自宅を手放すなら売却?それとも賃貸?費用と収益はどう違う?
自宅を手放す際、売却するか賃貸に出すかは悩ましいところです。
手放そうとする理由は人それぞれ。念願のマイホームを購入したけれど急に転勤の辞令が出てしまった場合や、子ども部屋を作っていたけれど、子どもたちが独立して部屋が余り夫婦二人には広すぎるといった場合。年老いた親御さんと同居することになったが間取りが狭い場合など、事情はいろいろあるでしょう。
そこで今回は、自宅を売却する場合と賃貸にする場合のメリットやデメリット、またどのような基準で判断すれば良いのかについてポイントをまとめました。自宅を手放すと決めたものの、売却するか賃貸にするか迷っている方はぜひ最後までお読みください。
自宅を売るメリット・デメリット
自宅売却のメリットは管理コストがかからない点です。
自宅を賃貸に出す場合、継続して管理する手間やコストがかかります。入退去などの際、不動産会社とのやりとりも面倒になるでしょう。広告宣伝費や部屋のクリーニング代などコストもかかります。
しかし自宅を売却するとそのような管理コストは一切ありません。管理しなくて良くなることは大きなメリットといえるでしょう。
また、自宅を売却する一番のメリットは、まとまったお金が入るということです。
最近の不動産価格市場は、上昇傾向にあります。2023年9月に発表された基準地価の全国平均は、住宅地や商業地など全用途で2年連続プラスでした。自宅のポストに「売却してほしい」という不動産会社からのチラシ投函が最近増えてきたという話も良く聞きます。
自宅売却を迷っている方は一度不動産会社に相談して査定をしてもらってください。
しかし住宅ローン返済中の人はご注意ください。
自宅売却は、住宅ローンを完済しなければできません。売却したお金で住宅ローンの残債を返済できれば良いのですが、売却価格がローンの残債を下回った場合、その差額を手出ししなければいけない点はデメリットになり得ます。
他にもデメリットとして、長年住んだ思い出のある自宅を手放してしまうということです。賃貸に出した場合、また自宅として住むことができるという選択肢が残されていますが、一度売却してしまうとそうはいきません。家族との思い出も一緒に手放すことになります。
自宅を貸すメリット・デメリット
自宅を貸す場合のメリットは、何といっても家賃収入が得られるということです。
継続的にお金が入ってくるということは今後の人生において大きなメリットといえるでしょう。しかし、入居者が決まらないと家賃収入は入ってきません。この空室のリスクは逆にデメリットともいえます。
空室のリスクもありますが、継続的に家賃収入が得られる不動産所得は、れっきとした資産運用です。売却して一時的に入ってくるお金と、賃貸にして継続的に入ってくるお金の違いは後述しますのでそちらもご参照ください。
またもう一つのメリットは、自宅を手放さずに済むということです。長年住んできた思い出のある自宅を手放すのは少し寂しい気持ちになりますね。賃貸の場合は、いずれまた住みたくなったときに自宅に戻ることができるのでこの点もメリットといえるでしょう。
一方、自宅売却時のメリットで紹介した管理の手間やコストが、賃貸の場合だとデメリットになります。この点は、良い不動産会社とお付き合いできるとクリアできる可能性がグッと上がります。多少のコストはかかりますが管理をお任せできるので、その手間とコストはさほど気にならないでしょう。
売る場合と貸す場合にかかる費用
まず売る場合の費用には以下のようなものがあります。
「仲介手数料」:売買をお願いした不動産会社に支払う手数料
「登記変更費用」:登記変更をお願いした司法書士に支払う報酬や登録免許税
「収入印紙」:売買契約書に貼る収入印紙(印紙税)
「税金」:譲渡所得にかかる所得税や住民税
(住宅ローン返済中の場合)
「一括返済手数料」:金融機関に支払う一括返済手数料
貸す場合の費用については以下のようなものがあります。
「初期費用」:部屋のクリーニング代、水回りなどのリフォーム工事費用
「広告宣伝費」:入居者募集をお願いする不動産会社に支払う手数料
「集金代行費」:家賃の集金や滞納の際の催促を不動産会社に代行してもらう場合にかかる費用
「税金」:固定資産税、都市計画税
「修繕積立金・管理費」:マンションの場合にかかる費用
「保険料」:建物の火災保険や地震保険
皆さんが気になるのは、それぞれどれくらいかかるのか、売るのと貸すのとではどちらが得なのかということではないでしょうか。詳しくは次の章でみていきます。
売る場合と貸す場合の収益の比較
自宅を売却した場合と賃貸にした場合、具体的に収益はどのくらい違うのか比較してみます。
(前提条件)
・築45年某中古マンション(間取り3LDK、約80平米)
・売買相場:2500万円
・家賃相場:12万円/月
・維持費:修繕積立金1.5万円/月、管理費1.2万円/月、固定資産税10万円/年
・住宅ローン残債なし、賃貸に出す場合のリフォーム代なし(比較しやすくするため今回は費用を省略しました)
・売却時の「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」適用で課税なし
・売却時の司法書士報酬や印紙代など約10万円
売却する場合
売却する場合かかる費用には仲介手数料があります。この仲介手数料は「売却価格×3%+6.6万円(税込)」となっているので、この物件の場合は以下のようになります。
2500万円×3%+6.6万円=81万6000円
更に司法書士報酬や税金がかかるので手元に残るお金は
2500万円-10万円-81万6000円=【2408万4000円】…(A)
となります。
賃貸に出す場合
一方、賃貸の場合は1年間で144万円の家賃収入があります。この家賃の集金等の実務を不動産会社に代行してもらう場合の手数料相場は家賃収入の3~5%ほどです(ここでは3%で試算)。その他、マンションの管理費や税金などの維持費が年間42万4000円かかります。
差し引きすると年間に得られる不動産所得は、
144万円-4万3200円-42万4000円=【97万2800円】/年…(B)
売却の場合の(A)と賃貸の場合の(B)を比較すると、損益分岐点は約25年となります。しかし、現実はこのようにはいきません。売却したい場合、2500万円を希望していても1~2割は値引き交渉が入ることが多く、なかなか希望通りの価格では売却できないこともあります。また、賃貸の場合も家賃相場が下落することもあれば上昇することもあります。また空室リスクもあるので、この事例はあくまでも参考程度としてご理解ください。
迷ったときの判断ポイント
今まで見てきたように、自宅を売却する場合と賃貸に出す場合にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
どちらにするか迷ったときに判断するポイントの一つに、金銭的にどちらが得かという視点があります。
・具体的に売却した場合はいくらになるか
・賃貸にした場合は諸経費を差し引いて毎年どれくらい不動産所得を得られるか
を比較すると良いでしょう。
またもうひとつ忘れてはいけない視点が、次の住まいをどうするかです。
自宅を売却するか賃貸に出した後、あなた自身が次の住まいを購入するのか賃貸にするのかでも今後のお金の流れは大きく変わります。
よって売却か賃貸かは総合的に考えるようにしてください。