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孫へ不動産の生前贈与、税金いくらかかる?非課税にするには?

FPにききたいお金のこと 中村 賢司

孫へ不動産の生前贈与、税金いくらかかる?非課税にするには?

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今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、祖父母から孫へ不動産を生前贈与する場合、どんな税金がどれくらいかかるのかというご相談です。その他、税金を非課税にする方法はあるのか、生前贈与が向いているケースや向いていないケースも合わせてみていきます。

30代女性Tさんからの相談内容

祖父母が老人ホームに入居するにあたり、住んでいた家と土地の生前贈与を提案されています。家と土地の評価額は2000万円弱くらいですが、どのような税金がかかるのでしょうか?非課税にできる制度やその利用条件があれば教えてください。

どれくらい贈与税がかかるのか試算

祖父母が財産を無償で孫へ渡すと「贈与税」の対象となり、基礎控除額110万円を超えると贈与税がかかります。これはお金を贈与するときだけでなく、家や土地など不動産を贈与するときも同じです。

今回のケースでは、家と土地の評価が2000万円かからないくらいとあります。仮に売買されるときの実勢相場が2000万円だった場合、どれくらい贈与税がかかるのか試算してみます。

不動産を贈与する場合、その評価額は相続税の場合と同じく路線価による評価となります。路線価は公示価格のおおよそ7~8割といわれていますので、今回の場合1400万~1600万円くらいの評価となります。建物の評価は通常固定資産税評価額を用いますが、ここでは計算しやすく建物の評価は含まず計算します。

〇仮に路線価の評価額が1400万円だった場合の贈与税の計算

(課税対象額)
1400万円-110万円(基礎控除)=1290万円

(贈与税額)
1290万円×40%(税率)-190万円(控除額)=326万円

現金を贈与してもらいその中から税金を納めるのであれば孫の負担感はさほどありません。しかし、今回のように不動産の贈与であれば、孫が贈与税納付のために326万円を手出ししなければいけません。

いくら無償で不動産を取得したとはいえ、孫にとって贈与税の負担が大きいですね。では贈与税がかからないケースはあるのでしょうか?

贈与税が非課税になる制度と利用時の注意点

贈与税の申告書
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祖父母から孫への贈与の際、住宅取得等資金贈与の特例や、結婚・子育て資金の一括贈与の特例などを使うことで、300万~1000万円の現金贈与は非課税となります。

しかし今回のご相談は不動産の贈与なので、残念ながらこの対象とはなりません。ではどのようにすれば贈与税がかからないのか、その方法を2つ紹介します。

〇暦年贈与

年間110万円以下の贈与に対しては贈与税がかかりません。これは一般的によく知られているので、毎年110万円以内の生前贈与をして相続税対策をされている方が多くおられます。この贈与税の基礎控除額110万円は、現金だけでなく不動産の贈与に対しても有効です。

つまり、祖父母が所有している不動産の登記のうち、毎年110万円以内に相当する不動産の持ち分を孫へ移転登記していくのです。一括贈与ではないので年数がかかる上、移転登記の費用も毎年かかりますが、この方法であれば贈与税はかかりません。

しかし税務署から相続税逃れと指摘されることもありますので、毎年贈与契約書を交わすことは忘れないようにしてください。念のため、税理士に相談の上、行った方が無難でしょう。

〇相続時精算課税

相続時精算課税とは、贈与税の課税時期を先送りできる制度で、相続税と贈与税を一体課税することで生前贈与を促進している制度です。

贈与者は60歳以上の父母・祖父母で、受贈者は18歳以上の子・孫が対象となります。この制度を利用することで祖父母から孫へ2500万円の範囲内であれば贈与税はかかりません。

しかしあくまでも課税時期の先送りなので、相続が発生したときには相続税の対象となります。相続財産の金額によっては有利になる場合と不利になる場合がありますので、よく吟味して利用するようにしてください。

また、相続時精算課税制度は、同じ贈与者からの贈与について、暦年贈与との併用が不可となっています。この制度を選択した時点で、それ以降、暦年贈与は利用できませんのでご注意ください。ただし、別の贈与者からの贈与は利用可能です。 

生前贈与が向いているケースと向いていないケース 

不動産の価値
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今回のケースでは生前贈与を提案されている理由などの詳細は分かりませんが、仮に贈与税を納めたとしても、祖父母の家と土地の方が評価額は高いので、孫にとっては良い話です。生前贈与を受けた家に孫が住み続けるのであれば、贈与税を納めてでも取得した方がお得でしょう。

孫がその家に10年住み続けた場合、納めた贈与税(仮に326万円とします)から逆算すると家賃3万円以内で住むことができます。さらに、もし10年後も資産価値が残っていれば、売却することでまとまったお金を手にすることもできます。

また、孫が既にマイホームを所有していても、生前贈与を受けた不動産を収益物件として賃貸に出すと毎月家賃収入を得られます。この場合でも326万円でその物件を取得したと考えると、とても利回りの良い収益物件を取得することができたとも考えられます。

逆に生前贈与が向いていないケースは、孫がその家に住まず、また賃貸の需要が低いような地域の家だった場合です。こちらであれば少し考えた方が良いでしょう。わざわざ贈与税を納めてまで生前贈与を受ける必要はありません。

もし誰も住まないで空き家となってしまえば、家の老朽化が進みいずれ家屋を解体しなければいけなくなります。贈与税を納め、毎年固定資産税も納め、数年後解体費用が発生するようなケースであれば、今回の祖父母からの提案はお断りしましょう。

まとめ

不動産は流動性が低く、場所によっては今後資産価値が下がっていくかもしれません。祖父母からの提案はとても有り難いのですが、維持費なども考えて結論を出すようにしましょう。ご自身がその家に住む場合や、住まなくても賃貸需要があるのであれば、孫であるTさんにとってとても良い話です。この場合は、贈与税を納めてでも生前贈与を受けた方がお得です。

いずれにせよ物件の状態や場所によりますので、利用価値をよく考えてから結論を出すようにしてください。