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2023年のお金に関するトピックまとめ。注目の2024年はどうなる?

そなえる 権藤 知弘

2023年のお金に関するトピックまとめ。注目の2024年はどうなる?

【画像出典元】「Jo Panuwat D/Shutterstock.com」

皆さんにとって2023年はどんな年だったでしょうか?

2022年は利上げやインフレ、ロシアとウクライナの戦争に、2020年から引き続き新型コロナウイルス感染症拡大など、さまざまな出来事がありました。その影響が2023年も続き、イスラエルとパレスチナとの紛争も新たに発生しています。

世界のグローバル化が進み、日本もその影響を色濃く受けています。今回は2023年のお金のトピックを、グローバル化の影響を頭の片隅に置きながら振り返っていきましょう。

電気代、ガス代の値上げ

2022年の年末から2023年の初頭にかけて大幅に値上げされた電気代ですが、2023年を通じてもその傾向に変化はありませんでした。産油国の減産や円安の影響もあり、石油やガスなどの仕入れ値は引き続き高騰し、電気代はその影響で高値を継続しています。そのため2023年1月から電気事業者やガス事業者に対して国が補助金を出し、各家庭や企業の電気代やガス代を抑える施策を行いました。

少し落ち着きを取り戻した電気代やガス代ですが、2023年6月から再度値上げされています。政府も各種の激変緩和措置を行っていますが、2024年以降も電気代が高止まりする傾向は続きそうです。

ガソリン代補助、2024年3月まで延長中

産油国での減産や、ロシアとウクライナの戦争の影響が大きかったのがガソリン代です。今の調査方法が採用された1990年以降で、2023年は最高値を記録しました。円安の影響もあり、レギュラーガソリンの価格は1Lあたり190円に届きそうな勢いでした。そこで政府は石油元売り各社に補助金を出し、販売価格を抑制する方向で動きました。

2023年9月までだった補助金の期限が延長されるか注目されましたが、2024年3月まで延長されることになりました。原油価格が下がったり、円高になったりすればガソリン価格も下がるでしょうが、今のところその見込みは薄いと思います。

インボイス制度がスタート

2023年10月からインボイス制度が導入されました。2019年10月1日から、消費税及び地方消費税の税率が8%から10%へ引き上げられ、この税率引き上げと同時に消費税の軽減税率制度が導入されました。そのため、現在は2種類の消費税率が存在しています。インボイス制度は、複数の税率に対応した消費税の仕入れ税額控除の方式です。このインボイス制度の影響を特に受けるのは、これまで売上1000万円以下で免税事業者だった個人事業主や法人です。事業者によっては、仕事の取引や報酬が減る可能性も指摘されています。

出産一時金が50万円に増額

出産育児一時金は、出産時に公的医療保険制度から提供される支援金で、出産に伴う費用を軽減するための制度です。

出産一時金は健康保険法などに基づき、健康保険や国民健康保険に加入する被保険者や被扶養者が出産した場合に支給されます。通常、ケガや病気による入院費用は健康保険でカバーされ、患者は負担割合を支払いますが、出産はケガや病気とは異なり、健康保険の対象外です。そのため、出産に伴う費用は基本的に自己負担となりますが、出産育児一時金を受けることでこの負担が軽減されます。

この出産育児一時金は過去に何度か増額されており、2023年4月から8万円増額され、2023年4月以降の出産に関しては42万円だった支給額が50万円になりました。

割増賃金率&最低賃金のアップ

賃上げ
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2023年4月1日から、中小企業を対象に法定の時間外労働の割増賃金率が一部変更され、月間60時間を超える時間外労働に関する割増賃金率が50%以上に引き上げられました。 この割増賃金率の引き上げは、2008年12月に法令が公布され、2010年4月に施行された労働基準法の改正の一環です。

具体的には、月間60時間を超える時間外労働に関する割増賃金率が、従来の25%以上から50%以上に引き上げられました。(大企業は2010年4月以降既に実施済)ただし、中小企業については、この変更がもたらす影響や費用負担の大きさが考慮され、適用が延期されていました。今回の変更は、この延期期間が終了したために実施されたものです。

また10月から各都道府県で最低賃金が39~47円引き上げられました。この引き上げにより、全国の平均時給は初めて1000円台を突破し、1004円となりました。

年収の壁対策

パート・アルバイトで働く人が年収の壁を意識せずに働ける環境をつくるということで、2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」がスタートしました。

パート・アルバイトで働く人は、勤務先の企業規模により、年収106万円や130万円などのラインに到達すると厚生年金や健康保険などの社会保険料を自分で支払うことになります。そのため、給与を105万円や129万円などに抑えた方が、手取り収入が多くなるという逆転現象が発生しています。

このため、勤務時間を抑制して働く人が多く、人手不足が解消されない状態になっています。この状態を解消するため、2年間の時限的措置として、「106万円の壁」「130万円の壁」に対応する施策が導入されました。 

