賃貸マンション・アパート住まい、地震保険の加入は必要?
賃貸マンション・アパート暮らしの人が加入する火災保険は、地震による被害はカバーされません。しかし、わざわざ地震保険に加入すべきか否か迷う人もいるでしょう。ここでは、賃貸における地震保険の補償範囲や、加入する時の優先順位、加入の必要性の考え方について説明します。
地震保険の加入世帯は増加傾向
損害保険料率算出機構によると、2021年度の地震保険の世帯加入率は34.6%。5年前の2016年は30.5%ですから、徐々に加入する世帯が増えていることが分かります。2011年の東日本大震災以降も大きな地震が各地で発生しており、南海トラフ地震への不安がある中、地震保険への関心が高まっているといえます。
賃貸マンション・アパートでも「火災保険」は必須
火災保険は、マイホームを持つ人だけでなく、賃貸の人も賃貸契約時に加入を求められる保険です。ただ、マイホームのように建物を所有しているわけではないため、建物への備えはオーナーが、部屋の中にある家具や家電といった家財への備えは入居者が負担することになります。そのため、賃貸契約時に加入する火災保険の中身は、家財が補償対象となっているものが一般的です。
では、同じ火災でも「地震」が原因の場合はどうなるのでしょうか。この場合、火災保険では補償されません。地震、噴火、または、これによって発生した津波が原因による損害は地震保険で備えなければならないのです。
地震保険は、地震保険法によって国と保険会社が共同で運営するものと定められています。火災保険に加入した上で付帯できる保険で、地震保険単体での加入はできません。保険料は、建物の構造や所在地が同じであれば、どの保険会社で加入しても同じです。
地震保険の補償範囲と補償額
地震保険(家財)の主な補償範囲は次のようになります。
補償されるもの
・家具類
・家電器具類
・食器、陶器、食品、調理器具類
・衣類、寝具類
・その他、カメラ、靴、カバンなど身の回り品
補償対象とならないもの
・車、バイク
・現金、預貯金証書、有価証券(小切手、株券、商品券など)
・1個または一組当たり30万円を超える貴金属、宝石、絵画、書画、骨董
・工場、事務所など住居として使用されない建物内の家財
地震保険の保険金額は火災保険の30~50%で、上限が1000万円と定められています。仮に火災保険で家財の補償が500万円となっていても、地震保険の補償額は最大250万円になります。つまり、地震による被害の場合は最大でも半分の補償しかありません。これは、火災保険は同等物を調達するための補償であるのに対し、地震保険は当面の生活補償を目的としたものだからです。
この仕組みの違いは、地震保険を引き受ける国や保険会社のリスクを考えると理解できます。地震は、広範囲で甚大な被害が及ぶことが想定されます。火災保険に比べ、一度に大きな補償をしなければならないため、保険金額を一定以下にすることで広く多くの人の生活補償をしようというわけです。
なお、地震保険の保険金は、地震保険損害認定基準に沿って損害の状況が判定され、次のように補償割合が決められます。
保険金の支払額
・全損---100%(時価額が限度)
・大半損---60%(時価額の60%が限度)
・小半損---30%(時価額の30%が限度)
・一部損---5%(時価額の5%が限度)
賃貸でも地震保険の加入を検討した方がいい人とは
地震リスクが高まる中、賃貸暮らしの人で加入すべきか迷う人もいるでしょう。備えあれば憂いなしですが、ここでは、加入すべき人について考えてみます。
地震保険は、生命保険や医療保険と同様に、万が一の時に路頭に迷わなくて良いように備えるものです。もし地震を起因とした火災や建物の倒壊、水害などで家財が損害を受けた時、「生活を立て直せる貯蓄がない」「貯蓄額に不安がある」という場合は加入を検討した方が良いといえます。冷蔵庫、洗濯機、テーブル、タンスといった大型家具・家電はもちろん、靴下や下着などのちょっとした生活必需品も積み重なれば結構な金額になります。
「大事にしている家財がありその補償を少しでも確保しておきたい」といったケースも、加入を検討した方が良いでしょう。
まとめ
地震はいつどこで発生するのか予測不能です。万一の時の避難場所や避難経路、防災グッズと合わせて、地震保険への加入も家族で話し合っておきましょう。