台風シーズン前に!知らなきゃ損する「災害に必要なお金の備え」
近年、台風や大雨・大雪などによる災害のニュースをよく耳にします。被災して住んでいる家や家財道具などに被害が出た場合、生活を再建するために必要になるのが「お金」です。今回は災害を想定したお金の備えについて解説します。
火災保険の補償対象は火災だけではない
火災や自然災害で建物や家財に被害が出た時に、経済的に補償してくれるのが火災保険です。火災という名前がついていますが、台風や大雨による浸水、大雪などの自然災害でも補償してくれます。持ち家の人は建物と家財、賃貸物件に住んでいる人は家財が対象の火災保険に入っている前提になりますが、どんなときに役立つのかを見ていきましょう。
台風などの風災
台風・雹(ひょう)・暴風などによって屋根などが損害を受けたり、雹(ひょう)によってガラスが割れ、家財に損害を受けたりした時に補償されます。なお、経年劣化によるひび割れから雨が吹き込んだり、窓を閉め忘れたりしたことが原因の破損は補償されません。
落雷、火災、爆発
落雷、火災、ガス漏れなどによる破裂・爆発による被害も補償の対象となります。落雷については、落雷による火災や家電製品の故障などが補償対象です。また、消火活動による水濡れ損害も補償の対象になっています。
台風や豪雨による水災
台風、暴風雨、豪雨等による洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ・落石等で、床上浸水もしくは地盤面から45cmを超える浸水被害が出た場合に補償されます。近年、床下に蓄電池や空調関係の機器を設置しているケースが増えてきましたが、一般的に床下浸水は補償の対象外です。従ってこれらの機器が床下浸水で故障しても補償の対象外となるので注意してください。
*保険会社によっては補償される特約があります。
保険会社によって細かな違いはありますが、どの会社の火災保険にも風災と落雷による損害補償は組み込まれています。一方、水災の補償は、契約時に補償の対象にするか否かを契約者が選べるものもあります。保険料を安くするために、水災を補償の対象外にしている契約者も少なくありません。ご自身の火災保険は水災による損害がカバーされているか事前に確認することをお勧めします。
火災保険を見直す際のポイントは?
火災保険にはいくつかの見直すポイントがあります。みなさんの火災保険はどのような契約内容になっていますか?
昔の火災保険なら、水災は補償外の可能性も
2015年9月までの火災保険では、最長で36年契約を選択できました。長期契約の方が保険料を割安にできたため、当時契約した方の多くが長期で契約していたのではないでしょうか。しかし、建物や家財の評価が時価評価(築年数の経過とともに価値が下がる)の契約が多く、損害が発生しても十分な補償金額にならないケースがあります。
また、水災の補償については補償対象外となっている火災保険契約が多く存在しているので注意してください。まずは加入している保険の補償金額や範囲が不足していないかを確認することが大切です。
ハザードマップで災害リスクの確認を
各自治体がハザードマップを公表しており、大雨や地震、高潮などによる被害が発生しやすい地域や被害の予測を地図上に示しています。まず、自分が居住する地域にどのようなリスクがあるかを確認しましょう。もし自然災害が発生するリスクが高い場合は、その災害に対して適切な備えが用意されているかどうかを確認する必要があります。水害や土砂災害に関しては特に注意が必要です。また、地震による津波のリスクについても確認しましょう。
持ち家と賃貸で入る保険の範囲は違う
持ち家と賃貸では火災保険の備え方も変わってきます。持ち家であれば建物と家財の二つの火災保険に入る必要がありますが、賃貸物件を借りているのであれば、家財に対する保険だけで問題ありません。
持ち家の場合、建物の補償は戸建てとマンションで少し取り扱いが変わります。戸建ては駐車場やエントランス部分の補償も自分で準備しなければなりません。マンションは専有部分のみで大丈夫です。エレベーターなど共有部分の火災保険は、マンションの管理組合で加入します。
自動車の水没には要注意!