「106万円の壁」に対しては、106万円を超えたことで発生する労働者の社会保険料を実質的に補助したり、手当を支給した企業に労働者1人当たり30万~50万円の補助をするような内容になっており、「130万円の壁」に対しては、事業主が証明することで、引き続き扶養の範囲に留まることになるとされています。

ふるさと納税の「5割ルール」が厳格化

ふるさと納税は元々「自治体間の税収格差の是正」を目的として設けられましたが、一部自治体が高還元な返礼品を提供することで寄附が集中し、税収の格差拡大につながる側面も浮上しています。そのため2023年10月から、ふるさと納税について、いくつか見直しが行われました。見直しの中で特徴的なものは以下の2点です。

・「5割ルール」の厳格化⇒返礼品やその他の経費の合計を寄附額の5割までとする
・地場産品の基準の厳格化⇒精米と熟成肉は、主要部分の加工・製造のみならず「原材料も同じ都道府県産であること」が必要

ふるさと納税も競争が厳しくなり、近年は寄附の取り合いになっています。自治体間で過当競争になり、その影響で寄附された金額のうち、有効に使える部分が少なくなっていたという弊害が出てきました。今回の改正はそれを是正することを目的にしています。一部自治体の返礼品では「値上げ」や「廃止」されているものも出てきています。

2024年注目のトピックは?

2024
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2024年にも私たちの生活に関するさまざまなお金のトピックが予定されています。

2024年1月、新NISA スタート

個人投資家にとって革命的な制度の導入です。非課税投資枠が大幅に拡大し、制度が恒久化されます。従来のNISA制度からの主な変更点は下記の通りです。

1)成長投資枠240万円とつみたて投資枠120万円が併用できます
2)年間投資上限額が最大360万円に拡大されます
3)1人当たり1800万円の非課税投資枠を持つことができます
4)非課税投資期間が無期限となり、長期間にわたって非課税運用が可能になりました
5)非課税投資枠で保有していた金融商品を売却すると、売却額に応じて翌年に非課税枠が復活し、再利用ができます

これまで投資信託での運用や株式投資などが未経験の方も、この機会に少額でも良いのでスタートすることをオススメします。なお預貯金と異なり、資産価値が変動します。この点は注意しましょう。

2024年1月、住宅ローン減税の条件変更

2024年以降は、どのような新築住宅であっても、住宅ローン控除の対象になる借入限度額が一律で引き下げられます。この影響で住宅ローン控除の最大控除額も下がります。

新築住宅の場合、省エネ基準などに適合していない「その他の住宅」については原則住宅ローン減税を受けることができなくなります。なお中古住宅は、控除内容の変更はありません。これからマイホームを購入・建築予定の人は注意しましょう。

この条件については、政府・与党でまだ議論が続いており、子育て世帯への税優遇を継続するなど(12月8日日本経済新聞)変更の可能性もありますので、動向を注視しておきましょう。

参照:国土交通省「住宅ローン減税の概要について

2024年7月頃、新紙幣の導入

2024年7月前半を目処に新紙幣が発行されます。新紙幣発行は約20年ぶりです。

・1万円札:渋沢栄一が肖像に選ばれました。日本近代社会の創造者とも呼ばれています
・5000円札:生涯を通じて、女性の地位向上と女子教育に尽力した教育家、津田梅子が肖像に採用されています
・1000円札:「近代日本医学の父」と呼ばれている北里柴三郎が肖像に採用されています

偽造防止はもちろん、識別マークの配置を換えたり、額面数字を大型化したりして、より使いやすいように改良されます。

2024年10月、児童手当の拡充

児童手当
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2024年10月分から児童手当が拡充され、支給は同年12月にスタートする予定です。当初は、拡充後の最初の手当を2025年2月に支給する予定でしたが、スケジュールが前倒しされます。拡充の要点は下記の通りです。

・所得制限が廃止になり全員対象に
・支給対象年齢は18歳(高校卒業)まで延長へ
・第3子以降は3万円支給へ
・支給頻度が年3回から年6回へ

これまで高校生は対象ではありませんでしたが、新たに高校生(1万円支給)も手当の対象になります。所得制限についても廃止予定です。一方で、児童手当の拡充に伴い、高校生の扶養控除が縮小される方向で検討されています。

※2023年11月現在、児童手当の拡充については審議が継続中です。そのため、今後さらに変更される可能性があります

まとめ

新型コロナウイルスの影響は徐々に収束してきたものの、ウクライナとロシアの戦争、円安などの影響を色濃く受けたのが2023年だったと思います。ガソリン代や電気代など日常生活に直結する費用が高止まりし、食料品などの値上がりも目立った1年でした。残念ながら2024年も、この傾向に大きな変化はなさそうです。2024年は本当に必要なものにお金を使い、必要のないものへの出費は控えるなど、メリハリをより意識していく必要のある一年になりそうです。