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アメリカ人の平均年収は右肩上がり!20・30代はいくら稼いでる?

N.Y.発、安部かすみの今気になる最新マネートピック 安部 かすみ(あべかすみ)

アメリカ人の平均年収は右肩上がり!20・30代はいくら稼いでる?

【画像出典元】「Dilok Klaisataporn/Shutterstock.com」

近年のインフレや物価高に伴い、アメリカでは最低賃金や年収も少しずつ上昇しています。年収としてはアメリカで働く人々は一体いくら稼いでいるのでしょうか?最低賃金と平均年収、および年収中央値についての最新の状況を、現地アメリカから報告します。

近年、最低賃金アップ

近年インフレや物価高が続くアメリカでは、最低賃金も少しずつ上げられています。例えばニューヨーク市および近郊では、2024年からそれまでの1時間15ドル(現在の為替相場で換算すると約2,230円)から16ドル(約2,280円)に引き上げられました(州内のほかの地域は14.20ドルから15ドルへ)。

そして最低賃金の引き上げは今後も続いていきます。市内および近郊では、17ドル(そのほかの地域は16ドル)に到達するまで毎年50セントずつ段階的に引き上げられる予定です。つまり2026年時点での最低賃金は17ドル(約2,490円)になります。また2027年は北東部のCPI-W(地域指標の都市賃金労働者・事務労働者消費者物価指数)を基にインフレ率に応じて引き上げられる予定です。

この街では1杯のラーメンが3,000円超え、朝ごはんが7,000円などと日本のニュースでも伝えられている通り、何をするにも日本の倍以上のお金がかかります。納税額も高いため、これらの価格帯を考えると値上げ後の最低賃金は妥当な金額、もしくはやや低めかもしれません。

また値上げ額は毎年50セント~1ドルと微々たるものに聞こえるかもしれませんが、当地では2016年末の時点で最低賃金が11ドルだったことを考えると、実質7年間で5ドル(現在の為替相場で換算すると約740円相当)も上昇したことになります。

さて最低時給について、全米全体ではどうでしょうか。

NCSL(全米州議会会議)の資料によると、ワシントンD.C.が一番高くて時給は17ドル。ジョージア州で時給5.15ドル*(約762円)やワイオミング州で時給7.25ドル(約1,061円)とアメリカの都市部の基準と照らし合わせるとまだまだ低い州もあります(アラバマ、ルイジアナなど最低賃金を導入していない州も)。

* 同州の最低賃金はあるが、ほとんどの従業員には連邦最低賃金の時給 7.25 ドルが適用される

以上はデータが示すアメリカの最低賃金の事情ですが、実際に経営者に話を聞くと、人手不足の折に最低賃金で募っても良い働き手が来てくれないのが実情のようです。被雇用者が違法滞在をしているなどよっぽど特別な事情でもない限り、労働者に実際に支払われている時給はこの最低賃金よりもっと高いこともあるでしょう。ちなみに全米の平均時給は、米フォーブスによると2023年の時点で28.34ドル(約4,150円)です。

アメリカ人の平均年収は?

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アメリカ人が労働により年間を通して得ている収入は職業(業界、役職)や年代、経験、学歴、働いている州などによって大きく異なります。

前述のフォーブスや米ヤフー!ファイナンスによると、全米の平均年収は4万5,060ドルから、役職などによっては最高で33万5,200 ドル(約660万円~約4,900万円)にも達するそうです。それらをもとに出した全米平均年収は2023年の時点で5万9,428ドル(約870万円)でした。またほかの資料によると、全米の世帯収入の年収の中央値は8万9,000ドル(約1,300万円)でした。それらに追加手当(住宅費や交通費など)が別途付くこともあります。

これらのデータは、全米人口の半分の人々の収入がこの額を下回る一方で、残りの半分の人々の収入が中央値を超えていることを示しています。

また年代別の年収中央値は、以下の通りとなっています。
(キャピタルワンの資料による)

16-19歳:3万1,356ドル(約460万円)
20-24歳:3万7,024ドル(約540万円)
25-34歳:5万4,184ドル(約790万円)
35-44歳:6万3,908ドル(約930万円)
45-54歳:6万4,116ドル(約938万円)
55-64歳:6万1,672ドル(約900万円)
65歳以上:5万7,252ドル(約838万円)

これを見る限り、25歳を境に年収が一気に増える傾向があることがわかります。

アメリカで快適な生活ができる良い給料とは?

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では、物価高のアメリカで快適な生活水準を達成できる「良い給料」は、いくらとされているでしょうか?

住居費や生活費が高い都市部は比較的年収が高く、内陸や南部は低い傾向にあります。具体的な額はさまざまな要因によって異なりますが、独身の場合は一般的に、年収が約7万ドルから10万ドル(約1,030万円~約1,500万円)とされています。 もちろん扶養家族がいる場合はそれ以上となります。IT、化学、法律などいわゆる「専門的なスキルを持っている人」や需要の高い業界に従事している人は、さらに高い給与を期待できそうです。

ニューヨークなど都市部での医療費は群を抜いて高く、虫垂炎で入院した場合の入院・手術などの医療費は1日の入院で7,130ドル(約106万円)以上かかることや、アメリカの住宅所有者の4人に1人が毎月3,000ドル(約45万円)住宅ローンを支払っている事実を見る限り、日々快適な生活を送るためには、7万ドルから10万ドル程度必要というのは都市部ではごく当然のことなのかもしれません。

90年代から停滞する日本と右肩上がりの米国

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日本の平均年収は国税庁の「令和4年分 民間給与実態調査」によると、2022年の時点で458万円です。1992年の平均年収は425万円でしたから、30年間でほとんど変動していないと言えます。

筆者がアメリカに初めて来たのは1990年ですが、当時のアメリカは日本と比べ物価も安かったし、それに伴い平均給料も今よりは低かったのです。センサス(国勢調査局)が発表した1990 年の全米の世帯収入の中央値は 2万9,943ドル(当時の為替相場で約434万円)、平均世帯収入は 3万7,403ドル(当時の為替相場で約542万円)でした。

統計調査企業のスタティスタが発表した1990年から2022年までの世帯収入の中央値を示すグラフを見ても分かる通り、この30年間で右肩上がりに上昇し、倍以上になっています。この期間のインフレによる物価高や、不動産価格の高騰などを加味すると、まったく不思議なことではありません。

専門家によると、金額ベースでの平均年収観点だけで見ると上記ですが、実際の金融マーケットの評価(各通貨のパワー)は実際の取引状況によっても異なるということのようなので、冷静に推移を見守りたいところです。

また、お金があることが豊かな心を育み幸せな人生をもたらすかというと、必ずしもそうではないというのは、アメリカでも時々聞こえてくることです。特に誰もが知る実業家や著名人が自死したニュースを聞くたびに人々はそのように言います。限られた収入や資源の中でやりくりをすると、生活に創意工夫や潤いが生まれることは多々あります。当地でさまざまな事例を目の当たりにし、収入が高いから豊かで幸せな人生かというと「必ずしもそうとは限らない」ことも最後に加えたいと思います。