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4月スタートの「相続登記義務化」過去の相続も対象ってホント!?

そなえる 権藤 知弘

4月スタートの「相続登記義務化」過去の相続も対象ってホント!?

【画像出典元】「David Gyung/Shutterstock.com」

2024年4月1日から「相続登記」が義務化されました。今は関係なくても、将来的に関係する人も多いと想像される大きな制度変更です。過去に相続したものは対象なのか、相続登記しないとどうなるかなど、おさえておきたいポイントについて見ていきましょう。

相続登記とは

人が亡くなった時に発生するのが相続です。相続は、「亡くなった人=被相続人」が所有していた資産や負債を、相続人が引き継ぐことをいいます。そして、被相続人が所有していた不動産を引き継いだ相続人がしなければならい手続きの一つが「相続登記」です。

相続登記は、「亡くなった人が所有していた不動産を、今後は○○が引き継いで所有します」という内容を法務局に届け出ることを指し、登記することで所有者としての権利や義務などを法的に引き継ぎます。

相続登記が義務化となった背景

これまで不動産の相続登記は義務化されていませんでした。そのため「土地や建物の所有者がご先祖様のままになっている」「所有者が誰か分からない」というのも珍しくはないことでした。そのため、現在、所有者が不明な土地の総面積は九州よりも広いといわれています。

ただ所有者が不明で管理されていない土地は、周辺環境や治安の悪化を招いたり、都市開発や防災面でも障害になったりしています。このような状況を改善するため、誰が所有者・管理者であるのかを明らかにするという目的で、2024年4月から不動産の相続登記の義務化がスタートしました。

義務化の中身ポイント3つ

ポイント
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今回の義務化のポイントは3つです。

2024年4月1日以降は改正された法律が適用され、これまでは罰則がないため実質任意であった相続登記が義務付けられます。また今回の改正は2024年4月1日以前に相続が発生し、未登記のままの不動産についても適用されるため、登記されていない不動産の相続人や、代替わりしている代襲相続人にも対応が求められます。

相続登記しない場合のリスク

義務化もさることながら、相続した不動産の登記を行っていない場合、様々なリスクや問題が生じる可能性があります。

相続登記の手続きを放置すればするほど、代替わりするにつれて関係する法定相続人が増えていく可能性があります。そうなると会ったこともない遠い親戚と、遺産分割や登記について話し合うといった事態も想定されます。また上記の他にも、第三者が土地を差し押さえるようなリスクもありえます。

相続登記義務化の対象は「相続に関する土地と建物」

相続登記の対象は、相続に関連する土地と建物です。また2024年3月31日までに相続が発生し、未登記の不動産も遡及して義務化の対象になります。なお対象者は不動産を取得した相続人で、不動産を取得していない相続人は対象外です。もし遺産分割協議が長引いている場合などは、法定相続人全員が相続登記義務化の対象になります。

遺産分割がうまくいかないケースは「相続人申告登記」を 

緑の芝生の上に置いてある白い家のシルエットと人間の手の仕草
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遺産分割がスムーズに進めば良いのですが、相続人の間で折り合いがつかずに長引くケースも多いのが実情です。もし相続財産に不動産が含まれている場合、上述のように法定相続人全員が不動産の相続登記義務を負います。

ただし、相続関係が複雑で最終的に誰が不動産を相続するか決めるのが難しいような状態や、登記内容が古く、関係者が広範囲におよび誰が相続するか決定するまでに時間を要することもあります。

このような場合、2024年4月1日以降は「相続人申告登記」という制度を利用できます。相続登記の期限は相続が発生してから3年ですが、期限内に遺産分割協議が終わらないような見通しであった場合、事前に相続人申告登記を行うことで、義務化された登記を行ったと見なされ、相続登記不履行に科せられる罰金の対象から外れることができます。その後、不動産の相続人が確定した段階で正式に相続登記を行います。

相続登記の手続きの流れと費用感

さて義務化されることで「自分で相続登記をしよう」という人も出てくるかもしれません。相続人本人でできるケースもありますが、基本的には専門家に依頼した方が良いでしょう。

【相続人本人で取り組めると想定されるケース】

1)相続人が配偶者と子供だけ
2)法務局や市町村役場などに平日の日中に行けること

前提として上記の条件を満たしていなければ、相続人本人での登記は難しいでしょう。また法律や税の仕組みに詳しい人以外には正直言っておすすめしません。

なお登記の際に戸籍や印鑑証明書などの書類の取り付けが必要で、相続人の人数も関係しますが、全体で1万円程度の実費が予想されます。また登記の際に登録免許税という税金を納めますが、税額は土地の価額の0.4%となり、仮に固定資産税評価額が1000万円であれば4万円が課税されます。(土地の価格が100万円以下の場合は、2025年3月末まで免税措置があります)

どうしても相続人本人で相続登記をしたいということであれば、まずは自宅住所を管轄している法務局に相談しましょう。

【専門家に依頼することが望ましいケース】

一般的に、相続登記を何度も経験するということはあまりないでしょう。また手続きに必要な書類の準備や、法務局や市区町村役場へ行く手間暇、相続に関係する人数などを考慮すると、専門家に依頼することが最も良い選択になると思います。

相続登記に対応できる専門家は弁護士と司法書士ですが、実務的な面では司法書士に依頼することが一般的です。ただし遺産分割協議が難航しているケースでは、弁護士が対応することもあります。

気になる費用面ですが、司法書士が相続登記を行う場合、一般的には5万~20万円程度の費用がかかることが多いようです。ここに書類関係の実費と登録免許税が加わります。なお費用は対応する司法書士や依頼の内容により変わるため、事前に相談すると良いでしょう。

まとめ

これまでは実質任意であった相続登記の義務化は、非常に大きな制度変更です。そのため想像していなかった事態も起こりうると思いますが、少子高齢化が進み、人口減少社会に突入している日本では避けて通れない問題とも言えます。もし不動産関係で心当たりがあり、相談したいという人は、まずは法務局や地元の司法書士会などに問い合わせすると良いでしょう。