終身保険の受取人は誰にするのが正解?受取時に税金はかかる?
今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、3人の子を持つ30代ママからの相談です。貯蓄目的で始めた終身保険の受取人を誰にすべきか迷っている、とのことです。保険金の受取人についてどのように考えたら良いのか一緒に見ていきましょう。
30代女性Mさんからの相談
解約返戻金を当てにした、貯金代わりに契約した終身保険をいくつか持っている場合、受取人を誰に、いくらにすると良いか教えていただきたいです。 具体的には、夫と子ども3人の5人家族です。受け取り死亡保険金が1500万円ある場合、どのようにすると良いでしょうか?
保険金は「親権者」が受け取るのがシンプル
Mさん自身が被保険者として終身保険に加入しておられるのですね。貯蓄代わりにということですので、保険加入の主目的が貯蓄で、合わせて死亡保障も確保しているということかと思います。保険契約を解約した場合の解約返戻金は、契約者であるMさんが受け取ることになりますが、万一の時の死亡保険金は誰が受け取るのが良いでしょうか。
Mさんは30代ですので、恐らくお子様は未成年と想像します。そうであるなら、まずは、保険金の受取人は「親権者となる夫」を優先的に考えると良さそうです。死亡保険の本質は、遺された家族が困らないように備えるものですので、その観点から、Mさんの死亡保険金は「子どもが自立するまでの子育て費用」とするのがシンプルです。
遺族年金がもらえなくなった後の学費に充てる
また、Mさんが専業主婦なのか、会社員なのかといった状況によって異なりますが、少なくともMさんに万一のことがあった時は、通常、夫に国民年金の遺族基礎年金が支払われることになります。
受取額は、第1子が高校を卒業するまで(正確には、18歳になって最初に迎える3月末まで)約130万円/年です。その後は、第2子の高校卒業までが約120万円/年、第3子の高校卒業までが約100万円/年と徐々に減額され、第3子が高校を卒業すると遺族基礎年金はなくなります。大学や専門学校といった自立まであとひと息という時期ですので、保険金はその時期の教育資金として役立てるというのも良さそうです。
特に私立大学であれば4年間の学費だけで500万円前後は必要なので、1500万円の死亡保険金は3人分の学費になります。ただ、それぞれの進路がどうなるかは分かりません。公立か私立かの違いだけでなく、家を出て一人暮らしをするのかどうか、大学ではなく専門学校に行くか、などでかかる費用も異なります。夫が保険金を受け取れば、3人のお子様の進路に合わせて柔軟に使うことができそうです。
子どもが独立した後に、もし保険金が残れば、夫から子どもに贈与するということもできるでしょう。また、生命保険の受取人は変更可能なため、保険契約当初は夫にしておいて、子どもが独立後も保険を解約していない場合は受取人を子どもに変更する、という方法もあるでしょう。
受け取った保険金に税金はかかる?
なお、保険金は相続財産とみなされます。つまり、Mさんの預貯金などの資産と合わせて、相続税の課税対象となるというわけです。しかし、生命保険金には一定の非課税枠「500万円×法定相続人の数」が設けられています。つまり、Mさんが万一の場合は、2000万円(500万円×4名)までの死亡保険金は相続財産に含めなくて良いわけです。契約中の1500万円の保険金には相続税はかからないことになります。
さらには、相続税の計算では、預貯金などの相続財産全体から差し引ける基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人の数」もあります。ですので、Mさんに万一があった場合、5400万円(3000万円+600万円×4名)までの相続財産は、そもそも非課税ということになります。
相続税の非課税枠があることから、日本で実際に相続税の支払いをしなければならないケースは、相続全体の1割にも及ばないのが実情です。長々と説明しましたが、Mさんのように、資産形成期である若いうちは、一般に相続税の心配はありません。まずは周辺知識としてお役立てください。
自身で保険を解約して解約返戻金を受け取る時の税金は?
なお、Mさん自身が保険契約を解消して解約返戻金を受け取る場合は、一時所得として扱われます。一時所得は「解約返戻金-支払った保険料-50万円(特別控除額)」と計算します。その一時所得の1/2の額と、給与など他の所得があればそれらを合算し、納める税金を計算する流れです。
先程、父から子どもに贈与することについて触れましたが、Mさんから子どもへ解約金を贈与した場合、贈与税はどうなるでしょうか。その場合、3人の子どもが、それぞれ年間110万円までの贈与におさまるなら、税務署への贈与申告は不要、贈与税もかかりません。
保険の受取人を誰にするのかという問題への答えは、色々な考え方や価値観によって異なります。貯蓄が主目的とのことですので、先々、ご自身のために使うことが前提ではありますが、万一が起こった時に、誰に、何の目的で渡したいか、上記を参考にお考えを整理し、検討してみてください。Mさんのご状況を想像しながらのお返事ですが、参考になりましたら幸いです。