新NISAはもうすぐ!つみたて枠と成長投資枠の上手な使い分け方法は
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今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、新NISAがはじまるにあたり今までの積立方法をどのように見直すべきか?という20代女性からの相談です。
20代女性Sさんの相談内容
積立投資を月5万円しています。今まではつみたてNISA3万円+特定口座2万円の積立でしたが、来年1月から新NISAがスタートするということで、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の配分について迷っています。月々の金額を変えるつもりはないですが、成長投資枠とつみたて投資枠、どのような基準で分けたら良いでしょうか。「こういう目的で貯めている資金はこっちの枠がおすすめ」などがあれば教えてください。
新NISAでも「つみたて投資に5万円」のスタンスでOK
まず整理しますと、Sさんは既にNISA口座を開設し、「つみたてNISA」を行っています。現行のつみたてNISAは年間40万円が上限であるため、毎月の積立額を3万円とし、それ以外は特定口座で2万円の積立を行っているとのこと。20代女性で毎月5万円の積立、しっかり将来に備えた積立投資ができていますね。
相談内容から具体的な投資対象は分かりませんが、つみたてNISAは販売手数料がかからず、信託報酬(維持費)も低めの投資信託が対象です。世界株や米国株などの指数に連動するインデックスファンドなどが人気です。
一方、特定口座でもつみたてNISAと同じファンド、または同様のファンドを積み立てることもできます。もし、特定口座分がつみたてNISAと同じファンド、または同様のファンドであれば、新NISAスタート後は、5万円まとめてつみたて投資枠を活用するのが良さそうです。つみたて投資枠は年間120万円まで枠が拡大しますので、5万円にまとめることができます。月10万円まで積立を行うことも可能ですが、無理をして活用する必要はありません。
おそらく現状は「毎月5万円を投資に回すのが適当」と判断した上で積立を行っているのだと思います。預貯金や保険など、その他の資産とのバランスを取る必要もありますので、しばらくは、「つみたて投資枠で5万円の積立」という現在の投資スタイルを継続で良いと思います。
投資の見直しタイミングは収入やライフスタイルの変化時
新NISAは非課税枠が拡充する上に、つみたて投資枠と成長投資枠が併用できるようになり、非課税期間も恒久化されるなど一段と魅力的な制度になります。しかし、それに合わせて投資額を増やしてしまうと、いざという時の現預金が少なくなってしまったり、リスクの取り過ぎで相場下落の時に大きな損失につながったりということも考えられます。
新NISA開始後も慎重に冷静に対応してください。見直すタイミングとしては、収入に大きな変動があった場合や結婚・出産など生活環境が大きく変わる時があげられます。Sさんの場合、まだつみたて投資枠を使い切っていませんので、収入が増えて余裕が生まれたら、月額10万円を意識し少しずつ積立額を増額できるといいですね。
成長投資枠の上手な活用方法とは?
今回の相談者Sさんのように、現行NISAにおいて「一般NISA」と「つみたてNISA」が併用できないこともあり、つみたてNISAを選んでいる人が多いと思います。その点、新NISAではこれまでの一般NISAの位置づけにあたる成長投資枠が併用できることになるため、この成長投資枠をどのように活用すべきか?投資対象を選ぶ際に注意することは?と気になっている人も多いと思います。
Sさんのように若い方や投資初心者の方は以下のような活用はいかがでしょうか。
① 少額で個別株投資を始める
② 株主優待目当てで個別株を選んで投資してみる
③ 夏・冬の賞与時に「つみたて投資枠」とは少しタイプの違うファンドを購入する
④ 相場全体が大きく下落している時に余裕資金で追加投資をする
これまでつみたてNISA中心の方は個別株への投資経験がないという方も多いでしょう。そこで成長投資枠を活用して、個別株投資をはじめてみるのも1つだと思います。投資信託よりもリスクがある分、大きなリターンも期待できます。気になる企業や応援したい企業の業績や財務内容などを調べ、無理のない金額で購入することでより投資全般の知識や経験も高まり、今後の資産運用を行う上でもプラスに働きそうです。投資信託にはない株主優待を目的に個別株投資をはじめるのも良さそうです。
また、年に数回、賞与などまとまった資金を投資に回せる場合は、つみたて投資枠とはややタイプの違うファンドを購入するのもおもしろいでしょう。例えば、つみたて投資枠は世界株や米国株が中心であれば、成長投資枠で新興国株式ファンドを買うといった具合です。欧米などの先進国に比べると、アジアをはじめとした新興国は今後の将来性、潜在成長力が高いと言われています。つみたて投資枠でカバーできていない国や地域、あるいはREIT(不動産投資信託)なども候補にすると良さそうです。
それ以外の活用方法として、低リスクの運用で成長投資枠を活用するという方法も考えられます。例えば「2~3年後の結婚式に使うかもしれない、でも銀行預金に置いたままにしておくのももったいない」といった場合です。数年以内に使う可能性があるので、それほど大きなリスクを取ることはできません。そこで、先進国債券など比較的リスクの低い投資対象を中心としたファンドを購入し、預貯金の金利より少しでも有利な運用を目指してみてはいかがでしょう。
成長投資枠の手数料も考え方次第
新NISAのつみたて投資枠も販売手数料無料(ノーロード)のファンドが対象となります。よって、これまでつみたてNISAの活用が中心だった人で、新NISAの成長投資枠でファンドや個別株投資をする際は手数料についてあらかじめ確認しておいてください。
そして、あえて違う目線で「手数料に注意」してほしいことがあります。それは「手数料が高いと感じて投資対象の候補から外していたファンドもちゃんと冷静に検討してみる」ということです。手数料無料に慣れているので、手数料が高いと感じることもあるでしょう。ただ、その分、高いパフォーマンスを誇っているアクティブファンドである可能性もあります。できるだけコストを抑えて投資をすることは大事なことですが、コストに過敏になり、せっかくの投資機会を逸したり、良いファンドを外したりというのはやや本末転倒のような気がします。
それぞれの投資スタイルを重視して
Sさんはまだ20代です。今後様々なライフイベントが待っています。よって、つみたて投資枠は老後資金、成長投資枠はそれ以外の資金準備という具合に明確に分けておくと良さそうです。そして成長投資枠は本文中でも紹介しましたように、つみたて投資枠とはタイプの違うもの、ややリスクが低いものなど目的に応じて複数に分けておくことでリスク管理もできます。
新NISAになり随分使い勝手が良くなりますが、制度面ばかりに目を向けるのではなく、「余剰資金で長期分散投資」といった基本をしっかり守りながら、上手に新NISAと付き合ってください。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。