水害のリスクがある地域に住んでいる人は、車にも注意が必要です。もし豪雨で車が水没した場合の修理費用などは、火災保険ではなく、車両保険でカバーできます。しかし一度水没してしまうと修理費用が高額になり、車を買い替えることがほとんどです。また買い替え費用や修理費用が、車両保険の補償額を上回る可能性も高くなります。加えて、補償を受けると保険等級が下がり、翌年から保険料が上がることもあります。そのため豪雨が予想される場合は、事前に車を移動させるなどの対策を考えておくことが大切でしょう。
地震の被害は地震保険で対応
地震による損害には、地震保険で対応します。建物や家財が地震、津波、噴火などの影響で被害を受けた場合、火災保険とセットで加入できる地震保険で補償されます。火災保険は自然災害からの幅広い損害をカバーしますが、地震が原因の損害には適用されません。また、地震保険は単独で加入できず、火災保険と一緒に契約する必要があります。なお火災保険の保険料は保険会社によって異なりますが、地震保険の保険料はどの保険会社でも同じです。
緊急予備資金の用意
災害によって財産に損害が出た場合に役立つ火災保険ですが、保険金が出るまで時間がかかったり、それだけでは補償が十分ではないこともあります。そんな時にすぐ使える資金があれば安心です。そんなときのために準備しておきたいのが、緊急予備資金です。災害や事故だけではなく、病気やケガなどで仕事を休んで収入が減るような事態が発生したときのための緊急予備資金が用意できていれば、いざという時も心強いでしょう。
なお緊急予備資金をいくらぐらい準備するかは各ご家庭によって様々でしょうが、家賃や住宅ローンなどを含めた毎月の生活費の3カ月~半年分ぐらいが一つの目安だと思います。仮に住居費などを含めた生活費が毎月25万円のご家庭であれば、ひとまず100万円を目安にすると良いでしょう。なお無駄使いを防ぐため、緊急予備資金は生活費等の口座とは別に管理しておくことをオススメします。
非常時のときの現金の用意
キャッシュレス決済の普及により日常生活で現金を使うことは少なくなりましたが、災害時に強いのは現金です。災害時には停電や通信障害などが発生しやすく、キャッシュレス決済が使えなくなる可能性があります。非常時の備えとして現金を準備しておきましょう。金額については、1週間分の生活費程度が目安になると思います。また高額紙幣だけではなく、千円札や小銭などを組み合わせておくと良いでしょう。
現金以外の決済手段の準備も
停電している中でも、復旧が早い携帯電話の通信回線などを使ったQRコード決済などの電子決済が利用できることがあります。スマートフォンで使える電子マネーやQRコード決済を事前に設定しておくと、緊急時に役立ちます。
また、緊急連絡先や銀行口座番号、免許証、保険証・保険証券などのコピーを用意し、いざという時にすぐに持ち出せるようにしておくと安心です。なお大規模災害が発生した場合、日本銀行は被災地の金融機関に対して「災害時における金融上の特別措置」を要請します。この措置に基づき、印鑑や通帳を紛失した被災者に対しても、預金の引き出しに柔軟に対応してくれる場合もあります。
非常時の備えに必要なものとかかるお金
自然災害やその他の緊急事態が発生すると、電力やガス、水道、通信などのインフラがストップする可能性があります。そのような状況に備え、日頃から飲料水や非常食などの備蓄が必要です。政府の公式ウェブサイトを参考にした、備蓄品や非常持ち出し品のリストをご紹介します。
災害時に備えた備蓄品の例
- 飲料水(一人当たり1日3リットルを目安に、3日分を用意)
- 食品(アルファ米など一人5食分のご飯、ビスケット、板チョコ、乾パンなど、一人当たり最低3日分の食糧を備蓄)
- 下着、衣類
- トイレットペーパー、ティッシュペーパーなど
- マッチ、ろうそく
- カセットコンロ
非常持ち出し品の例
- 飲料水
- 食料品(カップめん、缶詰、ビスケット、チョコレートなど)
- 貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)
- 救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
- ヘルメット、防災ずきん
- マスク
- 軍手
- 懐中電灯
- 衣類
- 下着
- 毛布、タオル
- 携帯ラジオ、予備電池
- 使い捨てカイロ
- ウェットティッシュ
- 洗面用具
- (乳児のいる家庭)ミルク、紙おむつ、ほ乳びんなど
参考:政府広報オンライン
食料品の備蓄は難しく考えず、普段から食べているカップめんや缶詰、インスタント食品などを少し多めに買い置きし、賞味期限が近いものから消費していく「ローリングストック法」がオススメです。常に必要な食料品が備蓄されているため、災害発生時にもすぐに活用できます。食べた分だけを補充し、常に新しい商品が補充されるようにすることで、食品廃棄を防ぎつつ、備蓄品を常に最新の状態に保つこともできます。
非常持ち出し品は、身の回りですぐに必要になるものが中心ですが、衛生用品や常備薬などを忘れないようにしましょう。準備するのが大変な場合は、通販サイトで販売されている防災グッズのセットを購入するのもオススメです。防災用品が一通りそろっているものが多く、価格帯は5000円~2万円程度と幅広くあります。基本の防災セットに自分が必要なグッズを加えることで、より効果的な非常持ち出し品を準備することができます。
まとめ
自然災害発生直後は、避難生活や修理費用、食料や水の調達など、急な出費が必要になる場合があります。そのため、災害に備えてお金を準備しておくことが大切です。現金は、硬貨も含めて用意することが望ましいでしょう。
そして、生活再建のフェーズで役立つのが火災保険です。自然災害の増加による影響で保険料が上昇していますが、災害リスクが高まっているからこそ火災保険は非常に重要です。台風や豪雨による水害、地震などによる被害は高額になることがあります。保険に加入していれば、被害状況に応じた補償金を生活再建に役立てられます。ただし、保険の内容は事前によく確認し、必要に応じて見直すことが大切です。特に2015年より以前に加入している火災保険は、水災に対する補償が十分でないこともあります。不明な点は保険会社や保険代理店によく確認しましょう。
火災保険についてのQ&A
Q.火災保険の中に修理費用という項目がありますが、これは必要でしょうか?
A.賃貸物件に入居する際の火災保険に修理費用という項目があります。この項目は、大家さんに対する損害賠償責任がない場合でも、賃貸借契約に基づいて修理する必要が生じた場合や、借りている部屋が居住不可能な状態から復旧するために必要な緊急修理費用を補償するものです。入居者が修理する賃貸契約になっていなければ不要ですが、契約内容が不明な場合は大家さんや管理会社に確認しましょう。
例)空き巣が玄関のドアを壊して侵入し、ドアが閉まらなくなった。賃貸契約で玄関ドアの修理は入居者が行うことになっているため修理した。この場合の修理費用を補償する保険です。
Q.臨時費用共済金とは何ですか?
A.災害や事故などで損害を受けた場合、家や家財の損害に対する共済金とは別に、臨時費用共済金を受け取れるケースがあります。これは、引っ越し費用や生活必需品の購入など自由に使える共済金です。生活再建にあたり、何かとお金が必要なことが多く、その出費をカバーできます。