り下げずに65歳から受け取るということもできるわけです。
繰り返しになりますが、加給年金は、65歳になって“厚生年金”を支給される人に支払われるものです。つまり、国民年金を繰り下げても、厚生年金を通常通り65歳から受け取るならば、なんら加給年金には影響しません。
夫婦で年金の受け取り方を考える
とはいえ、厚生年金を繰り下げられないことを残念に思うことでしょう。その場合、国民年金を最初に予定していた年齢より長く繰り下げることで、ある程度カバーするという考え方もあります。
これまで筆者が相談者と接する中では、加給年金を受け取ることを優先し、国民年金のみ繰り下げることを希望する方が多い印象です。また、一般に女性の方が長生きです。Fさんの配偶者は5歳年下でもありますので、Fさんが厚生年金を繰り下げない代わりに、奥様の国民年金を繰り下げることで受取総額が結果的に多くなる可能性もあると思います。
まとめ
低金利で長寿化の今、1年繰り下げただけで8.4%も年金が増えるのは魅力的です。寿命は誰にも分からないため損得は言い難いですが、得することより、安心して生活が送れる方法を第一にご夫婦で年金の受け取り方を検討してみてください。